日本福祉介護情報学会が介護分野のDXをテーマにした第22回研究大会を開催
2021-8-16
介護分野のDXについて取り上げた第22回研究大会
日本福祉介護情報学会は2021年7月17日(土),第22回研究大会をオンラインで開催した。大会テーマには,「介護分野におけるICT化・情報化の展望と課題—介護DXの行方—」を掲げられた。当日は,午前中に自由研究発表が設けられ,午後から基調講演とシンポジウムが行われた。
基調講演では,内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室参事官の山田栄子氏が「健康・医療・福祉分野の行政動向とデジタル化の今後について」をテーマに,デジタルトランスフォーメーション(DX)のための施策について,具体的な事例を交えて講演した。山田氏は,まず現在設置に向けて準備が進められているデジタル庁の目的や基本方針などを取り上げたほか,整備が行われているガバメントクラウドを紹介。その上で,介護分野におけるデジタル化の施策として,ケアプランデータ連携システム構築事業などの解説を行った。さらに,山田氏は,介護分野のデジタル化について,具体例として内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の「スマート介護予防プラットフォームの構築」,一般社団法人気づきデータ解析研究所が開発する介護向けのアプリケーション“MIMOTE”などを説明した。
続くシンポジウムでは,「介護DXの行方 —高齢者介護サービスの近未来—」をテーマに,4名のシンポジストが発表を行った。同学会の代表理事を務める関西学院大学教授の生田正幸氏がコーディネータを務め,コメンテータとして社会福祉法人愛和福祉会理事長の林 恭裕氏,東洋大学ライフデザイン学部准教授の早坂聡久氏も参加した。
最初に厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課課長補佐の秋山 仁氏が「介護分野における生産性向上に向けた取組 〜ICTの導入促進を中心に〜」と題して発表した。秋山氏は,地域医療介護総合確保基金を基に各都道府県が展開しているICT導入支援事業や,ケアプランデータ連携システム構築事業などを紹介。さらに,介護分野の生産性向上のとらえ方や厚生労働省が策定したガイドラインについても解説した。
次に,一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)介護システム委員会委員長の畠山 仁氏が,「科学的介護を支える情報システムの現状と展望」をテーマに発表した。畠山氏は,現在介護分野で進められている科学的介護の歩みを紹介した上で,2021年度から運用の始まった高齢者の状態やケアの内容等データ収集システム「CHASE」と,通所・訪問リハビリテーション収集システム「VISIT」を一体化した科学的介護情報システム「LIFE」について解説した。
続いて,「介護現場のDX その現状と課題」をテーマに,社会福祉法人リガーレ暮らしの架け橋地域密着型総合ケアセンターきたおおじ施設長の杉原優子氏が発表した。杉原氏は,介護現場の現状として,同法人における人材確保・育成,情報伝達・業務支援,ケアの質について述べた。人材確保・育成については,Wi-Fiの整備やタブレットの導入,オンラインセミナーなどの取り組みを紹介。情報伝達・業務支援については,介護ソフトウエア,インカムの使用経験を報告した。さらに,ケアの質に関しては,介護ロボットやLIFEの運用とその評価について述べた。
4番目の発表は,JAHIS保健福祉システム部会福祉システム委員会委員長の金本昭彦氏が,「地方自治体の介護情報システム標準化の展望」をテーマに,業務プロセスやシステム標準化の内容,行政の取り組み,スケジュールなどを報告した。4名の発表後には,総合討論が設けられ,コメンテータを交えて意見交換が行われた。
●問い合わせ
日本福祉介護情報学会
第22回研究大会事務局
https://www.jissi.jp