コニカミノルタ,第2回X線動態画像セミナーを開催
——応用が広がる胸部X線動態画像の臨床的有用性と可能性を報告
2019-11-7
前回の2倍の参加者を集めた第2回X線動態画像セミナー
コニカミノルタ(株)は2019年11月2日(土),フクラシア八重洲(東京都中央区)にて「第2回X線動態画像セミナー」を開催した。コニカミノルタは,X線動画解析ワークステーション「KINOSIS」と可搬型デジタルX線画像診断装置「AeroDR fine」を組み合わせたデジタルX線動画像撮影システムを2018年末から展開している。デジタルX線動画像撮影システムでは,連続パルス照射で得られた胸部単純X線画像を動画像として表示・解析することができ,肺の動的観察や,動きの定量化による機能評価などへの活用が期待されている。国内ではすでに大学病院を中心に複数施設に導入されており,今回のセミナー参加者は前回の2倍の約80名へと増加。X線動態画像への関心の高まりが感じられた。
3部構成で企画された第2回セミナーでは,基礎研究や臨床研究に取り組む施設から報告が行われ,臨床応用の可能性が検討された。セミナーの冒頭,ヘルスケア事業本部ヘルスケア事業部長の長谷川 亨氏が開会挨拶を述べたのに続き,第1部としてメーカー情報提供が行われた。座長を公益財団法人結核予防会複十字病院放射線診療部の黒﨑敦子氏が務め,ヘルスケア事業本部X線事業統括部臨床開発部の角森昭教氏がX線動態画像を用いた将来構想を発表した。
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続く第2部の臨床研究報告では,金沢大学呼吸器内科の笠原寿郎氏が座長を務め,5題の報告が行われた。まず演題1として,金沢大学先進総合外科(呼吸器外科)の高田宗尚氏が「X線動態解析による肺血流評価:肺血流シンチグラフィとの比較」を報告した。KINOSISでは,肺換気と肺血流に関する信号変化をそれぞれ”PL-MODE”と”PH-MODE”によって可視化・定量化することが可能である。高田氏は,PH-MODEと肺血流シンチグラフィを比較し,同等の情報が得られるかを検証した結果を報告した。検討の結果,高い相関が認められたことから,X線動態解析はシンチグラフィの代替検査となりうると述べた。さらに,胸膜癒着の画像診断など外科手術支援への応用にも期待を示した。
演題2は,滋賀医科大学外科学講座(呼吸器外科部門)の花岡 淳氏が,「X線動態解析を用いた術後肺機能予測の試み」と題して発表した。肺がん根治手術では,術前に術後肺機能を予測するが,区域計算では予測精度が低く,肺血流シンチグラフィを用いた予測では手間やコスト,緊急性の点で課題がある。花岡氏は,X線動態画像から得られた左右の血流比を加味した術後予測肺機能と,従来手法で得られた術後予測肺機能を比較した検討を報告した。そして,区域計算による予測にX線動態画像の血流比を加味することで精度が向上する可能性があると述べ,さらに検討を重ねる必要があると展望した。
演題3は,滋賀医科大学救急集中治療講座の宮武秀光氏が,「X線動態解析による肺機能評価:カニクイザルを対象とした基礎的検討」を報告した。滋賀医科大学からは前回,ブタを用いた肺血流評価が報告されたが,今回はより人体に近いサルをモデルに用いて臥位と立位での肺血流評価,肺塞栓の検出の可能性を検討した。宮武氏は検証結果をまとめた上で,X線動態画像を用いた評価は,造影CTや肺血流シンチグラフィと比較してより早く,低侵襲かつ安価に,院外のさまざまな場所で肺塞栓の診断ができる可能性があると述べ,災害医療におけるエコノミー症候群の診療などに効果を発揮するだろうと述べた。
演題4は,金沢大学呼吸器内科の大倉徳幸氏が,「X線動態撮影による新たな呼吸機能評価法の検討」と題して,閉塞性換気障害患者と間質性肺疾患患者を対象にした検討を報告した。X線動態解析により呼吸変動による肺面積変化率を算出し,呼吸機能との関連を検証した結果,肺面積変化率は気流制限や肺過膨張,肺活動低下や運動耐容能の低下を反映していたことから,X線動態解析は呼吸機能評価において有用性が期待できると締めくくった。
第1部最後の演題5では,滋賀医科大学放射線医学講座の園田明永氏が,「X線動態撮影を用いた気管径評価の臨床的有用性検討」を発表した。園田氏は,胸部外科手術予定の患者と正常群を対象に,X線動態画像を用いて換気障害のタイプで気道狭窄の程度に差があるか,測定者間で結果に差が出るかなどの検証を行い,その結果を報告した。気管径評価は換気障害の検出や重症度評価などに利用できる可能性があると述べ,臨床応用に向けた検討に期待を込めた。
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第3部は,実臨床における有用性の報告:ディスカッションとして,東海大学医学部医学科専門診療学系画像診断学領域/東海大学医学部付属八王子病院の長谷部光泉氏と,結核予防会複十字病院の黒﨑氏が座長を務め,5題の発表が行われた。演題1は,東海大学医学部付属八王子病院診療技術部放射線技術科の由地良太郎氏が,診療放射線技師の立場から「胸部X線動態撮影の撮影法」を報告し,X線動態撮影ならではの注意点を挙げた上で,同院で行っている検査の手順やポイントについて説明した。
演題2〜5は,疾患ごとに症例を提示し,X線動態撮影の有用性について報告した。演題2は,東海大学医学部医学科内科学系呼吸器内科学領域/東海大学医学部付属八王子病院の坂巻文雄氏が,「COPD,換気障害症例を中心に」をテーマに発表。後方肋骨をランドマークに動態解析を行い,換気機能検査指標などと比較した結果を報告した。演題3は,福島県立医科大学呼吸器内科学講座の二階堂雄文氏が「慢性呼吸器疾患への応用の検討」をテーマに,X線動態画像を用いた換気評価や気流速度解析を行った症例を供覧した。演題4は,公益財団法人天理よろづ相談所病院呼吸器内科の上山維晋氏が「間質性疾患の動き」をテーマに,X線動態画像を用いて肺の変位をベクトル解析した症例を報告した。演題5では,九州大学大学院医学研究院臨床放射線科学分野の山崎誘三氏が「肺血流」をテーマに報告した。慢性血栓塞栓性肺高血圧症などについて,X線動態画像による肺血流イメージング,肺血流シンチグラフィ,造影CTとのCTヨードマップを示して解説し,将来的にスクリーニングにおいてX線動態画像がシンチグラフィの前に位置づけられる可能性を示唆した。
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すべての演題発表が終了後,公益財団法人結核予防会理事長/日本医科大学名誉教授の工藤翔二氏が総評を行った。工藤氏は,「第1回セミナーからわずか1年で,X線動態画像の研究が大きく進歩していることを実感した。X線動態撮影は,CTなどと比べて安価で中小病院でも実施できる検査であり,前回と比べて応用疾患も広がっている。さらなる進化を楽しみにしている」と述べ,セミナーを締めくくった。
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●問い合わせ先
コニカミノルタジャパン(株)
TEL 03-6324-1080
http://konicaminolta.jp/healthcare/
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