テクノエイド協会,「介護ロボット全国フォーラム2018」を開催

2019-1-29

介護


介護ロボットの展示・相談会とシンポジウムが行われた。

介護ロボットの展示・相談会とシンポジウムが行われた。

「介護ロボット全国フォーラム2018」が,2019年1月25日(金),TOC有明コンベンションホール(東京都江東区)で開催された。同フォーラムは,公益財団法人テクノエイド協会が厚生労働省の受託事業「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」の一環として開催したもので,プログラムとして介護ロボットの展示および説明,相談会(以下,展示会)とシンポジウムが行われた。

シンポジウムでは,厚生労働省と経済産業省から介護ロボットにかかわる施策の最新動向や,先進施設からの取り組みなどの報告が行われた。冒頭に挨拶したテクノエイド協会理事長の大橋謙策氏は,「実用化支援事業は6年目となるが,この間の介護ロボット技術の進化はすさまじいものがある。介護ロボットの利活用の効果として,次の4点に期待している。1) サービス利用者のQOLを高めること,2) 介護従事者の負担軽減による人員増,3) ケアの科学化の進展と効率化,4) 質の高い介護サービスの海外展開。本日のフォーラムでは,これらの効果につながる話題を取り上げるが,さまざまな議論をいただき,関係省庁ともども国民が求める福祉機器,介護ロボットの利活用の促進を図っていきたい」と述べた。

大橋謙策 理事長

大橋謙策 理事長

EASTホールのシンポジウム会場の様子

EASTホールのシンポジウム会場の様子

 

 

最初に,厚生労働省老人保健局高齢者支援課の武井佐代里氏が,「介護ロボットの開発・普及に向けた取り組みについて」を講演した。武井氏は,見据えるべき年として2025年(団塊世代がすべて75歳以上に)と2040年(高齢者人口がピークを迎える2年前)を挙げ,そこに向けた人口動向や生産年齢人口などを解説し,その上で介護ロボットの政策のポイントについて,“ケアの質の向上”“介護職員の負担軽減”“生産性の向上”を挙げた。さらに,経済産業省などと連携して進めている「介護ロボット開発加速化事業」や,地域医療介護総合確保基金に基づく補助事業,介護現場の革新プランとガイドラインの作成など介護ロボットに関連する取り組みを概説した。
続いて,経済産業省製造産業局ロボット政策室統括係長の永嶋弘樹氏が,「介護・医療分野でのロボット開発・活用の状況と今後の展開」を講演した。永嶋氏は,ロボットの定義や産業用を含めた市場動向などロボットに関連する背景を説明し,政府の方針や経済産業省を中心とする施策の最新動向を概説した。2019年度の予算案では,“ロボット介護機器開発・標準化事業”として,標準化や安全性に関する規格に取り組む。生活支援ロボットの安全認証については,ISO13482に基づく認証機関である「生活支援ロボット安全検証センター」(茨城県つくば市)の実績などを紹介した。

武井佐代里 氏(厚生労働省)

武井佐代里 氏
(厚生労働省)

永嶋弘樹 氏(経済産業省)

永嶋弘樹 氏
(経済産業省)

 

 

その後,「【進捗報告】介護ロボットのニーズ・シーズ連携協調のための協議会設置事業について」として,事業を受託した一般社団法人日本作業療法士協会の中村春基会長が全国50か所に開設された協議会設置の経緯と現状を中心に報告した。続いて,「ICT・介護ロボット活用による取り組み事例」として,社会福祉法人青森社会福祉振興団(専務理事・中山辰巳氏),社会福祉法人善光会(理事,最高執行責任者・宮本隆史氏),(株)アズパートナーズ(シニアホーム運営部・中元亮介氏)から報告があった。

中村春基 氏(日本作業療法士協会)

中村春基 氏
(日本作業療法士協会)

中山辰巳 氏(青森社会福祉振興団)

中山辰巳 氏
(青森社会福祉振興団)

 
     
宮本隆史 氏(善光会)

宮本隆史 氏
(善光会)

中元亮介 氏(アズパートナーズ)

中元亮介 氏
(アズパートナーズ)

 

 

休憩を挟んで,後半は「介護ロボットを効果的に利用するための基本的な視点、考え方」として,(株)くますま代表の河添竜志郎氏が介護ロボット導入における課題や注意点を具体的に説明した。次に,「介護ロボット開発や応用のための先端センサ材料」を講演した関西大学システム理工学部 電気電子情報工学科教授の田實佳郎氏は,工学的視点から介護ロボットに有効と考えられる技術(センサやAIなど)について概説した。「介護ロボット開発に求められる機能的なデザイン」の講演では,神戸芸術工科大学 プロダクト・インテリアデザイン学科教授の相良二朗氏が人と協調するためのロボットのデザインについて考察し,介護ロボットのあるべき姿を提案した。最後に,「テクノロジートレンドからみる医療・介護」を(株)日本政策投資銀行業務企画部の植村佳代氏が講演。GAFAなどの登場でデジタルトランスフォーメーションが急速に進む中で,新たな産業を創出するCPS(Cyber Physical System)の動向について,世界の実例を交えて紹介した。

河添竜志郎 氏(くますま)

河添竜志郎 氏
(くますま)

田實佳郎 氏(関西大学)

田實佳郎 氏
(関西大学)

 
     
相良二朗 氏(神戸芸術工科大学)

相良二朗 氏
(神戸芸術工科大学)

植村佳代 氏(日本政策投資銀行)

植村佳代 氏
(日本政策投資銀行)

 

 

◎介護ロボットの展示および説明,相談会
WESTホールで行われた展示・説明・相談会には,移乗支援,移動支援,排泄支援,見守り・コミュニケーション,入浴支援,介護業務支援,機能訓練の7つの領域で34社が出展した。また,パネル展示として,「介護ロボット学生チャレンジ〜専攻する学問の領域が異なる学生による介護ロボットのアイデア創出」のコーナーも設けられた。

「介護ロボット学生チャレンジ〜専攻する学問の領域が異なる学生による介護ロボットのアイデア創出」のパネル展示

「介護ロボット学生チャレンジ〜専攻する学問の領域が異なる学生による介護ロボットのアイデア創出」のパネル展示

“見守り・コミュニケーション”では,赤外線センサなどを用いた映像による見守りシステムを,ノーリツプレシジョン(写真),キング通信工業,エイアイビューライフなどが出展

“見守り・コミュニケーション”では,赤外線センサなどを用いた映像による見守りシステムを,ノーリツプレシジョン(写真),キング通信工業,エイアイビューライフなどが出展

   
同じくコミュニケーションロボットとしては,富士ソフト(写真),トレンドマスター,知能システムなどが出展

同じくコミュニケーションロボットとしては,富士ソフト(写真),トレンドマスター,知能システムなどが出展

移乗支援では,CYBERDYNE(写真)のほか,FUJI,マッスル,パナソニックエイジフリー,ATOUNが展示

移乗支援では,CYBERDYNE(写真)のほか,FUJI,マッスル,パナソニックエイジフリー,ATOUNが展示

 

●問い合わせ先
公益財団法人テクノエイド協会
企画部
TEL 03-3266-6883
http://www.techno-aids.or.jp

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