オリンパス,次世代内視鏡システム「EVIS X1」の国内販売開始に伴いオンライン製品発表会を開催

2020-7-2

オリンパス


新発売の次世代内視鏡システム「EVIS X1」

新発売の次世代内視鏡システム
「EVIS X1」

オリンパス(株)は,次世代内視鏡システム「EVIS X1」の国内での販売開始に伴い,2020年7月1日(水)にオンライン製品発表会を開催した。EVIS X1は,従来システム「EVIS LUCERA ELITE」の導入から約8年ぶりのモデルチェンジとなる,同社最上位機種の内視鏡システム。同社独自の新技術を搭載するほか,従来機のEVIS LUCERA ELITEと「EVISEXERA Ⅲ」の上位互換機種として,幅広いスコープラインアップを実現。内視鏡診断・治療の可能性を広げることが期待される。欧州・アジアの一部では,すでに2020年4月に発売されており,日本国内では7月3日に販売が開始される。

製品発表会では,同社執行役チーフテクノロジーオフィサー最高技術責任者の田口晶弘氏が,経営戦略におけるEVIS X1導入について解説した。同社の売り上げのうち,医療分野は全体の約80%を占め,同社最大の事業分野である(2020年3月期)。特に消化器内視鏡は市場シェアの70%を占め,同社の経営戦略において重要な位置づけとなる。田口氏はこのように述べた上で,今回発売するEVIS X1は,新たな技術の搭載により,スクリーニングから診断,処置に至る各段階で,内視鏡治療の質の向上に貢献する製品であると期待を示した。

続いて,同社内視鏡事業消化器エンドスコピービジネスリーダーグローバルバイスプレジデントの山田貴陽氏が,「消化器内視鏡の軌跡-胃カメラからEVIS X1-」と題して,これまでの消化器内視鏡開発の経緯について紹介した。1950年の胃カメラの登場以降,ファイバースコープの開発を経て,1985年に同社初のビデオ内視鏡システム「EVIS-1」が発売された。しかし,ニーズの違いにより,リアルタイム性を優先した「同時方式」(100 series)と,色再現性を優先した「面順次方式」(200 series)の2系統のシステムに分かれ,それぞれ画質や操作性の改善,分光イメージング技術を駆使したimage enhanced endoscopy(IEE)の導入,人工知能(AI)の活用などが進められてきたが,EVIS X1により,これら2系統が35年ぶりに統合されたことが紹介された。

次に,同社消化器内視鏡開発ダイレクターの倉 康人氏が,EVIS X1に搭載された技術について解説した。倉氏は,EVIS X1の特長として,(1)グローバルで統合された内視鏡システム,(2)革新をもたらす新イメージング技術,(3)使い勝手の向上,高効率な検査の3点を挙げ,1点目については,新たにアンバー(琥珀)を加えた5つのLED照明と新開発のCMOSイメージセンサーにより,従来の2製品の良さを併せ持つ,新たなシステムになったことを紹介した。2点目の新イメージング技術について,EVIS X1には,構造色彩強調機能(Ttexture and Color Enhancement Imaging:TXI)と赤色光観察(Red Dichromatic Imaging:RDI),被写界深度拡大技術(Extended Depth of Field:EDOF)の3つの独自技術が搭載されている。このうちRDIは,緑,アンバー,赤の特定の波長の光を照射することで,深部組織のコントラストを形成する画像強調観察技術である。アンバー光が血管に吸収され,減衰することを利用し,アンバー光を独立照射することで,深部血管や出血部位の視認性を向上させ,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの内視鏡的治療をより安全かつ効率的に行うことを可能にする。また,EDOFは,近距離と遠距離にそれぞれ焦点を合わせた2つの画像を合成し,リアルタイムに焦点範囲の広い画像が得られる技術である。倉氏は,EDOFにより,ピント範囲が狭く操作が難しいという従来の拡大内視鏡の課題を解決できると述べた。さらに,エンドグリップやタッチパネルにより操作性の向上が実現したことを,デモンストレーションを交えて紹介した。

続いて,山田氏が再び登壇し,EVIS X1の導入戦略について解説した。EVIS X1は,日本での発売以降,米国や中国でも順次導入を予定している。グローバルでは,専用スコープに加え,既存の内視鏡システムのスコープとの互換性を持つことで,多岐にわたるスコープラインアップを実現,統一プラットフォームを軸にした,充実した製品ポートフォリオを展開する。また,拡大内視鏡については,新技術のEDOFによる操作性や汎用性の向上により,拡大観察のグローバルスタンダード化を実現しつつ,同時に拡大性能の向上も図っていくことが改めて示された。一方,日本国内では,既存システムを導入後5年以上が経過したユーザーへの更新提案を中心に展開していく。導入にあたっては,内視鏡治療を積極的に施行する施設にはRDI,検診施行施設にはTXIなど,各施設の特性やニーズに合わせた提案を行っていく予定だ。山田氏は,高い技術力と販売・サービスのネットワークが同社の強みであり,それらを基にEVIS X1をより多くの医療施設に普及させ,内視鏡診療の新たなステージを築いていきたいと抱負を述べた。

最後に,昭和大学江東豊洲病院消化器センターの井上晴洋センター長・教授が,臨床家の視点から見たEVIS X1について,使用経験をまじえて講演した。井上氏は,消化器がんは内視鏡による早期発見で外科治療を回避できることから,消化器がん診療における内視鏡の重要性を指摘。一方,内視鏡の世界シェアの多くを占めるオリンパスから,2系統の互換性のない内視鏡が販売されるという状況の中,日本人医師の海外進出などに伴い,次第に混乱が生じ始めていたとした。そして,異なる2機種を統一し,かつ高画質・新機能という上位互換性を実現したEVIS X1は,35年間の課題解決をめざす重要な新製品であると位置づけた。また,EVIS X1は,9.9mmという外径や高画質性能,各種の新機能により,診断のみならず治療まで広範囲にカバーできることが,症例を提示しつつ紹介された。

次世代内視鏡システム「EVIS X1」のデモの様子

次世代内視鏡システム「EVIS X1」のデモの様子

 

田口晶弘 氏(オリンパス)

田口晶弘 氏(オリンパス)

山田貴陽 氏(オリンパス)

山田貴陽 氏(オリンパス)

   
倉 康人 氏(オリンパス)

倉 康人 氏(オリンパス)

井上晴洋 氏(昭和大学)

井上晴洋 氏(昭和大学)

 

●問い合わせ先
オリンパス(株)
www.olympus.co.jp/

オリンパス


TOP