富士フイルム,日立製作所の「画像診断関連事業」を買収,モダリティとITのシナジーで事業を拡大

2019-12-19

富士フイルム


会見で買収のねらいを説明する富士フイルムの古森CEO

会見で買収のねらいを説明する
富士フイルムの古森CEO

富士フイルム(株)は,2019年12月18日(水),(株)日立製作所の画像診断関連事業の買収を発表した。同日,日立製作所が事業売却のために設立した新会社の株式譲渡契約を締結し,17時より本社(東京都港区)にて買収に関する記者発表会を開催した。

最初に,代表取締役会長・CEOの古森重隆氏が今回の買収に至る背景として,富士フイルムの企業理念とこれまでのヘルスケア事業の展開,そして今回の買収のねらいについて説明した。古森氏は,今回の買収で実現されることとして,1)製品ラインアップの拡充,2) 富士フイルムの画像処理技術,AI技術と組み合わせて,より高いレベルで画像診断業務を支援するソリューションの提供,3) 海外を含めた両社の幅広い販売網を相互に活用した営業力の強化の3つを上げたが,その中でも2番目のシナジーについて,「当社の世界最先端の画像処理技術,AI技術と,日立の画像診断機器を組み合わせることで,より優れた画像を提供し医師の診断をサポートすることが可能となり,画像診断の世界をさらに進歩させることができる。これが今回の事業買収の一番大きな意義である」と述べた。

続いて,今回の買収の概要と富士フイルムのヘルスケア領域の成長戦略について,代表取締役社長・COOの助野健児氏が説明した。日立製作所から加わるCT,MRI,X線透視装置,骨密度測定装置,電子カルテなどによって,もともと同社が持つモダリティとあわせて診断領域で最も幅広い領域をカバーすることになり,ワンストップでのトータルソリューションの提供が可能になる。さらに,富士フイルムが持つPACS(SYNAPSE)や3Dワークステーション(SYNAPSE VINCENT),さらに近年開発を加速させている人工知能(AI)を用いたソフトウエアなど高度な画像処理,ソフトウエア技術のリソースを組み合わせることで,画像診断領域で大きな価値を提供できると説明した。今後の売り上げ目標として,今年度(2019年)のヘルスケア事業の業績予測は5200億円だが,これを今回の買収効果などを含めて2020年代半ばには1兆円規模まで成長させたいとした。

買収によって幅広いラインアップの提供が可能になる。(会見配布資料より)

買収によって幅広いラインアップの提供が可能になる。(会見配布資料より)

 

会見で繰り返し語られたのが,PACSやAIプラットフォームなど富士フイルムが持つITソリューションに,CT,MRIなどのモダリティが加わるシナジー効果だ。古森会長は質疑応答でも「CTやMRIがラインアップに加わる効果もあるが,今回の買収の本質的なメリットは当社が持つ画像解析などのITソリューションとハードを組み合わせることで診断機能の大幅な向上が図れることだ」と改めて期待を述べた。また,質疑に応対したメディカルシステム事業部部長の後藤禎一氏(取締役・常務執行役員)も,「CTやMRIでは大容量の画像データが発生し,そこにはPACSが不可欠だ。当社のPACS(SYNAPSE)は,ワールドワイドでも高いシェアがあり,外資系など競合他社に対する優位性となると考えている」と述べた。

また,すでに同社は2018年3月から,欧州,中東地域で3Dワークステーションの「SYNAPSE VINCENT」との組み合わせで,日立製作所のCTを富士フイルムブランドで販売している。後藤氏は「グローバルでのCT,MRIの需要の中心はミドルクラスの製品だと考えている。中東地域ではITによる線量低減やノイズ低減などを可能にしたCT製品は一定の評価を得ており手応えを感じている。今回の買収で自前で幅広いラインアップが提供でき,世界での充実した販売網と先進のITソリューションの組み合わせによる高付加価値で他社との差別化が可能だ」とトップ3をめざす自信を見せた。

古森重隆 氏(代表取締役会長・CEO)

古森重隆 氏
(代表取締役会長・CEO)

助野健児 氏(代表取締役社長・COO)

助野健児 氏
(代表取締役社長・COO)

後藤禎一 氏(メディカルシステム事業部部長)

後藤禎一 氏
(メディカルシステム事業部部長)

 

●問い合わせ先
富士フイルム(株)
コーポレートコミュニケーション部
TEL 03-6271-2000
https://www.fujifilm.co.jp/

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