日本超音波医学会第91回学術集会が神戸で開催
2018-6-11
会場となった神戸ポートピアホテル
日本超音波医学会第91回学術集会が,中谷 敏 氏(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻機能診断科学講座)を会長として,2018年6月8日(金)〜10日(日)の3日間,神戸国際会議場,神戸ポートピアホテル(兵庫県神戸市)で開催された。本年は第37回日本脳神経超音波学会総会〔会長:長束一行 氏(国立循環器病研究センター診療支援部),8,9日の2日間の開催〕との同時開催となった。テーマは,「超音波医学の知と技を究める」。
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神戸ポートピアホテルの南館1階で行われた機器展示コーナーには,機器メーカーなど27社が出展した。心機能の把握や肝硬度の診断など形態と機能をリアルタイムで検出できる超音波診断装置の役割がますます大きくなる中,各社が高度な解析機能を搭載しながら,AI技術なども取り込んで自動化などワークフローを向上させた新製品を展示した。また,ニーズの広がりに対応して機動性を高めたPoint of care Ultrasound(POCUS)を可能にする製品も多く目についた。
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■機器展示(順不同)
キヤノンメディカルシステムズ
日立製作所
GEヘルスケア・ジャパン
フィリップス・ジャパン
シーメンスヘルスケア
富士フイルムメディカル
キヤノンメディカルシステムズは,4月に発売した新製品の,ハイエンドシリーズAplio a-seriesの「Aplio a450」「Aplio a550」,機動性を高めた Xario g-seriesの「Xario 200G」「Xario 100G」を前面に大きく展示した。Aplio a-seriesは,同社のフラッグシップであるAplio i-seriesの技術を受け継ぎながら小型化,軽量化を図ったモデルであり,ラインアップを拡充することでSuperb Micro-vascular Imaging(SMI)など同社の独自技術をより多くの場面で利用できるようにする。また,最大8時間のバッテリー駆動が可能な大容量バッテリーを搭載したXario g-seriesでは,スリープ状態から約2秒でスタンバイできる高速起動など,どこにでも持ち出してすぐに検査できる“Go Anywhere Anytime”というコンセプトをアピールした。
また,同社がAplio i-series用に開発した超高周波24MHzプローブが日本超音波医学会第18回技術賞を受賞したことをパネルで紹介,ブースではそのほか各種の最新プローブについても展示し来場者にPRしていた。そのほか,Point of care Ultrasound(POCUS)向けの新ラインナップとしてタブレットタイプの「Viamo SV7」を参考展示した。
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日立製作所のブースでは,新製品の「LISENDO 880 LE」,「FUTUS」などを前面に,そのほか産婦人科領域などのWoman's Health,腹部領域などのRadiology,心臓領域のCardiologyの領域ごとに展示を構成した。発売されたばかりの「LISENDO 880 LE」は,循環器科向けのハイエンド装置「LISENDO 880」に3D-TTEプローブを搭載したLimited Edition(LE)である。さまざまな3D再構成ソフトウエアのほか,心不全パッケージとして,“Dual Gate Doppler”“R-R Navigation”“2D Tissue Tracking”“Vector Flow Mapping”を搭載しているのが特徴だ。
また,参考出展としてミドルクラスの超音波診断装置の新製品「FUTUS」を展示。使いやすさやワークフローの向上をコンセプトに開発が進められており,未来の超音波診断装置(ネーミングはFUTURE USから)を一足早く紹介した。
Radiologyコーナーでは,ハイエンド装置の「ARIETTA 850」に新たに搭載された“Combi-Elasto”と“DFI(Detective Flow Imaging)”を紹介した。Combi-Elastoは,従来別アプリだった“RTE(Real-time Tissue Elastography)”とshear wave elastographyの“SWM(Shear Wave Measurement)”の同時計測を可能にしたもの。1回の操作で簡単に結果が得られるほか,LF(Liver Fibrosis) Indexや,Vs(shear wave velocity:剪断波伝播速度),ATT(脂肪量に相当する定量指標)が計測できる。DFIは,血流を血球レベルで認識して微細な血管を画像化するモードである。
また,RTEによる肝硬度計測で診療報酬請求が可能な装置として薬機法の承認を取得した「ARIETTA E70」を展示した。
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GEヘルスケア・ジャパンのブースで来場者の注目を集めたのは,何と言っても6月1日に発表されたばかりのハイエンド汎用超音波診断装置の「LOGIQ E10」である。従来の最上位機種「LOGIQ E9」のさらに上位に位置づけられる。エヌビディア社製GPUを搭載し,画像処理をソフトウエア上で行うイメージフォーマー技術“cSound”により,収集した超音波データをピクセルレベルで焦点を合わせることが可能になった。これにより,近位部の画質も向上するなど,高い空間分解能を実現。さらにフレームレート,感度が向上し,エラストグラフィも短時間で撮像を行える。
また,循環器用超音波診断装置「Vivid E95」とそれに組み合わされる新型プローブ「4Vc-Dプローブ」もPRされた。Vivid E95はストレイン解析や心筋の仕事量を定量的に評価できる“Myocardial Work”といったアプリケーションを搭載している。日本国内で開発された4Vc-Dプローブは,高精度の4Dイメージングを行い,SHD治療などにおいて有用な情報を提供する。
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フィリップス・ジャパンは今回,学会開催直前の6月4日に発表した循環器用超音波診断装置「EPIQ CVx」を展示したほか,体表用3Dプローブ「X5-1」に対応したミドルクラスの汎用超音波診断装置「Affiniti」をニュープロダクトとしてアピールした。
循環器領域に特化したEPIQ CVxは,専用のアプリケーションが充実している。“Dynamic HeartModel A.I.”は,左室と左心房のvolumeカーブを表示するなど,豊富な解析機能を有する。また,3D画像再構成のアプリケーション“TrueVue”は,MPR画像の3断面と互いに同期させながらの観察が可能。より実際の心臓に近いリアルな表現により,SHDなどの治療を支援する。このTureVueは,タッチスクリーンで拡大・縮小,回転などの操作を容易に行える。Affinitiにコンパクトな3Dプローブである「X5-1」が対応したことにより,上位機種のアプリケーションが使用可能になる。
このほか,ブースでは,乳腺など表在領域向けの最新プローブである「eL18-4 PureWaveリニアトランスジューサ」なども紹介した。
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シーメンスヘルスケアは,装置に樹木名を冠する装置をラインアップしていくことにしている。その最初の装置として,4月3日に発表したのが,樹木の中で最も広いとされる北半球を分布域とするセイヨウネズ(学名:Juniperus communis)の名を冠した「ACUSON Juniper」である。その名が物語るように,多様な診療場面で活躍する超音波診断装置である。医療機関の各所で検査が行われることを想定した小型・軽量設計の筐体は,最上位機種の「ACUSON S2000」の設置面積よりも36%削減。また,バッテリー駆動が可能で,装置の電源を入れてから5秒後には検査を開始できる高速起動も,大きなセールスポイントである。
加えて,ワンクリックで心臓の各種計測を自動的に行うアプリケーション“eSie Measure”を搭載。エラストグラフィ機能である“Virtual Touch Quantification(VTQ)”もワンクリックで肝硬度を測定できる。
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富士フイルムメディカルは,ラインアップの中からタブレット型超音波診断装置「Sonosite iViz」など,POCUS向けの製品を中心に展示を構成した。
Sonosite iVizは,7インチのカラー液晶モニタを備えながら重さ約520gと小型で軽量な超音波診断装置として,病院だけでなく在宅医療など幅広い用途で活用されている。今回は,2018年6月に新たに追加された腹部用コンベックスプローブ「SonoSite iViz C60v」と,穿刺用のリニアプローブ「SonoSite iViz L25v」を展示した。また,昨年に続いて,Sonosite iVizとNTTドコモの回線を利用した超音波画像の遠隔転送システムを出展。SonoSite iVizの画像を光回線やLTEを使って転送することで,ほぼリアルタイムに遠隔地で画像を確認できる。同システムを利用して,2017年9月には熊本地震の被災地の避難所と国立循環器病研究センターを結んだ「災害時下肢静脈エコーリアルタイム動画像伝送システム実証試験」が行われた。
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