藤田医科大学と日本IBMが,羽田クリニックで稼働を開始した電子カルテ・医療情報基盤に関する記者説明会を開催
2023-10-18
登壇者4名が羽田クリニックやシステムの概要を紹介
藤田医科大学と日本アイ・ビー・エム(株)(日本IBM)は,藤田医科大学 羽田クリニックで稼働を開始した,クラウド上に構築した電子カルテ・医療情報基盤についての記者説明会を2023年10月17日(火)にオンラインで開催した。説明会には,学校法人藤田学園理事長の星長清隆氏,藤田医科大学学長の湯澤由紀夫氏,日本アイ・ビー・エム(株)IBMコンサルティング事業本部執行役員の金子達哉氏,アマゾン ウェブ サービス ジャパン(同)執行役員の宇佐見潮氏が登壇した。
藤田医科大学 羽田クリニックは,京浜急行・東京モノレールの天空橋駅に直結した羽田空港隣接の複合施設・羽田イノベーションシティ内に2023年10月2日(月)に開設された。同クリニック併設の藤田医科大学東京 先端医療研究センター(FMIC TOKYO)は,藤田医科大学や殿町国際戦略拠点キングスカイフロント,国内企業と連携して,再生医療やゲノム医療などの先端医療,精密健診・検診,高度生殖医療,先端リハビリテーションなどの研究に取り組み,新たな治療法や医療機器の開発拠点として展開することをミッションとしており,得られた最先端の知見を羽田クリニックで活用していく。
説明会では星長理事長が施設概要を紹介した上で,湯澤学長が藤田医科大学グループにおける医療DXの取り組みについて説明した。藤田医科大学病院を中心とするグループ4病院では,150万症例に上るリアルワールドデータ(RWD)をHL7 FHIRを用いて抽出し,臨床研究などの推進やPHR・EHRとの連携の仕組みづくりを進めている。湯澤学長は,国内外施設との共同研究も行っていくFMICで取り扱う重要な医療データと,4施設の150万件のRWDを,どのように臨床研究などに活用するかが課題であると述べた。また,国の医療DX2030の方向性に従って策定・推進している藤田医科大学グループの電子カルテのビジョンを示し,4段階のうちのPhase 2「クラウド上での電子カルテ稼働」の取り組みを羽田クリニックで開始したと述べ,同センターのコンセプトである「次世代の医療の常識を創る」ことをめざし,羽田の拠点で生まれる新たなデータの学内外連携を実証していきたいと抱負を語った。
続いて,日本IBMの金子氏が電子カルテ・医療情報基盤の概要や展望について説明した。今回構築されたシステムでは,アマゾン ウェブ サービス ジャパンのパブリッククラウド「AWS」に電子カルテシステムおよびDWH,二要素認証システム,仮想化システムを配置し,AWSの別区画に配置された羽田クリニックの健診システムと連携するとともに,羽田施設内の画像部門システムをはじめとした各種システムなどとも連携する。これにより,先進的な医療機器の導入などによるシステム拡張に対する柔軟性,高いセキュリティと可用性を実現する。また,本院からの遠隔読影が可能なほか,4病院および羽田クリニックの電子カルテの相互参照が仮想化システムにより高いパフォーマンスで可能となっている。なお,AWSのクラウド上での電子カルテ構築は,日本IBM初の試みとなる。金子氏は,スマートホスピタルの実現をめざして,ベンダーや業界を超えたデータの相互交換を可能にするハイブリッド・クラウド環境での医療プラットフォームを構築していきたいと述べた。
次いで,アマゾン ウェブ サービス ジャパンの宇佐見氏が,藤田医科大学や日本IBMとの取り組みについて紹介した。これまでに同社は,藤田医科大学のPHR基盤や連携病理診断システムをAWS上に構築してきた。宇佐見氏は藤田医科大学が利用しているAWSのアーキテクチャを説明し,セキュアなネットワークによりシームレスなデータ連携が可能なほか,マネージドサービスにより耐障害性,セキュリティ向上,運用効率改善を実現しており,電子カルテがクラウド上で稼働することでAIなどの最新技術を導入しやすくなると述べた。なお,国内で数少ないAWSプレミアティアサービスパートナーである日本IBMとは,2022年には戦略的協業契約を締結し,IBMのソフトウエアをAWS上でSaaSとして提供するとともに,幅広い分野で共同投資を行っている。
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日本アイ・ビー・エム(株)
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