日本メドトロニック,脊椎手術に特化した手術支援ロボット「Mazor X」の製品内覧会を開催
——より精度の高い手技,術者に依存しない低侵襲な脊椎固定術の普及をめざす
2021-10-15
脊椎手術支援ロボット「Mazor Xロボットシステム」
日本メドトロニック(株)は2021年10月13日(水),メドトロニック イノベーションセンター(神奈川県川崎市)にて脊椎手術に特化した手術支援ロボット「Mazor X(マゾールエックス)ロボットシステム」(以下,Mazor X)の製品内覧会を開催した。Mazor Xは,脊椎固定術の術前計画から術後シミュレーション,スクリュー設置の手技までを一貫して支援するシステムで,サージカルアーム(多軸性ロボットアーム)とナビゲーション技術により,手術計画に基づいたより精密な手技の実施を可能にする。米国を中心に海外では250以上がインストールされており,国内では2021年3月18日に製造販売承認を取得(適応は頸椎を除く),聖マリアンナ医科大学と江南厚生病院で稼働を開始している。
内覧会では始めに,同社の脊椎疾患治療と外科手術支援機器の分野を担う部門であるクラニアル&スパイナルテクノロジーズのバイスプレジデント・前田 桂氏が挨拶に立ち,メドトロニックの概要と同部門の取り組みについて紹介した。メドトロニックは,「生体工学技術を応用し,人々の痛みをやわらげ,健康を回復し,生命を延ばす」をミッションに掲げ,4つの疾患領域(循環器,外科と低侵襲治療・診断,神経科学,糖尿病)について150以上の国で事業を展開している。前田氏は,「クラニアル&スパイナルテクノロジーズでは,より低侵襲で,難しい手技も精確・安全に実施できる環境を実現することで,患者のアウトカム向上をめざしており,Mazor Xがポートフォリオに加わることで強力なツールとなることを期待している」と述べた。
次に,クラニアル&スパイナルテクノロジーズの森田智博氏が,「脊椎疾患と治療法の進展−手術支援ロボット導入の現在と未来―」と題して,脊椎疾患とその治療法,Mazor Xの特徴を概説した。森田氏は,腰部脊柱管狭窄症や腰椎変性すべり症などの治療として行われる脊椎固定術は,ナビゲーションシステムを用いた低侵襲手術が行われるようになっているが,Mazor Xではさらにサージカルアームを加えることで,術者の手技をガイドし,難度の高い手術をより精密に行えるようになると説明した。続いて,Mazor Xの実機を用いて,実際の脊椎固定術のフローに従ってデモンストレーションが行われた。
Mazor Xは,術前計画ソフトウエア,ナビゲーションシステム(ワークステーション,カメラ),サージカルシステム(サージカルアームやスクリーン)などで構成される。ベッドに固定して使用するサージカルシステム部分は,使用しない時には本体のワークステーション内に格納しコンパクトに保管できる。
Mazor Xの特徴の一つが,椎体を個別に認識する独自のアルゴリズムを搭載していることで,術前CT画像を基に作成する術前計画においては,患者に合わせたセグメンテーション,また術後のシミュレーションをすることができる。術中ナビゲーションでは,外科用X線透視装置で前額面とオブリークの2方向を撮影し,術前計画画像とレジストレーションするが,椎体を個々に位置合わせできることで精度向上に貢献する。
そして,手術支援ロボットであるMazor Xの中核となるのが,サージカルアームによるスクリュー設置手技のガイドである。画面上で脊椎スクリューの挿入計画を選択すると,ナビゲーションシステムにより,術前計画に基づいてサージカルアーム先端のアームガイドがスクリューの挿入軌道上に自動で移動する。術者は,アームガイドに手術器具を差し込むだけで術前計画どおりの位置・角度で手術器具の操作が可能になる。スクリュー挿入手技では,手術器具の位置が術前計画の画像上にリアルタイムに表示され,術者は画像を見ながら計画した深さまでスクリューを挿入することで精確かつ安全にスクリューを設置することができる。なお,手術開始時にサージカルアームのカメラ(3Dfineカメラ)で術野をスキャンして可動域を決定し,サージカルアームが患者に接触しないよう安全性を担保している。
従来のナビゲーションシステムにロボット技術を加えたMazor Xは,難易度の高い手術をより精密に行えるだけでなく,術者の熟練度に依存する傾向にある低侵襲手術を術者によらず安定的に施行できる環境を実現でき,低侵襲手術の普及に貢献すると期待される。
●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
http://www.medtronic.co.jp/