「CT画像の価値を高める」をテーマに第25回CTサミットが開催
2022-8-9
テーマは「CT画像の価値を高める」
第25回CTサミット〔主催:CTサミット,後援:公益社団法人日本放射線技術学会関東支部・一般社団法人千葉県診療放射線技師会,協力:(株)インナービジョン〕が,2022年7月30日(土),千葉市文化センターアートホール(千葉県千葉市)で開催された。CTサミットは,1997年に第1回全国X線CT技術サミットが愛知県名古屋市で開催されて以来,CT技術の進歩と臨床での普及の歩みとともに,四半世紀にわたり歴史を刻んできた。記念すべき今回は,当番世話人を梁川範幸氏(つくば国際大学医療保健学部診療放射線学科),実行委員長を高木 卓氏(千葉市立海浜病院放射線科)が務め,テーマには「CT画像の価値を高める~Value of CT images~」が掲げられた。開会に当たって登壇した梁川氏は,CTサミットの一番のメリットは,熱気を帯びた質疑応答であるとし,それが可能な対面方式で開催できたと述べ,今後の臨床や研究で役立つプログラムを用意したので,最後まで楽しんでほしいとまとめた。
そのプログラムは,シンポジウム(1)「CT画像の価値を高める創意工夫」〔共催:千葉県CT研究会,バイエル薬品(株)〕,ランチョンセミナー〔共催:(株)フィリップス・ジャパン,シーメンスヘルスケア(株),GEヘルスケア・ジャパン(株)〕,技術講演「空間分解能の価値」〔共催:キヤノンメディカルシステムズ(株)〕,特別講演〔共催:GEヘルスケア・ジャパン(株)〕,シンポジウム(2)「臨床でのCT画像の価値を高める」,ポスター発表,企業プレゼンテーションで構成された。
最初に行われたシンポジウム(1)「CT画像の価値を高める創意工夫」では,梁川氏と高木氏が座長を務め,3名が発表した。最初に登壇した橋本慎也氏(千葉西総合病院放射線科)は,「Spectral CT 7500を心血管に活かす!」と題して,2層検出器搭載CT「Spectral CT 7500」(フィリップス・ジャパン)での検査の実際について報告した。橋本氏は,Spectral CT 7500ではすべての撮影でスペクトラルデータを取得できるというメリットを説明した上で,左心耳閉塞症例での使用経験を説明。さらに,体幹部を約2秒でスキャンする高速撮影による大動脈解離症例での有用性,心筋遅延造影におけるMCAフィルタのメリットなどを解説した。また,冠動脈専用の人工知能(AI)画像再構成技術である“Precise Cardiac”による検査の実際についても報告した。続いて,梅田隆太郎氏(千葉市立海浜病院放射線科)が,「CT画像とリニアックを用いた乳癌手術支援」をテーマに発表した。梅田氏は,限局性乳がんの切除範囲を決定するためには広がり診断が重要であるとし,乳房MRIの代わりに腋窩リンパ節評価や遠隔転移検索が可能なCTを施行した経験を報告した。同院では,仰臥位にてCTを撮影し,さらにリニアックと組み合わせて切除範囲を決定している。梅野氏は,非剛体レジストレーションにより切除範囲の決定が容易となり,乳房CTの価値を高められると述べた。3番目に登壇した石井郁也氏(国立がん研究センター中央病院放射線技術部)は,「CT画像をIVRで活かす−撮影・画像処理の創意工夫−」をテーマに,手術支援画像,ナビゲーション画像作成のノウハウを発表した。石井氏は,経皮的腎凍結療法において,従来のDSAに代えて4D-CTAを施行し術前の穿刺プランニング画像を作成することで,35%の造影剤量低減を図れたと説明。さらに,治療時に発生するアーチファクトに対してガントリのチルト機構を活用して解決を図ったというテクニックを紹介した。
この後,ポスター発表(1),ランチョンセミナーへと進んだ。ランチョンセミナーは,石風呂 実氏(東京健康科学大学ベトナム診療放射線学科),大沢一彰氏(医療法人ラポール会青山病院放射線科)が座長を務め,フィリップス・ジャパン,シーメンスヘルスケア,GEヘルスケア・ジャパンの担当者が最新装置・技術について発表した。ランチョンセミナー後には,ポスター発表(2)と企業プレゼンテーションが設けられた。
続いて,船間芳憲氏(熊本大学大学院生命科学研究部)と宮下宗治氏(耳鼻咽喉科麻生北見病院診療支援部)を座長に技術講演が行われた。まず茅野伸吾氏(東北大学病院診療技術部放射線部門)が,「中枢神経領域における空間分解能の価値を探る」をテーマに講演した。茅野氏は,「Aquilion Precision」(キヤノンメディカルシステムズ)を用いた,前交通動脈瘤治療後の健忘症を防ぐために重要なsubcallosal arteryの描出について取り上げた。脳神経外科医2名による視覚評価(定性評価),CT値による評価(定量評価)の「Aquilion ONE」との比較結果を説明し,Aquilion Precisionの方が優れていると報告した。2番目に講演した松本良太氏(藤田医科大学病院放射線部)は,「高精細CTがもたらす空間分解能の向上−胸部領域−」と題して,Aquilion Precisionの使用経験を報告した。松本氏は,Aquilion Precisionに搭載されるディープラーニング画像再構成技術“AiCE”のノイズ低減,視認性向上について説明し,気管支末梢まで描出できることから慢性閉塞性肺疾患(COPD)の評価に有用だと述べた。また,画像再構成にMBIR法の“FIRST”を用いることで,冠動脈ステント内腔を高精度に評価できることなどを報告した。さらに,Aquilion Precisionの画像を教師データに用いた,ディープラーニング画像再構成技術“PIQE”の画像などを供覧。Aquilion Precisionによる空間分解能の向上は微細構造を明瞭化し,病変性状の描出能が良くなり,診断価値の高い画像を提供できると報告した。3題目の講演「腹部領域における価値」では,瓜倉厚志氏(国立がん研究センター中央病院放射線技術部)が,深下腹壁動脈穿通枝皮弁法のためのCTアンギオグラフィをAquilion Precisionで施行した経験について取り上げ,末梢血管が高いCT値で描出できていることなどを報告した。また,腹部領域では,ノイズが多いもののAiCEやFIRSTを用いることで,画質を改善できると説明。空間分解能の高い画像を得られることにより,手術支援画像を提供できると有用性を紹介した。
次に,特別講演が行われた。辻岡勝美氏(藤田医科大学医療科学部放射線学科)が座長を務め,町田治彦氏(東京女子医科大学附属足立医療センター放射線科)が,「私が考えるCTの臨床的価値」をテーマに講演した。町田氏は,放射線科医として歩んでいく中で経験した64列CT登場のインパクトに言及。以前は不十分であった画質が64列CTによって向上し,技術・臨床面で急速な進歩を遂げ,自身も循環器領域の画像診断への興味が増して第99回北米放射線学会(RSNA 2013)ではMagna Cum Laudeを受賞できたことなどを振り返った。さらに,面検出器CTでより広範囲に,2管球CTやモーションアーチファクト抑制技術でより速く,超高精細CTでより細かく,dual energy CTでより高いコントラスト分解能で撮影できるようになったと,心臓CTの進化を解説した。また,フォトンカウンティングCTについても言及して,CTは新たなステージへと向かうと述べた。町田氏は講演のまとめとして,CTの臨床的価値の向上には診療放射線技師の尽力が不可欠だと強調した。
この後,ポスター発表(3)と企業プレゼンテーションを挟んで,シンポジウム(2)が設けられた。平野 透氏(柏葉脳神経外科病院先端医療研究センター)と村上克彦氏(福島県立医科大学附属病院放射線部)が座長を務め,「臨床でのCT画像の価値を高める」をテーマに4名が発表を行った。最初に登壇した大村知己氏(秋田県立循環器・脳脊髄センター放射線科診療部)は,「脳卒中診療のタイムラインで求められるCT画像の価値を考える」と題し,目的に応じた撮影プロトコールなどの説明を行った。急性期脳梗塞では血管の再開通時間が早いほど予後が良いことから,検出能と検査順を考慮した撮影プロトコールの設定が大事だと大村氏は指摘。撮影プロトコールを使い分けることが画像の価値を高めると述べた。さらに,脳動脈瘤検出における3D-CTAについては,リスクを評価できる画像に価値があるとして,画像作成のポイントを解説した。次いで登壇した望月純二氏(みなみ野循環器病院放射線技術部)は,「心臓CTの画像解析が循環器診療に与えるインパクト」をテーマに発表した。望月氏は,「IQon Spectral CT」(フィリップス・ジャパン)による心筋遅延造影CTのプロトコールを説明し,dual energy CTの画像などを供覧した。また,細胞外容積分画(ECV)の評価について解説を行い,現在開発中のECV mapなどを紹介した。3人目の石原敏裕氏(国立がん研究センター中央病院放射線技術部)は,事前収録での発表となった。「がん診療に求めるCT技術」をテーマに,Aquilion Precisionによる超高精細画像の有用性などを解説した。超高精細画像は,肺がん検診において早期発見に寄与し,膵がんの診断精度も従来のマルチスライスCTの画像より向上していると説明。さらに,dual energy CTによって,腎がんなどの治療効果判定の精度向上も図れていると述べた。4人目として登壇した田中善啓氏(国立病院機構水戸医療センター放射線科)は,「救急CT画像活用法~診断・治療・予後~」をテーマに発表した。田中氏は,診断,治療,予後に分けて救急CTの位置づけを説明。診断においては,事前の患者情報の収集が重要で,killer diseaseを鑑別するために「単純+動脈相+実質相」の撮影がゴールドスタンダーであり,撮影後に迅速で画像を配信できることが,CT画像の価値を高めることにつながると述べた。さらに,田中氏は,治療における仮想透視画像の有用性について言及したほか,同センターが導入した遠隔での3D画像の作成を可能にした遠隔画像処理支援システムを紹介した。また,予後に関しては,サルコペニアの評価が重要であるとの考えを示した。
すべてのセッション終了後には,ポスター発表の表彰へと移った。第1位(Magna Cum Laude)には,舛田隆則氏(川際医療福祉大学医療技術学部診療放射線技術学科)らの“Machine learning of the patient characteristics and of vascular features observed on pre-procedural computed tomography angiographs helps to predict endovascular leaks after thoracic endovascular aneurysm repair”が選出された。
この後,CTサミット代表世話人の辻岡氏,世話人の石風呂氏,小川正人氏(行橋中央病院診療支援部),平野氏,梁川氏,宮下氏(監事)が,今回をもって勇退することが発表された。欠席となった小川氏以外の世話人が登壇し,船間氏から記念品が贈呈された。挨拶した辻岡氏は,1997年に行われた全国X線CT技術サミットでは予想を大幅に上回る約600人の参加があり,以後,回を重ねるごとに多くの人たちが出会う場となり,若い人材を育っていったと,CTサミットがこれまで果たしてきた役割を振り返った。そして,今後は,CTサミットの特色を生かして新しい企画に挑んでほしいとエールを送った。
なお,次回第26回CTサミットは2023年7月29日(土),千里ライフサイエンスセンター(大阪府豊中市)を会場に行われる。当番世話人を大沢氏,実行委員長を吉川秀司氏(大阪医科薬科大学関西BNCT共同医療センター)が務める。
●一般発表(ポスター)表彰
第1位(Magna Cum Laude)
Machine learning of the patient characteristics and of vascular features observed on pre-procedural computed tomography angiographs helps to predict endovascular leaks after thoracic endovascular aneurysm repair
舛田隆則 氏(川際医療福祉大学)ほか
第2位(Cum Laude)
鉛含有アクリル防護板によるCT検査室の空間線量分布の変化
伊藤 肇 氏(東千葉メディカルセンター)ほか
第3位(Certificate of Merit)
Dual Energy CTによるWide Volume Scanのつなぎ目の画質特性の検討
福田幸太郎 氏(東京女子医科大学八千代医療センター)
●協賛企業(五十音順)
・展示協賛
アミン株式会社/ザイオソフト株式会社,イーサイトヘルスケア株式会社,キヤノンメディカルシステムズ株式会社,クレアボテクノロジーズ株式会社,株式会社Sansei,GEヘルスケア・ジャパン株式会社,シーメンスヘルスケア株式会社,株式会社根本杏林堂,バルコ株式会社,PSP株式会社,富士フイルムヘルスケア株式会社
・広告協賛
アミン株式会社/ザイオソフト株式会社,株式会社インナービジョン,EIZO株式会社,株式会社京都科学,コニカミノルタジャパン株式会社,GEヘルスケアファーマ株式会社,東洋メディック株式会社,PSP株式会社,富士製薬工業株式会社,富士フイルム医療ソリューションズ株式会社,富士フイルムメディカル株式会社,株式会社マエダ,メディキット株式会社,United Imaging Healthcare Japan株式会社
●問い合わせ先
第25回CTサミット
http://ctsummit.jp
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