第26回CTサミットが,「CT未来予想図」をテーマに開催
2023-8-16
「CT未来予想図」をテーマにしたCTサミット
第26回CTサミットが2023年7月29日(土),千里ライフサイエンスセンター(大阪府吹田市)を会場に開催された。当番世話人を大沢一彰氏(松本メディカルクリニック茨木水尾画像診断センター),実行委員長を吉川秀司氏(大阪医科薬科大学関西BNCT共同医療センター)が務め,テーマには「CT未来予想図」が掲げられた。大阪府内での開催は3回目。2007年に大阪国際交流センターで行われた第11回でも当番世話人を務めた大沢氏は,開会の挨拶の中で,台風により開催が危ぶまれたと当時を振り返り,無事に開催できることを喜んだ。そして,今回で世話人を退任することを明かし,CTの今後の進化について考える機会にしたいと述べた。プログラムは,教育講演が1題,技術講演「フォトンカウンティングCT」が3題,ランチョンセミナーが5題,特別講演が2題,シンポジウム「CT未来予想図」が4題用意され,このほかに一般演題(ポスター展示)と機器展示も設けられた。
まず,教育講演として,市川勝弘氏(金沢大学医薬保健研究域保健学系)が登壇。「CTの未来予想図」と題して講演した。座長は,⾼⽊ 卓氏(千葉市⽴海浜病院放射線科)が務めた。市川氏は,CTの今後について,SNRが向上し,エネルギー弁別が正確になり,より高解像度で,撮影の短時間化と広範囲化することが理想だと述べた。その上で,これらを実現する可能性がある技術として,フォトンカウンティングCTを挙げてその特性を解説した。また,さらなる高解像度技術として,自身が研究を進める極超解像度CTとphoto-realistic VR(写実的VR)の研究成果を紹介。CTは確実に進歩していくポテンシャルを有するとまとめた。
続いて,舛田隆則氏(川崎医療福祉大学診療放射線技術学科)と三好利治氏(岐阜大学医学部附属病院放射線部)が座長を務め,技術講演「フォトンカウンティングCT」〔シーメンスヘルスケア(株)共催〕が行われた。最初に内田雄己氏(シーメンスヘルスケア)が登壇し,「世界初の臨床用Photon Counting CT NAEOTOM Alphaの最新情報提供」をテーマに発表した。内田氏は,NAEOTOM Alphaの5つの特長として,66msの時間分解能,737mm/sの高速撮影,dual energy撮影,トータル2600mAのハイパワー,「Adaptive 4D Spiral」による最大80cmの動態撮影を挙げた。また,フォトンカウンティングCTのキーアドバンテージとして,検出器ピクセルの狭小化(高分解能化),電気ノイズの除去(低被ばく・定量性向上),X線検出感度の向上(画像コントラストの向上),エネルギー情報の活用(常時スペクトル解析)を紹介した。次に,「日常におけるフォトンカウンティングCT 現場のリアル」と題して,吉田亮一氏(東海大学医学部付属病院放射線技術科)が講演した。吉田氏は,NAEOTOM Alphaの国内第一号機を導入した同院におけるこれまで使用経験を報告。ゲームチェンジをする可能性を秘めた装置だとして,ルーチン検査でも仮想単色X線画像(VMI)を取得可能で,常にスペクトラル画像を撮影というメリットを挙げた。その上で,同院では整形,耳鼻咽喉,脳神経,消化器,循環器領域の検査に用いていると述べて症例画像を供覧し,微細構造の描出能に優れていると説明。これまでの「特別」が「普通」になる装置だと強調した。次いで3番目として,川畑秀一氏(大阪大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)が,「フォトンカウンティングCTを用いた循環器疾患の画像評価:臨床応用と今後の可能性」と題して講演した。同院では2023年2月からNAEOTOM Alphaが稼働している。川畑氏は,循環器領域における使用経験を中心に報告を行い,高精細画像,マルチエネルギー解析,k-edge imagingといったメリットを説明。今後は造影剤や被ばく線量の低減を検討していきたいと述べた。
この後休憩を挟んで,ランチョンセミナーへと進んだ。座長を村上克彦氏(福島県立医科大学附属病院放射線部)と小倉圭史氏(札幌医科大学附属病院放射線部)が務め,次の5社がプレゼンテーションを行った。
(1)GEヘルスケア・ジャパン(株)
(2)(株)フィリップス・ジャパン
(3)バイエル薬品(株)
(4)富士フイルムヘルスケア(株)
(5)キヤノンメディカルシステムズ(株)
次に,特別講演へと進んだ。特別講演1(キヤノンメディカルシステムズ共催)では,船間芳憲氏(熊本大学大学院生命科学研究部医用放射線科学)が座長を務め,檜垣 徹氏(広島大学大学院先進理工系科学研究科)が登壇。「画像再構成法の変遷」と題して講演した。檜垣氏は,まずCT撮影の原理を説明した上で,画像再構成法について,投影空間のデータを実空間の断面画像に変換する処理を「狭義」,投影データを断面画像に変換するまでの一連の処理とノイス低減などの付随的な処理も含めて「広義」と,それぞれ定義して解説した。狭義については,フィルタ逆投影法(FBP),逐次近似再構成法(IR),深層学習応用再構成法(DLR)を挙げて原理を説明。また,広義として,FBP法,逐次近似応用再構成法(hybrid IR),モデルベース逐次近似再構成法(model based IR),DLR,高分解画像を教師データに用いるsuper-resolution DLR(SR-DLR)を詳述した。
ポスター発表(1)を挟んで行われた特別講演2(GEヘルスケア・ジャパン共催)では,兵頭朋子氏(日本大学医学部放射線医学系放射線医学分野)が「あると嬉しいCT画像:最新技術を交えて」をテーマに講演した。座長は,水戸武史氏(箕面市立病院放射線部)が務めた。兵頭氏は,当直帯で知っておきたい上腹部画像診断について,症例を交えて説明。単純CTが必要となる症例や造影CTを検討すべきケース,胆管炎・肝炎などの造影タイミング,膵がんの検出ではthin slice画像が有用であること,MPR画像が求められる場面などを解説した。
この後ポスター発表(2)が行われ,次いで今回最後のセッションとなるシンポジウム「CT未来予想図」へと進んだ。このシンポジウムでは,CTの未来を展望するために,「AI」「救急」「造影」「被ばく」の4つのキーワードごとに4人の講演者が発表した。座長は,大沢氏と大村知己氏(秋田県立循環器・脳脊髄センター放射線科診療部)が務めた。最初に,福永正明氏(倉敷中央病院放射線技術部)が登壇。AIについて,「脳卒中読影支援ソリューションの使用経験から考える」と題して講演した。福永氏は,AIを用いた自動処理技術について,5H1W(いつ,どこで,だれが,何を,なぜ,どのように)の観点から,自動処理技術がどのような場面で,医師や診療放射線技師を支援し,見落とし防止や負担軽減,確信度向上などに寄与しているかを概説した。また,キヤノンメディカルシステムズの読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」のAIアプリケーションの使用経験を報告。脳神経領域おける「Abierto RSS for Neuro」で脳内の虚血領域検出を行う「Ischemia Analysis」の有用性などを紹介した。
続いて,救急におけるCT未来予想図について,藤原 健氏(堺市立総合医療センター放射線技術科)が,「救急CT 未来への役割〜SCANからSTAT画像報告まで〜」をテーマに発表した。STAT画像報告では,通常の読影と異なり限られた所見のみとして,頭蓋内出血や脳梗塞,肺塞栓症,深部静脈血栓症,大動脈解離,気胸,腹腔内遊離ガスなど,生命予後にかかわる緊急性の高い疾患を対象としている。藤原氏は,それらを解説した上で,救急CTの意味について現状と今後を展望した。
3番目に登壇した寺澤和晶氏(さいたま赤十字病院放射線科部)は,造影について,「造影CT技術〜過去から現在の回想と今後の展開〜」と題して講演した。寺澤氏は,造影理論の重要性に言及した上で,教育不足や経験則に頼っているといったこれまでの課題を指摘。また,造影技術に触れて,time density curve(TDC)を活用した造影理論の解説をした。さらに,寺澤氏は,現在では造影効果のシミュレーションが行われるようになり,ボーラストラッキング法やテストインジェクション法といったパラメータが開発されるなどの撮影技術が進歩していると指摘。加えて,dual energy撮影や低電圧撮影により,造影効果の向上と被ばく低減が図られるようになったと述べた。その上で,将来について,AIの活用によって最適な条件が設定できるようになるだろうとの見方を示した。
シンポジウム最後の発表では,村松禎久氏(国立がん研究センター東病院放射線診断科)が登壇。被ばくについて,「X線CT装置における線量指標の時代変遷」をテーマに発表した。村松氏は,線量評価について,CT技術の高度化を追走しており,ビーム幅が広がったことで安全規格(IEC 60601-2-44)の改定が行われたほか,dual energy CTの線量評価の標準化も進んでいると述べた。そして,dual energy CTの線量評価に関し,dual source CTやkV switchingといった異なる技術における表示値と実測値との比較などの考え方を示した。
すべてのセッション終了後には,ポスター展示された一般演題A(2022年1月〜2023年4月に国際学会などで英文発表された演題),B(日本語の未発表演題)の表彰式が行われた。
最後に,CTサミット代表世話人で,次回の当番世話人を務める船間氏から,開催概要が発表された。次回第27回CTサミットは,2024年7月27日(土),九州大学医学部百年講堂(福岡県福岡市)で開かれる予定である。
●一般演題(ポスター)表彰
Magna Cum Laude
Effect of Timing of Imaging on Extracellular Volume Fraction of Normal Myocardium
望月純二 氏(みなみ野循環器病院)ほか
Cum Laude
Computed tomographic pulmonary angiography: Three cases of Low-tube-voltage acquisition with a slow injection of contrast medium
肺血管CT-angiography:低管電圧スローインジェクション撮像を施行した3例
瓜倉厚志 氏(国立がん研究センター中央病院)ほか
Certificate of Merit
頭部CT angiographyにおける数学的シミュレーションに基づいた造影剤投与量の最適化
三井宏太 氏(佐賀県医療センター好生館)ほか
●協賛企業(五十音順)
・展示協賛
アミン株式会社,キヤノンメディカルシステムズ株式会社,株式会社京都科学,株式会社Sansei,シーメンスヘルスケア株式会社,東洋メディック株式会社,株式会社根本杏林堂,バイエル薬品株式会社,富士フイルムヘルスケア株式会社
・広告協賛
株式会社アゼモトメディカル,アミン株式会社/ザイオソフト株式会社,株式会社イーメディカル東京,株式会社インナービジョン,コニカミノルタジャパン株式会社,GEヘルスケア・ジャパン株式会社,GEヘルスケアファーマ株式会社,シーメンスヘルスケア株式会社,東洋メディック株式会社,バイエル薬品株式会社,PSP株式会社,富士製薬工業株式会社,富士フイルムメディカル株式会社,伏見製薬株式会社,ブラッコ・ジャパン株式会社,株式会社増田医科器械
●問い合わせ先
第26回CTサミット
http://ctsummit.jp