フィリップス・ジャパン共催の「第8回ディジタル一般撮影ミーティング」が開催
2018-11-8
共催セミナー風景
「第8回ディジタル一般撮影ミーティング」が2018年11月3日(土),国立がん研究センター中央病院を会場に開催された。本会は,デジタル一般撮影に関する知識を共有し,この分野の発展と日常検査に役立てることを目的として2011年に発足した。以後,(株)フィリップス・ジャパンが共催して毎年1回開催されている。代表世話人を大阪大学医学部附属病院の松澤博明氏,当番世話人を国立がん研究センター中央病院の鳥居 純氏が務め,「一般撮影室における線量管理を考える」がテーマに掲げられた。
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本会の開催に先立ち,「共催セミナー:価値ある一般撮影を目指して」が行われた。座長は松澤氏が務めた。初めに,同社D&T本部DXR/MSビジネスマーケティングマネージャーの沢 秀樹氏が挨拶に立ち,共催セミナーのテーマについて講演した。同社では,画像診断部門の戦略・指針として,“First time right”を掲げている。これは,いち早く診断を確定するために,より低コストで最大限のアウトプットをもたらすための指針であり,“Value Based Care(価値に基づく医療)”につながるものであるとしている。沢氏は,Valueの向上に貢献する製品として,世界で9000台以上の納入実績を誇る一般撮影装置「DigitalDiagnost」を挙げ,検査効率の向上や高画質,経済効率,低被ばくなどに貢献する技術として,オートポジンション機能“Comfort Position”,全身対応のグリッドレス撮影機構“SkyFlow Plus”,同社独自のマルチ周波数処理“UNIQUE”,線量管理サーバ“DoseWise Portal”を紹介した。
続いて,DigitalDiagnostのユーザーである2名の演者が登壇した。NTT東日本関東病院の中村浩章氏は,「装置更改後におけるワークフロー ―2管球から1管球仕様,SkyFlowを中心に―」と題して講演した。以前稼働していた2管球の装置から1管球のDigitalDiagnostになったことによるワークフローの変化や,Comfort PositionおよびSkyFlow Plusがもたらす業務負担の軽減,1管球になったことで安全性が向上したことなどが紹介された。
聖路加国際病院の今川裕太氏は,「SkyFlowの使用経験と基礎検討」と題して講演した。同社のワイヤレスFPD「SkyPlate」と旧FPDを比較したメリットや,胸部撮影時の患者の痛み軽減効果などについて報告したほか,SkyFlowについてはグリッドレス化によるミスアライメントの低減や,実グリッドと比較して画質に大きな差がないことを示し,いずれも臨床的有用性は高いとまとめた。
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会の後半には,「第8回ディジタル一般撮影ミーティング」が2部構成で行われた。今回のテーマである「一般撮影室における線量管理を考える」は,2018年度の診療報酬改定で「画像診断管理加算3」が新設されたことを受けて設定されたもの。各演題には,線量指標や線量最適化など,線量管理を行う上で知っておくべき内容が盛り込まれている。
「第1部:基調講演」の座長は,引き続き松澤氏が務め,藤田医科大学の鈴木昇一氏が「一般撮影における被ばく線量の変遷」と題して講演した。鈴木氏は,1973年から40年以上にわたりX線撮影における患者被ばく線量の全国アンケート調査を実施してきており,医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)による「最新の国内実態調査結果に基づく診断参考レベルの設定(DRLs 2015)」にも文献が多数引用されている。講演では,調査開始当初からの患者被ばく線量の推移と,その数値から得られた医療放射線安全管理について考察。その上で,診療放射線技師が自ら進んで自施設の線量を把握することが重要であり,臨床現場での日頃の努力によってこれまでにも被ばく線量は低減化されているが,今後も線量適正化を考慮したさらなる線量低減に努めてほしいと述べた。
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「第2部:パネルディスカッション」は,奈良県立医科大学附属病院の中前光弘氏と聖路加国際病院の飯田聖一郎氏が座長を務め,「一般撮影における線量管理」をテーマに5演題が設けられた。
東海大学医学部付属八王子病院の由地良太郎氏は,「一般撮影における線量指標について」と題して講演した。デジタル一般撮影装置の感度指標はメーカーごとに異なるため,線量との関係性の理解が難しいことから,線量指標の国際規格としてExposure Index(EI)が設定されている。由地氏は,EIの定義や活用法,注意点などについて詳述した上で,線量低減および適正化を図るためには,メーカー推奨値ではなく,施設ごとに目標線量指標(Target EI:EIT)を設定することが重要であると述べた。
大阪市立大学医学部附属病院の岸本健治氏は,「一般撮影においての線量管理 ―診断参考レベルDRLs 2015とExposure Indexを用いて―」と題して講演した。DRLs 2015の目的や利用方法,自施設の線量把握に有用な簡易ソフトウエアの特徴などを紹介したほか,EIを用いた撮影線量の最適化および管理(画質管理)の方法として,ファントムや視覚評価試料を用いた検証方法,平均EI値の算出方法などについて詳述した。
福井大学医学部附属病院の藤本真一氏は,「一般撮影における付加フィルタの有用性の検討」と題して講演した。付加フィルタの効果に関する検討結果として,FPDの感度を考慮して使用することで,画質を担保しながら被ばく低減が可能となることが示されたが,一方で,撮影時間の延長が課題と述べた。その上で,撮影時間の短縮を目的に管電圧を上げた場合のコントラストの変化や,自動露出機構(AEC)の使用に関する検討結果を示し,例外はあるものの,AECを利用することで画質と被ばく線量のバランスを取りながら撮影時間を短縮可能であるとまとめた。
東京慈恵会医科大学附属病院の庄司友和氏は,「診断領域に用いられるX線計測機器 ―現状と当院の取り組み」と題して講演した。線量評価の必要性や,その方法として非接続型X線測定器(半導体検出器)を使用した精度管理方法が推奨されていることを挙げ,半導体検出器の仕組みや測定原理について詳述。また,同院の取り組みとして,撮影線量適正管理委員会の設立について紹介したほか,校正場を設けて線量計の再現性や直線性,線量率依存性,エネルギー依存性,方向依存性などの比較校正を行うことで,信頼できるX線装置を作る取り組みなどを紹介した。
最後に,鳥居氏が,「線量管理サーバーとDoseSRの運用における押さえるべき点と課題点」と題して講演した。画像診断管理加算3の新設を踏まえた線量管理の必要性や,被ばく線量の管理のための構造化されたレポートである“RDSR(Radiation Dose Structured Report)”の概要と課題,線量管理サーバにおける検査プロトコール単位および患者単位での線量管理方法と課題などについて,同院の現状を踏まえて具体的に説明した。その上で,線量管理をPDCAサイクルに落とし込むと,「Plan:データ整理」「Do:自施設線量の把握」「Check:DRLs等との比較」「Action:最適化へのアクション」となり,これらを繰り返していくことが重要であるとまとめた。
講演に続き,第1部,第2部の演者が全員登壇し,パネルディスカッションが行われた。線量管理の方法や施設ごとの線量の適正管理における課題などについて会場から具体的な質問がなされ,活発な意見が交わされた。
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最後に,(株)フィリップス・ジャパン D&T本部DIビジネスマーケティング部長の門原 寛氏が閉会挨拶に立ち,「今後も本ミーティングを積極的にサポートしていくとともに,いただいた意見をもとに製品の改良および開発につなげていきたい」と締めくくった。
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