地域包括ケアシステムの構築に向けて訪問看護・介護分野のICT,IoTの導入が進む
ー第4回医療・介護総合EXPO大阪(メディカルジャパン 2018 大阪)にICT,IoT関連の企業が多数出展
2018-3-13
3万人以上が来場した第4回医療・介護総合EXPO大阪
2018年度は,6年に一度となる診療報酬と介護報酬の同時改定が行われる。わが国では,団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け,どこに住んでいても適切な医療・介護が安心して受けられる社会として地域包括ケアシステムの構築が進められており,2018年度の同時改定も,これを見据えた内容となっている。一方で,現場では人手不足の問題も深刻化しており,より効率的な医療・介護提供体制を早急に築くことも求められている。このような観点から,今改定ではICT,IoTの活用に対する評価がなされており,医療施設・介護施設ともに,積極的に導入する動きが加速している。システムやサービスを提供する企業側も攻勢をかけており,展示会などでPRを行っている。2018年2月21日(水)〜23日(金)の3日間,インテックス大阪(大阪市)で開催された第4回医療・介護総合EXPO大阪(メディカルジャパン 2018 大阪)でも,多くの企業が出展した。
介護向けシステム大手の(株)ワイズマンは,医療施設と介護施設間で情報共有を行えるサービス「MeLL+(メルタス)」をPRした。医療施設が持つ患者基本情報,紹介状情報,カルテ所見など,介護施設の利用者基本情報,ケア記録,ケアプラン,サマリなどのデータをやりとりできる。コメントやメッセージ機能によってユーザー間で情報を共有することができ,地域包括ケアシステムにおける多職種連携を支援する。さらに,家族が参加できる「MeLL+family(メルタスファミリー)」の提供を2017年10月から開始した。また,インターネットプロバイダーの(株)インターネットイニシアティブ(IIJ)は,名古屋大学医学部附属病院先端医療・臨床支援研究センターが開発した「電子@連絡帳」をクラウドサービスとして提供する「IIJ電子@連絡帳」を紹介していた。愛知県内45自治体で導入が進んでいる。病院や在宅医療を提供する診療所,訪問看護ステーション,薬局,介護施設などの間で患者情報を共有することが可能である。
近年,事業者数を増やしている訪問看護ステーションに向けたシステムも登場してきた。(株)eWeLLが提供する訪問看護支援サービス「iBow」は,訪問先の患者宅からでもスマートフォンやタブレットを使って,カルテ参照や訪問看護記録書IIの作成を行える。これにより,訪問看護の効率化を図れる。音声入力も対応しているほか,褥瘡などをモバイルデバイスに搭載されたカメラで撮影し,文書に添付するといったことも可能である。
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2018年度の介護報酬改定では,業務効率化を図る観点から,「介護ロボットの活用の促進」として,見守り機器を導入した場合の夜勤職員配置加算の要件が見直された。介護老人福祉施設などでは,入居者の動向を検知できる見守り機器を入所者の15%以上に設置することにより,これまでの「最低基準+1人」から「最低基準+0.9人」へと要件が緩和される。センサにより徘徊や転倒などを検知して,通知する見守り機器は,職員の負担軽減,業務効率化にもつながることから導入が進んでおり,製品も出そろってきた。介護システムを手がけるNDソフトウェア(株)は,主力の「ほのぼのNEXT」と連携する見守り機器として,NISSHA(株)の「Careone」を紹介していた。Careoneは人感センサや温湿度センサ,ドア開閉センサなどをラインアップしており,太陽電池式で電源工事が不要。リモコンで操作できる。入居者の異常を検知した場合,アラートの通知記録がほのぼのNEXTに取り込まれる仕組みとなっている。
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見守り機器には,ベッドや介護用品を手がける企業も力を入れている。パラマウントベッド(株)は,ブース内で「眠りSCAN」のPRを行った。ベッドに眠りSCANをセットすることで,入居者の状態をリアルタイムでモニタリング。睡眠,覚醒,起き上がり,離床といった変化や大幅な呼吸の変動時に通知する。また,(株)エヌジェイアイは,体動,心拍,呼吸,離床をモニタリングする「安心ひつじα」のデモンストレーションを行っていた。入居者に異常があった場合は,職員や家族のスマートフォンなどに通知が届く。
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さらに,家電メーカーもこの分野に参入している。パナソニック(株)は,人感センサやネットワークカメラ,エアコンなどを見守り機器として用い,患者や高齢者の情報を遠隔で管理して最適なケアを提供する「遠隔在宅ケアサポート・システム」を紹介していた。このシステムは,2017年9月から順次,大阪府交野市・箕面市,愛知県豊田市で実証実験をスタートさせている。
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超高齢社会が進む一方で,今後労働力人口の減少などにより医療や介護の現場でも人出不足が起きることが予想される。これを補うものとして,ICT,IoTの導入は今後も広がると予想され,新たな製品・サービスが今後も登場するだろう。