第40回医療情報学連合大会が浜松とWeb配信のハイブリッドで開催(その2)
2020-12-1
APAMI2020開会式で挨拶する
中島直樹APAMI2020大会長
第40回医療情報学連合大会(第21回日本医療情報学会学術大会,JCMI2020)4日目の2020年11月21日(土),A会場ではAPAMI Conference(国際医療情報学連合アジア太平洋支部学術集会,APAMI2020)の開会式が行われた。JCMI2020大会長の木村通男氏が司会を務め,まずJCMI2020プログラム委員長の今井 健氏夫人によるパイプオルガンの演奏が行われた。この楽器の街,浜松での大会らしい演出の後,APAMI2020の大会長である中島直樹氏(九州大学,日本医療情報学会理事長)が挨拶した。
21〜23日の3日間の日程で行われたAPAMI2020では期間中,特別講演が3セッション設けられた。開会式後に行われた特別講演1では,岡田美保子氏(医療データ活用基盤整備機構)が座長を務め,HL7 FHIRをテーマに2名の講演が用意された。先に,William Ed Hammond氏(デューク大学)が,“All About FHIR”と題し,オンラインで講演。次いで,Clement J. McDonald氏(米国国立衛生研究所アメリカ国立医学図書館)も,オンラインで“Tools for Validating, Entering and Retrieving FHIR Clinical Data from the Lister Hill Center FHIR Brigade”をテーマに講演した。また,同日午後には,A会場でPatient Engagementをテーマに特別講演2が行われた。木村JCMI2020大会長が座長を務め,Hyeoun-Ae Park氏が“Role of Health Informatics for Patient Engagement”をテーマに,中島APAMI2020大会長が“Patient Engagement and Personal Health Record”をテーマにそれぞれ講演した。22日にA会場で行われた特別講演3では,今井氏が座長を務めて,Christopher G. Chute氏が,“The Potential Roles of ICD-11 in Translational Research- Architectural Features that Support Data Science”と題し,世界保健機関(WHO)が2018年に公表した国際疾病分類の改訂版であるICD-11について講演した。
一方,JCMI2020の4日目のプログラムとしては,A会場で公募ワークショップ7「COVID-19パンデミック対策としての広域および医療機関内情報システムの検討」が関心を集めた。本ワークショップでは,白鳥義宗氏(名古屋大学)と山本康仁氏(東京都立広尾病院)が座長を務め5名が発表。“ユーザーメード”のシステム開発により,新型コロナウイルス感染(COVID-19)の感染拡大に対して迅速かつ柔軟に対応した事例が報告された。演者としても登壇した山本氏は,「COVID-19に対応したICT」と題して,COVID-19の感染が広がり始めた2020年2月7日に専用の“自動起動ダッシュボード”を開発。感染拡大に即応するシステム展開として,“FileMaker”(アップル)ベースの院内システム「HiPER 2.0」を用いた状況に即応するシステム展開により,職種間の溝を埋める情報共有を図ったことなどを報告した。また,上村修二氏は,「札幌医療圏の『CovidChaser』を活用したCOVID-19陽性患者入院調整について」をテーマに,FileMakerプラットフォームで開発された感染者の受け入れ調整を行う「CovidChaser」を紹介した。上村氏は,医療崩壊を防ぐためには,医療機関の役割分担を明確化し適正な受け入れ調整や病院間搬送が重要であると言及。そのためには情報共有が必要であり,それを可能にするCovidChaserは有用だと述べた。
JCMI2020の5日目の11月22日には,A会場で産官学連携企画「医療情報システムの貢献を測り,展望を図る」が2部構成で行われた。午前中に行われた第1部では,木村JCMI2020大会長と福間衡冶氏(NEC)が座長を務めた。第1部では,2021年3月から始まるオンライン資格確認について,大竹雄二氏(厚生労働省保険局保険データ企画室)が発表した。大竹氏は,オンライン資格確認のスケジュールや顔認証付きカードリーダを用いた運用方法について解説。その上で,全国の医療機関・薬局と安全かつ常時接続され,個人ごとに医療情報を管理できること,患者の同意を確実かつ電子的に得られることが特徴であり,データヘルスの基盤になると述べた。また,明神大也氏(厚生労働省保険局医療介護連携政策課保険データ企画室)は,「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)をはじめとする公的DBの今後の展望」をテーマに発表した。明神氏は,NDBについて,2020年3月末時点で,レセプトデータが約187億6800万件,特定健診・特定保健指導データが2億8700万件あることなど,データベースの現状や利用状況を解説。さらに,2020年10月からの介護データベースとの連結開始など,ほかの公的データベースとの連結に関するスケジュールを示した。
午後に行われた第2部では,木村JCMI2020大会長と今井氏が座長を務め,まず佐藤大作氏(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が,「MID-NETのクオリティーと利活用」をテーマに,医療情報データベース基盤整備事業により構築されたMID-NETについて解説。データベースの活用事例などを紹介した。また,製薬業界に対して行ったアンケートの結果を示して,将来像の明確化,利便性の向上,行政利活用の活発化という3つの視点からの改善策を提示した。また,副島秀久氏(済生会熊本病院)は,「クリニカルパスと医療情報が病院を変えていく時代」と題して,クリニカルパス標準データモデルの開発および利活用(ePathプロジェクト)の取り組みや,開発したひな型パス,施設の実情に合わせて追加した施設パス,さらに患者の個別性を追加した適用後パスについて解説した。第2部最後には,木村JCMI2020大会長が「過去,現在,未来の医療情報システムの評価」と題して発表した。木村JCMI2020大会長は,ITが病院経営に与える恩恵は表面上見えにくいが,情報提供料などを算定しやすくしていると指摘。ITが病院経営を支えていると述べた。また,従来の医療機関のIT化は業務の効率化に主眼が置かれていたが,データの標準化が進み,MID-NETのような研究のためのデータベースも構築され,研究用データが整備されてきたと説明した。さらに,木村JCMI2020大会長は,現状の医療情報システムについて評価した上で,今後の研究課題や政策的な課題についても言及した。
産官学連携企画の第1部でも取り上げられたとおり,2020年3月からのオンライン資格確認は,医療機関にとって関心の高い制度である。展示ルーム・企業展示でも,オンライン資格確認のためのシステムをPRする企業があった。PHCの展示ルームでは,パナソニックシステムソリューションズジャパンの顔認証付きカードリーダと組み合わせたシステムを紹介していた。オンライン資格確認端末とレセコン端末を一体化することで省スペース化を図り,オールインワンシステムとして,高いセキュリティを実現している。また,同社の電子カルテ「Medicom-HRf」と患者アプリ“ヘルスケア手帳サービス”,電子薬歴システム「PharnesV」を組み合わせて,オンライン資格確認をベースとした電子処方せん対応のソリューションを紹介していた。なお,同社は,ブースセミナー「オンライン資格確認基盤は次世代医療実現の突破口になる」も行っていた。
11月22日の産官学連携企画2「医療情報システムの貢献を測り,展望を図る(第2部)」終了後には,JCMI2020の閉会式が行われ,第25回日本医療情報学会春季学術大会(シンポジウム2021)の大会長である近藤博史(鳥取大学),第41回医療情報学連合大会(第22回日本医療情報学会学術大会)の大会長である白鳥氏が挨拶した。春季学術大会は2021年6月10日(木)~12日(土)に,米子コンベンションセンター(鳥取県米子市),連合大会は2021年11月18日(木)~21日(日)に,名古屋国際会議場(愛知県名古屋市)で開催される予定である。
●問い合わせ先
第40回医療情報学連合大会 大会事務局
浜松医科大学医学部附属病院 医療情報部
E-mail jcmi-contact@mi.hama-med.ac.jp
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