第5回乳腺画像・インターベンション研究会が開催
2019-9-4
会場風景
第5回乳腺画像・インターベンション研究会が2019年8月31日(土),フクラシア丸の内オアゾ 丸の内北口ビル(東京都千代田区)にて開催された。本研究会は,インターベンションを含む乳腺画像の画像診断に関する知識と技術の普及の推進により,女性の健康維持・発展に寄与することを目的に設立された。代表幹事は戸﨑光宏氏(相良病院附属ブレストセンター)が務め,バイエル薬品株式会社の共催により,年1回の研究会を開催している。第5回目となった今回は,MRIの読影セミナー,パネルディスカッション,最新トピックス,ケースディスカッションの4つのセッションで構成された。開会に先立ち,代表幹事の戸﨑氏があいさつに立ち,今回から日本医学放射線学会認定参加単位(1単位)および日本専門医機構認定参加単位(1単位)が認定されたほか,MRI読影セミナーについては日本専門医機構認定放射線科領域講習単位(1単位)の対象セッションとしても認定されたことを報告した。
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セッション1「MRI読影セミナー」は,磯本一郎氏(聖フランシスコ病院)が司会を務め,2名の演者が登壇した。「1. 拡散強調画像」は,德田由紀子氏(大阪大学大学院)が講演した。乳房MRIにおける拡散強調画像(DWI)の位置づけとして,American College of Radiology(ACR)のBI-RADS-MRIにおけるカテゴリー分類などを概説した上で,DWIの基礎やDWIが有用なケース,DWIやADC値の具体的な活用法,ピットフォールなどを,症例を踏まえて報告。その上で,乳腺MRIは,multiparametric readingが重要であるとまとめた。次に,「2. 血流評価」と題して,山口 健氏(佐賀大学)が講演した。はじめに,乳房MRIが高感度である理由として,乳がんは新生血管の亢進によって良好に増強されることを挙げ,そのメカニズムなどを概説。その上で,血流評価の基本として,腫瘍の細胞密度によって異なる増強パターンを理解することの重要性を述べたほか,血流評価の応用として,精査のMRIで血流評価をより短時間で行うultrafastダイナミックスタディについて詳述した。
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セッション2「パネルディスカッション」は,「(ハイリスク)乳房MRI検診から考える,理想的な撮像法とは」をテーマに行われた。司会は,戸﨑氏と黒木嘉典氏(にいむら病院)が務め,はじめに4演題が設けられ,「1. 日本乳癌検診学会での乳房MRIマニュアル作成について」は,磯本氏が講演した。がんの対策型検診と任意型検診の違いや目的,ハイリスク女性に対するMRIによる乳がん検診の必要性,本邦における乳がん検診の現状について概説。最後に,現在,作成が進められている日本乳癌検診学会の「検診乳房MRIマニュアル(案)」の背景や目的などを紹介した。「2. 拡散強調画像が有用な症例の検討」は,印牧義英氏(聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニック)と久保田一徳氏(獨協医科大学病院)が講演した。印牧氏は,乳房MRIは造影検査が基本であり,DWIの位置づけとしては,単独での使用は推奨されていないことを述べた上で,造影MRIとの対比においてDWIが有用な症例とピットフォールなどを報告した。また,DWIは画像のクオリティ・コントロールが重要であり,学会レベルで有効性を検証する必要があると述べた。久保田氏は,乳房MRIにおけるDWIの意義について,病変の検出や見落とし防止,確信度の上昇,良悪性鑑別,組織型・サブタイプの推定など目的によって異なり,また撮像法も異なるため,現状では施設ごとにめざす方向性が異なっていると述べた。「3. Abbreviated Breast MRI」は,戸﨑氏が講演した。はじめに,乳腺MRIの30年の歴史およびBI-RADS-MRIの成り立ちなどを振り返った上で,近年,注目を集めている乳がんハイリスク女性へのスクリーニングとしての“Abbreviated Breast MRI”(短縮MRI)について概説。検査時間や読影時間の短さが独り歩きしている現状への警鐘を鳴らし,短縮MRIの目的とポイント,および課題を明確にした上で,より正確な診断を行うために7分のフルシーケンスでの撮像法を推奨した。講演に続き,本セッション演者を中心にパネルディスカッションが行われた。特に,実臨床におけるDWIの活用と課題などについて活発な議論が交わされた。
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セッション3「最新のトピックス『AI』」は,中原 浩氏(ブレストピア宮崎病院)とウッドハムス玲子氏(北里大学)が司会を務め,2名の演者が登壇した。「1. 超音波のAI」は,藤岡友之氏(東京医科歯科大学)が講演した。人工知能(AI)の概要を説明した上で,乳腺超音波領域のAIとして,画像分類,物体検出,画像生成の現状について紹介。AIの診断への応用についての考察や,ディープラーニングのツールである“CSLAIER”を用いた自身の研究などにも言及した。「2. マンモグラフィのAI」は,佐々木道郎氏(さがらパース通りクリニック)が,マンモグラフィの診断支援のためのAIソフトウエアである「TRANSPARA」(スクリーンポイントメディカル社:オランダ)の使用経験を報告した。TRANSPARAでは,画像上の病変の悪性度の高さを1〜100までの数字で表示するinteractive decision support scoreと,画像の重要度(悪性病変の存在の可能性の高さ)を1〜10までの数字で示すTranspara scoreの2つのスコアが得られる。講演では,このTRANSPARAと放射線科医による読影を比較したところ,ほぼ同等の結果が得られたことや,TRANSPARAの課題などが報告された。
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セッション4「ケースディスカッション」は,五味直哉氏と菊池真理氏(共にがん研究会有明病院)が司会を務めた。菊池氏が2症例を提示し,会場の参加者が実際に読影を行った上で,画像所見のポイントなどがディスカッションされた。
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なお,本研究会の閉会に当たり,挨拶に立った五味氏から,次回は2020年10月3日(土)に兵庫県神戸市で開催されることが報告された。
【プログラム】
■セッション1 MRI読影セミナー
司会:磯本一郎氏(聖フランシスコ病院)
1. 拡散強調画像
德田由紀子氏(大阪大学大学院)
2. 血流評価
山口 健氏(佐賀大学)
■セッション2 パネルディスカッション
「(ハイリスク)乳房MRI検診から考える,理想的な撮像法とは?」
司会:戸﨑光宏氏(相良病院附属ブレストセンター),黒木嘉典氏(にいむら病院)
1. 日本乳癌検診学会での乳房MRIマニュアル作成について
磯本一郎氏(聖フランシスコ病院)
2. 拡散強調画像が有用な症例の検討
印牧義英氏(聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&
イメージング先端医療センター附属クリニック)
久保田一徳氏(獨協医科大学病院)
3. Abbreviated Breast MRI
戸﨑光宏氏(相良病院附属ブレストセンター)
■セッション3:最新のトピックス「AI」
司会:中原 浩氏(ブレストピア宮崎病院),ウッドハムス玲子氏(北里大学)
1. 超音波のAI
藤岡友之氏(東京医科歯科大学)
2. マンモグラフィのAI
佐々木道郎氏(さがらパース通りクリニック)
■セッション4:ケースディスカッション
司会:五味直哉氏(がん研究会有明病院),菊池真理氏(がん研究会有明病院)
●問い合わせ先
乳腺画像・インターベンション研究会
https://big-reads.com/