第2回超高精細CT研究会が開催
2018-12-25
超高精細CTの検査技術や
臨床的有用性を考える研究会
第2回超高精細CT研究会が2018年12月22日(土),国立がん研究センター新研究棟大会議室を会場に開催された。本研究会は,キヤノンメディカルシステムズ(株)の超高精細 CT「Aquilion Precision」に焦点を当て,その検査技術や臨床的有用性などの情報を共有する場として設けられた。石原敏裕氏(国立がん研究センター中央病院)が代表幹事を務め,2017年12月17日(土)に第1回研究会が開催された。今回は,キヤノンメディカルシステムズと(株)根本杏林堂,アミン(株)が共催し,テーマには「Use up U-HRCT」が掲げられた。開会の挨拶に立った石原氏は,自身がかかわった超高精細CTの開発の経緯に触れて,プロトタイプの製作や Aquilion Precisionの完成までの歩みを振り返った上で,超高精細CTを使いこなそうとの思いから今回のテーマを決めたと説明。研究会を通じて,多くの超高精細CTユーザーが生まれるのを期待していると述べた。
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研究会のプログラムは,一般演題1と2,技術講演,特別講演2題が組まれた。また,開会に先立ち,キヤノンメディカルシステムズからの情報提供が行われ,第104回北米放射線学会(RSNA 2018)におけるAquilion Precision関連のトピックスなどが紹介された。なお,総合司会は鈴木雅裕氏(イーメディカル東京遠隔画像診断センター/大原綜合病院)が務めたほか,コメンテーターとしてAquilion Precisionの開発に尽力した森山紀之氏(東京ミッドタウンクリニック)と片田和広氏(藤田医科大学)が出席した。
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石原氏の開会の挨拶に続き,中屋良宏氏(静岡県立静岡がんセンター)と近藤雅敏氏(九州大学病院)が座長を務め,一般演題1が行われた。最初の発表では,伊波智子氏(琉球大学医学部附属病院)が「胸部ルーチン画像における超高精細CTと従来CTの比較」と題して発表した。伊波氏は,胸部のルーチン検査における超高精細CT,ADCT,MSCTそれぞれのスライス厚5mmの画質について,ファントムを用いた物理評価を行った結果を説明した。2番目の発表では,土井裕次郎氏(藤田医科大学病院)が,「超高精細CTを用いたCT Colonographyの病変描出能に関する基礎検討」をテーマに,高い空間分解能などにより病変の描出能と検出能が向上する可能性があることを報告した。続いて登壇した鈴木氏は,「超高精細CTにおける消化管微細画像診断の可能性」と題して,超高精細CTを使用した術前のCT gastrographyとスクリーニングでのCT colonographyの画質評価について症例画像を交えて説明。消化器領域における有用性に言及した。一般演題1最後の発表では,宮崎紘樹氏(国立がん研究センター中央病院)が登壇。「超高精細CT装置を用いたトリミング画像の画質評価」をテーマに,1024×1024マトリックスの画像から512×512マトリックスの画像を切り出し,拡大再構成画像との比較を行った結果を報告した。
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休憩を挟んで行われた一般演題2では,宮下宗治氏(耳鼻咽喉科麻生病院)と銘苅ひより氏(琉球大学医学部附属病院)が座長を務めた。まず,「超高精細CTの耳科領域における撮影経験」をテーマに,吉岡哲志氏(藤田医科大学病院)が報告した。吉岡氏は,高い空間分解能と優れたコントラスト分解能を評価した一方,ノイズやデータ量の増大化などの課題も示した。次いで,千葉工弥氏(岩手医科大学附属病院循環器医療センター)が「超高精細CTにおける心臓検査の画質評価」をテーマに発表した。千葉氏は,ADCTとの使い分けなどの解説をした上で,逐次近似法の画像再構成技術“FIRST”を用いることで,画質が向上したことなどを説明した。3番目の発表では,「超高精細CTによる深下腹壁穿通枝動脈CT-angiographyの有用性」をテーマに,井出紗也加氏(静岡県立静岡がんセンター)が,乳房再建術の術前に超高精細CTによる深下腹壁動脈や穿通枝の評価を行った経験を紹介した。さらに,4番目には,清水裕太氏(杏林大学医学部付属病院)が「超高精細CTを用いた頭部3D-CTAにおける穿通枝描出のための再構成法の検討」と題して発表した。清水氏は,FIRSTの“Cardiac”を用いることで微細な穿通枝も描出できることを報告した。
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続いて,技術講演が行われた。座長を長澤宏文氏(国立がん研究センター中央病院)が務め,辻岡勝美氏(藤田医科大学)が「ファントム実験でわかった超高精細CTの臨床性能」をテーマに講演した。辻岡氏は,超高精細CTのNRモードと従来CT,超高精細CTのNR,HR,SHRの各モードにおける空間分解能やノイズ特性について,性能評価を実施した結果を紹介。超高精細CTは圧倒的な空間分解能を有しており,臨床性能を評価するためのファントムが求められると述べた。
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プログラムの最後には,石原氏が座長を務め,特別講演が2題設けられた。まず,山城恒雄氏(琉球大学医学部附属病院)が登壇し,「超高精細CTの臨床使用:1年4か月の経験から(頭頸部・胸部)」と題して講演した。山城氏は,中内耳CT,頸部のIVR術前CT angiography,胸部CTでの超高精細CTの使用経験を報告。超高精細CTではあぶみ骨を明瞭に描出することが可能であると述べたほか,胸部CTにおける1024×1024マトリックス画像で微細な構造を観察できる点などを評価した。続いて,曽我茂義氏(防衛医科大学校)が,「Aquilion Precisionが腹部画像診断にもたらす効果」と題して講演した。曽我氏は,超高精細CTで撮影した症例画像を供覧した上で,正常神経叢の描出が可能になるなど高画質化の恩恵について解説した。また,ディープラーニングを用いた画像再構成技術“AiCE”によるノイズ除去による高画質化などのメリットを取り上げ,超高精細CTの有用性を強調した。
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一般演題や講演の間には,コメンテーターの森山氏や片田氏が,超高精細CTの検査・診断の適応やポイントについてコメントした。研究会の最後には,片田氏が超高精細CTの有用性を日本から発信していくことが重要だと述べ,日本で生まれたAquilion Precisionの世界での普及に期待を示した。
なお,第3回の研究会は,2019年12月ごろの開催を予定している。
●問い合わせ先
超高精細CT研究会事務局
(国立がん研究センター中央病院内)
TEL 03-3542-2511
http://u-hrctkennkyuukai.kenkyuukai.jp/special/