最後となる「第6回超高精細CT研究会」がWeb開催,高精細画像の臨床的意義を報告
2023-2-14
6回の開催で終了することになった「超高精細CT研究会」。
今後の活動は「Rise Up CT Conference」に引き継がれる。
第6回超高精細CT研究会が,2023年1月29日(日),国立がん研究センター中央病院の会場からWeb配信を行うオンライン形式で開催された。同研究会は,キヤノンメディカルシステムズ(株)の高精細CT「Aquilion Precision」について,その「性能を生かした最適な特性評価や撮影技術の啓発と普及」を目的に2017年から開催されている。冒頭に挨拶した代表幹事の⽯原敏裕氏(国立がん研究センター中央病院)は,「研究会での議論を通じて,超高精細CTの性能と臨床的有用性への理解が広がることを期待している」と述べた。なお,プログラムの終了後に⽯原代表幹事より,同研究会は今回を持って終了することが発表された。今後,高精細画像の研究や発表は,同じくキヤノンメディカルシステムズが共催する「Rise Up CT Conference」に引き継がれることになる。次回(第4回)のRise Up CT Conferenceは2023年5月13日(土)に開催が予定されている。
最後の超高精細CT研究会のプログラムは,一般演題5題,技術講演2題,特別講演のほか,アミン(株),(株)根本杏林堂,キヤノンメディカルシステムズによる企業最新情報提供が行われた。総合司会は,鈴⽊雅裕氏(イーメディカル東京)が務めた。
一般演題では,宮下宗治氏(⽿⿐咽喉科⿇⽣北⾒病院)と近藤雅敏氏(九州⼤学)が座長を務めた。最初に⿅野隼杜氏(東北⼤学病院)が,「CT値の観点からの頭部CT angiographyにおける⾎管描出に関する超⾼精細CTと従来型CTの⽐較」を報告した。⿅野氏は中大脳動脈の穿通枝の描出能について超高精細CTと従来CTでCT値をもとに比較検討した結果を示し,超高精細CTでは1mm前後の細い血管径の描出能に優れていると述べた。続いて,茅野伸吾氏(東北⼤学病院)が「Case Series:Carotid computed tomography angiography after cobalt-based alloy carotid artery stenting using ultra-high-resolution computed tomography」について発表した。茅野氏は,Radiology Case Reports(16:3721〜3728, 2021)で報告した超高精細CTを用いた頸動脈ステント留置術(CAS)のステント内腔評価について紹介し,従来CTに比べてコバルト系合金ステントの場合でも良好に評価できると述べた。
⼩野志穂氏(札幌医科⼤学附属病院)の「気管⽀動脈−肺動脈シャントを描出し得た1例」では,肺動脈瘤の精査に超高精細CTを用いることで責任血管となる鎖骨下動脈だけでなく,瘤内から肺動脈に向かう気管⽀動脈−肺動脈シャントまで描出できた症例を報告した。「超⾼精細CTを⽤いた冠動脈CTにおける⼼拍数の重要性」について発表した⼩島 宰氏(九州⼤学病院)は,超高精細CTによる冠動脈CTのモーションアーチファクトについて,心拍数による影響を検証した結果を報告した。超高精細CTでは,60bpmを超えるとモーションアーチファクトの影響を受けることから最適心拍数は60bpm以下にすることが望ましいと結論づけた。
最後に,⼤家佑介氏(⼩樽掖済会病院)が,「消化器専⾨病院における超⾼精細CT運⽤の検討」を報告した。消化器専門病院で超高精細CTのみ1台で日常検査をこなす中で,管球熱容量も考慮した最適な撮影条件,画像再構成のスピードを補う「Insta View」の活用や大腸CT検査(CTC)における1024マトリックス画像での描出能などの初期経験を発表した。
技術講演は,中屋良宏氏(東洋公衆衛⽣学院)と石原氏が座長を務めて2講演が行われた。最初は,「⾼精細CTの撮影線量って結局どうなの? ー5年の使⽤経験と論⽂から撮影線量について考える」と題して,宮前裕太氏(国立がん研究センター中央病院)が登壇した。宮前氏は超高精細CTの特性と臨床応用について改めて振り返り,空間分解能の向上,DLR(deep learning reconstruction)の適用で,頭頸部領域での微細構造の描出やステント内腔評価,子宮がん術前の血管走向の把握など,放射線科医や手術を行う臨床医から高い評価を受けていると述べた。その上で,超高精細CTの課題である低コントラスト検出能を担保するために撮影線量を増やす必要があるのかについて,報告されている論文の調査や同院でのシステムパフォーマンス関数(System performance function)を用いた解析の結果などから,DLRを適用することで画質を担保しつつ線量を下げた撮影が可能であり,従来と線量設定を特別に変える必要はないと結論づけた。
続いて,辻岡勝美氏(藤⽥医科⼤学)が,「CTの超⾼精細性能を考える −PCCTだけじゃない.MTFだけじゃない」と題して講演した。PCCT(photon counting CT)が注目を集める中で,辻岡氏は改めてPCCTの技術的な特徴をおさらいし,PCCTは夢の装置か,CTの最終形なのか,その利点と問題点を概説した。PCCTの利点としては超高精細画像,マルチエネルギー弁別,低画像ノイズが挙げられる。一方で技術的な問題点として,クロストーク,パイルアップ,データ転送速度,エネルギー弁別などの課題があり,それが解決されたときにCT技術は大きく変化するだろうと辻岡氏は述べた。従来のEID-CT(energy integrated detector CT)は,そのカウンターパートとして大きな存在であり,高精細CT(Aquilion Precision)と超解像技術であるPIQE(Precise IQ Engine)によって,EID-CTにおいてもさらに高精細画像の可能性を高めるだろうと述べた。
最後のプログラムは,三上 毅氏(札幌医科⼤学脳神経外科)による特別講演「脳⾎管障害・頭蓋底外科⼿術シミュレーション画像の新しい展開」で,座長は森山紀之氏(医療法人社団進興会),片田和広氏(藤⽥医科⼤学)が務めた。三上氏は,脳神経外科手術の発展を振り返り,顕微鏡を用いたマイクロサージェリーが脳動脈瘤や脳動静脈奇形などの手術を進化させ,その中でも術前術中のアセスメントとして三次元画像によるシミュレーションが手術の確実性や安全性を高めたと述べた。その上で,超高精細CTなどの高精細画像が脳神経外科手術にもたらすものについて,動脈瘤,脳動静脈奇形,血行再建術,頭蓋底外科手術の4領域で実際の手術画像を供覧しながら報告した。三上氏は,画像診断機器の進歩で解剖学的なシミュレーションは高精度になっており,それによる画像支援は手術時の状況認識や期待値の推定を向上しており,今後のさらなる発展に期待するとまとめた。
●問い合わせ先
超高精細CT研究会
http://u-hrctkennkyuukai.kenkyuukai.jp/