キヤノンメディカルシステムズ,「Advanced Imaging Seminar 2021 ONLINE」を開催

2021-3-29

キヤノンメディカルシステムズ


完全オンラインで行われた「Advanced Imaging Seminar 2021」

完全オンラインで行われた
「Advanced Imaging Seminar 2021」

キヤノンメディカルシステムズ(株)は,「Advanced Imaging Seminar 2021 ONLINE」を,2021年3月13日(土),20日(土)の2日間に渡って開催した。Advanced Imaging Seminarは,同社の最新技術とその臨床応用の最新情報を紹介するイベントとして,例年春に行われているが,今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する中,首都圏に緊急事態宣言が出されている状況にも配慮して,初めてオンラインのみでの開催となった。配信の冒頭で挨拶した代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,COVID-19への対応に追われる医療関係者に最大限の感謝を述べた上で,「コロナ禍の対応に加えて,少子高齢化,医療費増大など医療の本質的な課題は山積している。キヤノンメディカルシステムズとして,質の高い医療のための臨床価値の向上,効率的な医療提供のためのワークフローの改善,医療経営の効率化の寄与を実現できる製品やサービスを提供することで医療機関に貢献していきたい。画像診断システムでは,質の高い医療データを収集・加工・解析してタイムリーに提供できる医療ITシステムを,人工知能(AI)技術を活用して開発に取り組んでいる。その成果の一端をセミナーを通じて感じてほしい」とコメントした。

瀧口登志夫 氏(代表取締役社長)

瀧口登志夫 氏
(代表取締役社長)

 

13日のDay1では企画講演とMRIのセッション,20日のDay2ではヘルスケアIT(HIT)とCTのセッションが行われた。
Day1の企画講演は,塚田 智氏〔亀田医療情報(株)〕が「災害など非常時に備えたヘルスケアITの考え方」と題して,医療機関におけるBCP(Business Continuity Plan)として,災害対策やリスク管理について概説した。塚田氏は,災害やCOVID-19などの非常事態に備えるリスク管理のためには,平常時から災害を想定したサイクルを回すことが重要で,医療機関を支えるシステムの全体像を深く理解して,根本的なリスクがどこにあるのかを常に考慮して,普段から非常時に備えつつ運用していくことが重要だと述べた。

企画講演:塚田 智氏(亀田医療情報)

企画講演:
塚田 智 氏
(亀田医療情報)

 

“Jump over to the future MRI 2021”をテーマにしたMRIセッションでは,最初にキヤノンメディカルシステムズからMRI最新情報として,「DLR-MRIがもたらす新たな価値」を提供した後,青木茂樹氏(順天堂大学)を座長として3題の講演が行われた。

「Deep Learning Reconstructionの新しい展開」と題して講演した大田英揮氏(東北大学)は,DLRの適用について“Ultra short TE(UTE)撮像”と“Dynamic撮像(Dynamic DLR)”を紹介した。大田氏は,UTEを使った非造影の“Time-SLIP MRA”でDLRを適用することで,撮像時間を延長することなく,コントラスト比は変わらずSNRを改善できたことを報告した。
「拡散MRIの最近のトピック」について講演した神谷昂平氏(東邦大学医療センター大森病院)は,拡散MRIについて“Microstructure imaging”を中心に紹介した。Microstructure imagingは,MRIの信号にエンコードされた情報を解析(デコード)することで,神経密度や腫瘍細胞密度といった生体組織の特徴をとらえる手法であり,MRIの性能向上によって高速化かつ高精細なデータ収集で可能になっている最新の動向を解説した。
最後に押尾晃一氏(慶應義塾大学)が「T2解析による脳の水動態の推定」を講演した。押尾氏は,“Neurofluids”や“glymphatic system”として注目されるようになった脳の水動態(脳脊髄液:CSFや間質液:ISF)の可視化の取り組みを紹介した。CPMG(マルチエコー)シーケンスでTEの異なる画像を取得して多数のT2成分に分解し,カラーマップにして脳全体の水動態として把握できる撮像法を紹介した。

MRIセッション座長:青木茂樹 氏(順天堂大学)

MRIセッション座長:
青木茂樹 氏
(順天堂大学)

大田英揮 氏(東北大学)

大田英揮 氏
(東北大学)

   
神谷昂平 氏(東邦大学医療センター大森病院)

神谷昂平 氏
(東邦大学医療センター大森病院)

押尾晃一 氏(慶應義塾大学)

押尾晃一 氏
(慶應義塾大学)

 

20日のDay2では,HITのセッションとして“「脳卒中における画像診断AIの活用」 Road to Team Innovation”をテーマに3演題が設けられた。
最初に技術情報の提供として,「Healthcare ITソリューション ~読影支援ソリューション」について同社ヘルスケアIT事業統括部ヘルスケアIT事業部の神長茂生氏が講演した。神長氏は,人工知能(AI)技術を用いて急性期脳卒中の診療支援を行う“Abierto Reading Support Solution(以下,Abierto RSS)”の概要を解説した。

神長茂生 氏(ヘルスケアIT事業部)

神長茂生 氏
(ヘルスケアIT事業部)

 

続く講演では,渡邉嘉之氏(滋賀医科大学)を座長として,そのAbierto RSSの臨床応用が報告された。最初に市川翔太氏(倉敷中央病院)が「急性期脳梗塞に対するCT検査フローの変革~Abierto Reading Support Solutionへの期待」を講演。市川氏は,倉敷中央病院での急性期脳梗塞疾患に対するCTファーストの運用の中で,Abierto RSSを使うことで検査から解析結果提供までの時間が短縮し,脳卒中科医師のウェイトタイムストレスの軽減,再現性の向上,診療放射線技師の負担軽減につながっていることを紹介した。
続いて,櫻井謙三氏(聖マリアンナ医科大学)が「近未来の脳卒中診療~非専門医がtPA静注療法を行うために」と題して講演した。櫻井氏は,tPA静注療法や血管内再開通療法など脳梗塞の超急性期治療が進む一方で,脳卒中疑いの患者に非専門医が対応している現状があり,非専門医を支援するシステムが必要であるとして,自身が開発に携わった脳卒中診断補助アプリケーション「One Stroke」やAbierto RSSの役割や今後への期待を述べた。

HITセッション座長:渡邉嘉之 氏(滋賀医科大学)

HITセッション座長:
渡邉嘉之 氏
(滋賀医科大学)

市川翔太 氏(倉敷中央病院)

市川翔太 氏
(倉敷中央病院)

   
櫻井謙三 氏(聖マリアンナ医科大学)

櫻井謙三 氏
(聖マリアンナ医科大学)

 

 

CTのセッションは“An update on clinical decision making using Ultra High Resolution CT”をテーマに,宇都宮大輔氏(横浜市立大学)が座長を務めた。

「超高精細CTの臨床現場での応用」では,富田博信氏(埼玉県済生会川口総合病院)が同院に2019年12月に導入されたAquilion Precisionの導入経緯と高精細CTの基礎特性評価の結果,臨床例などを報告した。富田氏は,高精細画像によって頭頸部において血管の描出能が向上し,3D画像再構成や石灰化の評価などが可能になっていると述べた。
「超高精細CTによる胸部画像診断の可能性 ~肺の解剖学的構造の見え方と肺腺癌診断能への影響」を講演した梁川雅弘氏(大阪大学)は,超高精細CTの胸部領域でのパフォーマンスと診断能について臨床例を提示して解説した。肺腺がんに対する診断能の検討では,超高精細CTの0.25mm・2048マトリックスの最高分解能による画像について病理学的浸潤性の予測精度を検証した結果を解説し,高い精度で診断,予測が可能なことを報告した。
続いて岡田宗正氏(山口大学)が,「超高精細CTによる心大血管診断・IVR術前評価の有用性」と題して講演した。岡田氏は,超高精細CTの大動脈評価を血管径計測,大動脈壁性状,分枝評価(adamkiewicz動脈)について症例を提示して説明した。さらに,IVRの術前画像として超高精細CTを使用し,足底動脈および弓状動脈などの症例で細径コイルによる塞栓手技のシミュレーションを行っていることを紹介した。
最後に,中村 優子氏(広島大学)が「超高精細CTとDeep Learning Reconstructionが可能とする腹部画像診断」を講演した。中村氏は,超高精細CTとDLR(AiCE)を用いた腹部のノイズ低減について報告した。腹部領域では,逐次近似画像再構成法(MBIR)は線量が十分でない場合低コントラスト病変の検出能が向上しないと報告されているが,AiCEでは画質が向上でき,さらに新しいbody sharpを使うことでさらなる描出能の向上が期待できると述べた。

CTセッション座長:宇都宮大輔 氏(横浜市立大学)

CTセッション座長:
宇都宮大輔 氏
(横浜市立大学)

富田博信 氏(埼玉県済生会川口総合病院)

富田博信 氏
(埼玉県済生会川口総合病院)

   
梁川雅弘 氏(大阪大学)

梁川雅弘 氏
(大阪大学)

岡田宗正 氏(山口大学)

岡田宗正 氏
(山口大学)

   
中村 優子 氏(広島大学)

中村 優子 氏
(広島大学)

 

 

●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ(株)
広報室
https://jp.medical.canon/

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