4DIN,改正個人情報保護法で新たに創設された「仮名加工情報」について解説するラウンドテーブルを開催
2022-8-8
医療機関向けに臨床情報分析プラットフォーム「SIMPRESEARCH」などを提供する(株)4DINは,2022年8月3日(水),「臨床データベース研究における仮名加工情報活用の実例と今後の可能性~改正個人情報保護法の『仮名加工情報』の創設と4DINが提供する『CoNaxs』について~」と題したメディアラウンドテーブルを(株)オズマピーアール会議室(東京都千代田区)で開催した。
2005年の個人情報保護法施行以降,情報通信技術の発展などに伴い,当初は想定されていなかったパーソナルデータの利活用が可能になったことをを受け,2015年の法改正時に国際的動向や技術の進展,新産業の創出・発展の状況などを勘案する「3年ごと見直し規定」が盛り込まれ,2022年4月に改正個人情報保護法(令和2年改正法)が施行された。
その流れの中で,個人情報を復元することができないよう加工され,本人の同意なく第三者への提供が可能な「匿名加工情報」が2015年に創設された。しかし,イノベーションを促進する観点から,より詳細な分析を比較的簡便な方法で加工でき,一定の安全性を確保しつつデータとしての有用性を加工前の個人情報と同程度に保つ「仮名化された個人情報」を利活用しようとするニーズが高まり,2022年に「仮名加工情報」が新たに創設された。
仮名加工情報は,対照表と照合すれば本人がわかる程度まで加工され,医療・製薬分野での研究や機械学習モデルの教師学習データとしての活用などが想定される。公表を条件として利用目的の変更も可能で,本人からの開示・利用停止請求への対応などの義務が緩和された。半面,内部分析に限定することが条件とされ,第三者提供ができない(委託や共同利用は除く)ほか,個人識別符号の削除のためゲノムデータが利用できず,利用に関する安全な手順やルールが定まっていないことが課題として指摘される。
同社代表取締役の高橋精彦氏は,これらの経緯を解説した上で,同社の臨床データ匿名化ツール「CoNaxs」について紹介した。CoNaxsは,ITの知識がなくても臨床情報の仮名化/匿名加工が容易に行え,情報管理者の作業を大幅に低減する。また,氏名を削除し日付をずらす加工を行うことから,万一電子カルテデータが流出した場合も個人を照合することはできないなどの利点がある。高橋氏は,SIMPRESEARCHやCoNaxsの提供を通じて日本の医療データベース研究を迅速化させ,新たなイノベーションを生み出し,医療の最終受益者である患者に貢献していきたいと展望を述べた。
続いて,順天堂大学大学院医学研究科放射線診断学講座教授の桑鶴良平氏が「医療機関における臨床データベース研究と『仮名加工情報』の活用可能性」と題して解説した。順天堂大学は,4DINとの共同研究講座「データサイエンス推進講座」を2018年に設置,電子カルテに保存されている診療情報の二次利用を目的として臨床データベースの構築を行っている。電子カルテなどに蓄積された基礎データをCoNaxsにより仮名加工を行ってSIMPRESEARCHに保存し,学内の研究者による臨床研究や製薬企業などのパイロット研究や市販後調査などに利用可能である。個人情報保護のため,学内では研究計画の作成や倫理委員会の承認を必要とし,外部利用者には匿名化したデータの集計・解析結果のみが提供される。
桑鶴氏は,臨床データベースの構築・活用により,仮名加工情報を用いてfeasibility study(実現可能性調査)を行い,結果を推測した上で本研究を行うことが可能となり,有意な研究結果が得やすくなるとその有用性を強調した。また,同一法人内であれば多施設の仮名加工情報による研究が可能なため,順天堂大学では2022年度から浦安病院,静岡病院のデータの蓄積も開始したことなどを紹介した。最後に,日本は皆保険制度などのため均質なデータが得られるという利点があり,仮名加工情報の活用により,研究を発展させていきたいと期待を示した。さらに,高橋氏は新型コロナウイルス(COVID-19)について,日本は蓄積された情報のスピーディな活用に至っていないと指摘。データに迅速にアクセスし,仮説の検証を行うことで医療の進歩につながるのではないかと述べた。
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