JIRAがDXをテーマにした「画像医療システム産業研究会」を開催
2020-12-1
with/post COVID-19時代のDXを考える研究会
一般社団法人日本画像医療システム工業会(JIRA)は2020年11月27日(金)に,10回目となる「画像医療システム産業研究会」を開催した。JIRAでは,画像医療システム産業の発展の方向性や課題を考える場として同研究会を毎年開催している。今回は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によりオンライン形式での開催となった。テーマには,「Society 5.0時代のヘルスケアII—DXによるCOVID-19対応とその先の未来—」が掲げられ,with/post COVID-19時代における医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)について,産業界や医学界の専門家が講演した。開会に当たって挨拶したJIRAの山本章雄会長は,今後,労働力人口が減少し医療従事者の不足が進むことが予想されることから,医療の効率化を図るためにもDXが必要だと指摘。各講演からヘルスケアにおけるDXの方向性を考えてほしいと述べた。
最初に,一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)産業技術本部統括主幹の小川尚子氏が講演した。小川氏は経団連が2020年11月17日に発表した「。新成長戦略」について取り上げ,その背景やSociety 5.0などの説明を行った。「。新成長戦略」では,Society 5.0時代のヘルスケアのコンセプトとして,「未病ケア・予防」「個別化」「個人の主体的な関与」という3つのキーワードを挙げている。これらを説明した上で小川氏は,「。新成長戦略」ではwith/post COVID-19時代のヘルスケアにおける必要なアクションとして,「『個人起点のヘルスケア』のDX」「『医療介護提供体制』のDX」「DXに向けた環境・関係法制度の整備」の視点で整理していると述べ,それぞれの具体的な取り組みを解説した。小川氏は,講演のまとめに,画像医療システム産業への期待として,「新たな医療産業分野と連携した技術開発」「AIを活用した画像診断精度の向上」「データ連携・収集・活用に向けた環境・関連法制度整備への働きかけ」を挙げた。
2題目の講演では,(株)トリエス代表取締役の葛西重雄氏が,「個人を中心としたヘルスケアへのDX」と題して,personal health record(PHR)など,個人の医療情報を活用するための方策を述べた。葛西氏は,英国NHSとバビロンヘルス社によるスマートフォンを活用した初期診断の紹介したほか,医療・介護の情報を連結して,解析を行うためのデータ基盤などの解説を行った。
続いて,公益財団法人がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長の中村祐輔氏が,「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」をテーマに講演した。内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」は,AI,IoT,ビッグデータを用いたAIポスピタルシステムを開発・構築し,高度で先進的な医療サービスの提供と病院の効率化を実現することを目的としたプロジェクトである。国立成育医療研究センター,慶應義塾大学病院,大阪大学医学部附属病院など5施設が参加している。中村氏は,これらを説明した上で,医療現場で必要なAI技術として,画像診断支援AIやウエアラブルデバイスを用いた自動救急搬送システムなどを紹介した。さらに,実際に医療現場でAIを使用するためのプラットフォームについても言及した。中村氏は講演の最後に,プロジェクトのゴールはAIを活用することで心と心が通い合う医療現場にすることであるとまとめた。
次に,「医療におけるデジタル化の推進と関連産業の発展に向けて」と題して,岩手医科大学客員教授,ボストン コンサルティング グループ シニア アドバイザーの武田俊彦氏が講演した。武田氏は,医療分野のデジタル化に関する産業振興策について解説した上で,米国におけるデジタル技術を活用したヘルスケアサービスや国内で保険償還された「Join」「CureApp」などを紹介した。さらに,医療機器の早期承認の動向やプログラム医療機器の動向について解説。現状のデジタルヘルスの課題を整理した上で,公益財団法人医療機器センターのAI・デジタルヘルス研究会が取りまとめた保険償還制度に関する提言を説明した。
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