第51回日本神経放射線学会で,ダイバーシティとインクルージョンをテーマにしたシンポジウムを開催
2022-2-24
ダイバーシティとインクルージョンを考える機会
第51回日本神経放射線学会が2022年2月18日(金),19日(土)の2日間,ソラシティカンファレンスセンター(東京都千代田区)とWebのハイブリッド形式で開催された。会長は,岩渕 聡氏(東邦大学医療センター大橋病院脳神経外科教授)が務め,テーマには,「可視化 —見えるもの,見えないもの,見たいもの—」が掲げられた。19日にはA会場において,ダイバーシティ推進プログラム「医療におけるダイバーシティ&インクルージョン・シンポジウム」が行われた。
日本では,国を挙げて働き方改革に取り組んでいる。医療においても2024年4月から医師の時間外労働の上限規制が設けられることから,タスクシフト/シェアなど新しい働き方に向けた取り組みが進められている。この働き方改革のカギの一つと言われているのが,多様性を意味するダイバーシティであり,それをインクルージョン(受容)する社会が求められている。同学会では,ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会(旧・ダイバーシティ推進委員会)が活動しており,これまでもダイバーシティ推進プログラムを学会開催時に行ってきた。今回は,第1部「企業の取り組み・医療の取り組み」,第2部「パネルディスカッション ダイバーシティ&インクルージョンについて考えてみましょう!!」の2部構成に分けて,企業や医師の視点から発表,意見交換が行われた。
第1部では,工藤與亮氏(北海道大学大学院医学研究院放射線科学分野画像診断学教室教授)と阿久津博義氏(日本脳神経外科学会ダイバーシティ推進委員会委員/獨協医科大学脳神経外科学主任教授)が座長を務めて,4名が発表した。
最初に登壇した,松葉香子氏〔GEヘルスケア・ジャパン(株)執行役員アカデミック本部長兼エジソン・ソリューション本部長〕は,「医療関連企業における“普通の”女性活躍」と題して発表した。松葉氏は,自身が経験した米国の病院と日本企業における国籍や性別の取り上げられ方の違いを紹介し,企業の方がダイバーシティとインクルージョンが進んでいるわけではないと述べた。そして,「ロールモデルの罠」として,女性に対して理想のロールモデルを質問することは必ずしも適切ではないとの見解を示した。さらに,松葉氏は,同社における女性活躍のための施策について,ライフイベント,ハラスメント対策などの施策を紹介した。
2番目には,宇佐見英司氏(GEヘルスケア・ジャパン執行役員アジアパシフィック人事本部長)が登壇。「医療に携わる企業が考える女性活躍以外のダイバーシティ&インクルージョン」をテーマに,同社におけるダイバーシティとインクルージョンに対する考え方,具体的な取り組みを紹介した。同社は,社内のコミュニティ活動として,女性社員による座談会,女性社員の意識調査,キャリアデザインセミナーなどを行っているほか,障がい者雇用施策としてパネルディディスカッションの開催,性的指向について就業規則の改正,東京レインボープライドへの参加などを行っている。宇佐見氏はこれらを説明した上で,働き方の多様性を進めるためのリモートワーク制度などを紹介した。さらに,宇佐見氏は,これからの時代のリーダーシップ像として,方向付け,コーチング,フィードバック,褒賞の4つの役割を挙げた。まとめとして宇佐見氏は,今後の同社は多様なメンバーが集い,認められ輝ける場を与えられ,ゴールに向かって,ベストな人材がベストな仕事をベストな環境できるようにめざすと述べた。
次に,「東邦大学におけるダイバーシティ推進の取り組み」と題して,木内俊介氏(東邦大学ダイバーシティセンター副センター長/東邦大学大学院医学研究科循環器内科学講師)が発表した。東邦大学は1925年に帝国女子医学専門学校として創立されて以降,女性の理科教育に力を入れるとともに,女性の活躍を支援し,研究や仕事をしやすい環境を推進してきた。木内氏はこうした取り組みを紹介したほか,2017年に設置されたダイバーシティ推進センターの組織体制などを説明。これらの活動の成果もあり,女性職員の定着率などが向上していると述べた。
4人目に登壇した相田典子氏(神奈川県立こども医療センター放射線科部長)は,「私がダイバーシティを理解するまでの道のり」をテーマに,自身の医師として足跡を振り返りつつ,女性としての意識や仕事への取り組み方の変遷を紹介した。相田氏は,大学入学当時は医学部に進学する女性も少なく,男女の違いを受け入れるのが当然の時代だったと述べた。さらに,その後出産,育児を経てもダイバーシティと向き合ってこなかったという。しかし,学会で理事などを務めるようになり,ダイバーシティへの関心を持つようになっていった。相田氏はこうした道のりを説明した上で,学会などにおけるクオータ制度について触れ,現状を変える一歩になるとの見方を示した。発表のまとめとして相田氏は,すべての人がダイバーシティを自分のことととらえて,個が生かされるようにすることが重要だと述べた。
第2部のパネルディスカッションでは,定藤章代氏(日本神経放射線学会ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会副委員長/藤田医科大学岡崎医療センター脳神経外科教授),菊田潤子氏(日本神経放射線学会ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会副委員長/順天堂大学医学部放射線診断学講座助教)がモデレータを務め,第1部座長の2名,発表者4名がパネリストを務めた。「女性が職場にいることで男性の負担が増えるという考え方に対する意見,管理者としての対応」「女性が院長や理事などの指導的地位になることに対する心理的ハードルを下げる方策について」といったテーマがパネリストに与えられ,意見交換が行われた。
最後に,安藤久美子氏(日本神経放射線学会ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会委員長/神戸市立医療センター中央市民病院放射線診断科医長)が挨拶し,ダイバーシティ推進委員会からダイバーシティ&インクルージョン推進委員会に名称を変更したことを紹介した。
●問い合わせ先事務局
日本神経放射線学会
ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会 委員長・安藤久美子
TEL 0493-81-5550
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