医療放射線防護連絡協議会が第44回「医療放射線の安全利用フォーラム」をオンラインで開催
2023-2-14
ガイドラインの改訂内容などが紹介されたほか,
参加者には改訂版が資料として配付された
医療放射線防護連絡協議会は,2023年2月11日(土)に第44回「医療放射線の安全利用フォーラム」をオンラインで開催した。同フォーラムは,医療放射線安全の情報を共有し,安全利用向上を推進する目的で毎年開催されている。今回のフォーラムは,同協議会が2004年に発行した「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン−Q&Aと解説−」が2022年に改訂されたことを記念し,「IVRにおける放射線安全管理」をテーマに行われた。なお,総合司会は同協議会総務理事の菊地 透氏が務めた。
同協議会会長の佐々木康人氏の開会挨拶の後,日本IVR学会担当理事/国際医療福祉大学の赤羽正章氏が「IVRにおける皮膚障害回避の意義」と題して基調講演を行った。赤羽氏は,わが国の診断参考レベル(DRL)についてまとめた上で,「DRLは標準的な条件・状況に基づいており,IVRに伴う患者の皮膚障害と直接関係するものではないが,最適化の推進は必要以上の高線量を抑制する」とその有用性を指摘した。また,最大皮膚線量をしきい線量で制限することについては,治療の中断あるいは継続と皮膚障害回避の損益バランスのエビデンスがない状態にあり,しきい線量を意識した運用が現実的な対応ではないかと述べ,そのための指針としてガイドライン改訂版に期待される役割は大きいとした。
続いて,「IVRの皮膚障害に関するQA」をテーマに,ガイドライン改訂に携わった4名の演者によるパネル討論が行われた。まず,兵庫医科大学病院放射線技術部の松本一真氏が,「『IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン』改訂についての留意点」と題して発表した。松本氏は,ガイドラインの主な改訂点として,血管撮影装置や線量計,防護板などに関する情報の更新,DRLをはじめとする新しい知見や文献の追加に加え,国際電気標準会議(IEC)の規格に準拠し,測定点の呼称が「IVR基準点」から「患者照射基準点」に変更されたことなどを挙げた。また,医療法施行規則の一部改正や電離放射線障害防止規則の改正などに伴う変更内容についても解説されているなどを紹介した。
続いて,榊原記念病院放射線科の武田和也氏が「IVRにおける放射線被ばくの普遍性」と題して発表した。武田氏は,IVRにおける放射線被ばくは,患者の体格や手技の難易度,血管撮影装置の設定によって増減することから,正しい線量測定法の理解が重要であるとし,各線量計やファントムによる違いを整理したほか,同院でのDSAプロトコールの使い分けについて紹介した。
3人目の演者として,医療法人あかね会土谷総合病院放射線室の石橋 徹氏が登壇し,「診断参考レベルの利用方法と線量管理・記録」について発表した。医療法施行規則の一部改正に伴い,2020年4月に義務化された被ばく線量記録・管理は,患者被ばく線量の最適化を図り,有害事象発生時に放射線との因果関係を検証することを目的とする。石橋氏は,これらについてまとめた上で,過剰被ばくが予想される際の対応として,患者へのインフォームドコンセントや経過観察について解説した。
最後に,千葉県救急医療センター検査部放射線科の今関雅晴氏が「被ばく線量計と放射線防護」と題して発表した。今関氏は,線量計や線量測定の特徴などを具体的に紹介し,さまざまな種類・方法の中から施設の実情に合った方法を選択することが重要だとした。また,防護板・衝立などの効果は数値による表示のみでは理解し難いため,カラーマップ表示などを用いて,視覚で実感できるようにする工夫が必要であるとした。
パネル討論後,同協議会企画委員長/京都医療科学大学の大野和子氏の司会による総合討論が行われた。今回のガイドライン改訂について,「被ばく線量の正当化や最適化の具体策が示されており,ぜひ活用して欲しい」という登壇者からの発言のほか,行政や測定機器メーカーなどの関係者からも意見が寄せられた。また,総合討論の最後には,協議会としての「IVRの皮膚障害回避に関する提言」についての検討が行われた。なお,総合討論を含む当日の様子は,3月1~15日にWebで配信される。
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