コロナ外来診療センターに設置されたプレハブCT室

国立大学法人東京医科歯科大学（東京都文京区）は，新型コロナウイルス対策を施したプレハブCT室を備えたコロナ外来診療センターを設置し，2020年9月17日（木）から稼働を開始した。
東京医科歯科大学では，ダイヤモンド・プリンセス号へのDMAT派遣を行いながら，2月から新型コロナウイルス感染症への対策検討を開始。4月2日に医学部附属病院玄関前にPCR検査を行えるテント外来を設置し，5月13日からは歯学部附属病院のクリーンルームでCOVID-19肺炎疑い紹介外来を開始した。重症陽性患者受け入れのためにER-HCUやER-ICUをコロナ対応用に大規模改装するなどして，中等症・重症患者の受け入れを続けている。7月からはコロナ肺炎外来を3号館に設置したプレハブ施設に移し，ほかの外来患者との動線分離を強化。あわせてプレハブCTの導入を進め，9月7日よりプレハブCTが稼働した。

屋外に設置されたプレハブCT室は，徹底したコロナ感染対策が施されている点が特徴となっている。検査室内の換気を十分に行うため，外部からの出入り口を3か所設けるとともに陰圧システムを導入することで，5分に1回の全換気を可能にした。また，天井・壁・床は抗菌・ウイルス対策が施されている。操作室，検査室，控え室はそれぞれ独立しており，患者，患者と濃厚接触するスタッフ，患者と接触しないスタッフをゾーニングすることで，院内感染・クラスター対策を行っている。
CT装置は，深層学習を用いて設計された画像再構成技術“AiCE-i”を実装し，低被ばくで高画質な検査が可能なキヤノンメディカルシステムズ（株）の80列CT「Aquilion Lightning/Helios i Edition」が設置されている。感染疑いでの検査では，結果的に陰性の患者を撮影する可能性もあることを踏まえ，低被ばく検査が可能な装置が採用された。

プレハブCT室に設置された低被ばく検査が可能な「Aquilion Lightning/Helios i Edition」	3号館1階の駐車場スペースに設けられた コロナ肺炎外来
検体採取室や診察室，処置室などを設置	患者動線と別にスタッフ入り口を設けてゾーニングを実施
重症陽性者を受け入れるICUに配備されている 体外式膜型人工肺（ECMO）

10月2日（金）には見学会が開催され，衆議院議員の岸田文雄氏，石原伸晃氏，根本　匠氏，盛山正仁氏，平口　洋氏，畦元将吾氏，日本医学放射線学会理事長の青木茂樹氏や日本診療放射線技師会会長の上田克彦氏ら医療関係者，また，プレハブCT室の施工を担当した技研興業（株）やキヤノンメディカルシステムズなど関係者が参加。コロナウイルス感染患者用に改修されたICUやコロナ外来診療センターを視察した。
見学会で経過報告を行った畦元氏は，診療放射線技師でありCT開発にも携わるなど長年の医療業界での経験から，医療現場へのコロナウイルス感染症対策支援を前政調会長の岸田氏らに働きかけ，6月に厚生労働省から事務連絡された「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業（医療分）」における，CT撮影装置，超音波，気管支鏡，血液浄化装置などの予算確保を後押しした。ほかにも，医療従事者慰労金支給の対象への診療放射線技師の追加，ポータブルX線装置の部品変更に伴う認可期間の短縮など，医療現場支援に注力している。
畦元氏は，見学会にて次のようにコメントした。
「コロナウイルス感染対策向けのCTを導入するにあたっては，感染対策を十分に取ることと被ばくに配慮することが大切です。今回，東京医科歯科大学に設置された専用CT室は，世界初レベルの高い感染対策を行ったもので，今後，導入を検討されている施設のモデルケースになる設計だと思います。コロナに対峙する医療現場の皆様には心より感謝するとともに，これからも国，医療機関，メーカーが一丸となってコロナウイルス感染症に対応していきます。皆さんの声を代弁する代議士として，今後も医療現場の声と情報を国に届けていきたいと思います」

コロナ外来診療センター視察の様子	東京医科歯科大学の田中雄二郎学長（左）から説明を受ける岸田文雄氏（右）
見学会で経過を説明する畦元将吾氏

見学会出席者・参加者（左から東京医科歯科大学・田中学長，畦元将吾氏，東京医科歯科大学・大川　淳理事・副学長，日本医学放射線学会・青木茂樹理事長）