インテュイティブサージカル,シングルポート内視鏡手術支援ロボット「ダビンチSPサージカルシステム」の製品発表会を開催
2023-2-3
「ダビンチSP」のデモンストレーション
インテュイティブサージカル(同)は2023年1月31日(火),内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ」シリーズの最新モデルであるシングルポートシステム「ダビンチSPサージカルシステム」(ダビンチSP)の販売を開始し,東京トレーニングセンター(東京都江東区)およびオンラインで製品発表会を行った。発表会では,製品紹介と操作デモンストレーションに加え,同社社長の滝沢一浩氏とインテュイティブサージカル米国本社Executive Vice President and Chief Strategy and Growth OfficerのDave Rosa氏によるプレゼンテーション,札幌医科大学消化器・総合,乳腺・内分泌外科学講座教授の竹政伊知朗氏による講演が行われた。
ダビンチSPは,日本初(同社調べ)となるロボットアームが1本のみのシングルポート内視鏡手術支援ロボットで,現在国内で多く稼働している「ダビンチX」「ダビンチXi」と同じOSが搭載された第4世代に位置づけられる。ロボットアームに取り付けられた直径2.5cmのカニューラから,カメラと3本のインストゥルメント(専用鉗子)を体腔内に挿入して手術を行う。ロボットアームは360°回転可能で,カメラには手首関節を搭載,インストゥルメントも柔軟に屈曲するため,制限のある術野へのアプローチが可能となっている。最少1つの切開創で手術を行えることから,患者の負担軽減と整容性が期待される。
システム構成は従来のマルチポート型のダビンチシリーズと同じく,ペイシェントカート,サージョンコンソール,ビジョンカートの3コンポーネントからなる。適応領域は一般消化器外科,胸部外科(心臓外科ならびに肋間からのアプローチによる手術を除く),泌尿器外科,婦人科,頭頸部外科(経口的手術に限る)。2022年9月22日に製造販売承認を取得,11月1日付で保険適用を受けている。
製品発表会で同社の事業概要と展望についてプレゼンテーションした滝沢氏は,国内では2009年に薬事承認を得て販売を開始して以降,順調に導入台数を伸ばし,2022年12月末現在で570台以上が導入されていることを紹介。ダビンチSPについては,既存システムを導入ずみの施設がターゲットであるとし,戦略として「シングルポートが好適応となる領域(下咽頭がんなど)へのアプローチ」「ロボット手術のアウトカム向上(前立腺への後腹膜アプローチによる腹腔内合併症減少など)」「まったく新しい領域(甲状腺や乳腺外科など:国内では未承認)への展開」の3つを挙げ,同社のミッションである「医師が制約なく治療できる可能性を広げる」ソリューションであると紹介した。
また,ダビンチSP開発チームのリーダーを務めたRosa氏は,ダビンチSPの開発に至るまでのインテュイティブサージカルの歴史やビジョンを紹介した上で,エコシステムの重要性,触覚の再現やデータ活用によるコスト削減やアウトカム改善といった開発の方向性について述べた。
最後に,竹政氏が「消化器がん治療におけるロボット手術の普及とダビンチSPへの期待」と題して講演を行った。日本消化器外科学会でロボット支援手術検討委員会委員長を務める竹政氏は,下部消化管外科領域のロボット支援下手術の第一人者であり,これまでに700例以上のダビンチ手術を行っている。竹政氏は,ロボット支援下手術は精密かつ低侵襲に手術を行えるが,若手消化器外科医の減少によるオペレータ確保の難しさや,ダブルライセンスが必要(認定資格取得の平均年齢44歳)といった課題があったことから,学会に働きかけて2022年にプロクター(指導医)による指導の下に手技を行えるように術者要件を緩和し,若手医師がロボット手術を行える環境を整えたことを紹介した。
また,ダビンチSPについて竹政氏は,小さな切開創からでも良好な視野と操作性を得られると述べ,手技の難易度が高い単孔式手術を選択しやすくなることに大きな期待を寄せた。さらに,現在は実験段階であるものの,将来的には切開創をつくらない経肛門的手術を行える可能性もあることを示唆した。そして今後の展望として,人工知能(AI)やIoT,5Gなどの技術革新を踏まえ,さまざまな先進技術と手術支援ロボットを組み合わせることで遠隔手術指導や遠隔手術も可能になるとし,地域の医療格差の解消にもつながる手術支援ロボットの可能性に期待を示した。
*インテュイティブサージカル提供
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