第1回日本消化管Virtual Reality学会総会・学術集会が開催
2018-1-29
消化器内科医,放射線科医,診療放射線技師など
60人以上が参加
第1回日本消化管Virtual Reality学会総会・学術集会が2018年1月20日(土),日新火災(東京都千代田区)において開催された。日本消化管Virtual Reality学会は,消化管CT研究会と消化管Virtual Endoscopy研究会が統合して発足した。消化管領域の検査・診断技術は,モダリティの進歩とともに発展してきた。近年では,大腸CT(CT colonography:CTC)が普及しつつあり,三次元画像による画像観察が行われるようになっている。2012年にはCTCが保険適用となり,以降,確実に実施施設も増加しているが,前処置法や画像処理法,診断法などが標準化されているとは言えない。このような背景から,日本消化管Virtual Reality学会では,国内外の医療機関との協力し,CTCなどの広報活動や多施設共同研究,教育,認定制度の構築などに取り組んでいくこととしている。
その一環として行われた第1回目の総会・学術集会では,服部昌志氏(医療法人山下病院消化器内科)が会長を務め,「消化管コンピューター断層画像診断の知識の交換」をテーマに,一般演題1(8演題),総会,ランチョンセミナー,一般演題2(9演題),特別講演というプログラムが組まれた。服部会長は,開会の挨拶の中で,日本における消化管virtual reality(VR)の技術は世界に誇れるものであり,これからも伸びる分野であると説明。その上で,学会を通じてますます消化管VRの技術が発展することを祈念すると述べた。なお,総会では役員として,理事長に山野泰穂氏(札幌医科大学消化器内科学講座),理事に飯沼 元氏(国立がん研究センター中央病院放射線診断科),小林広幸氏(福岡山王病院消化器内科),田中卓雄氏(サヴァイクリニック),服部氏,満崎克彦氏(済生会熊本病院予防医療センター)の5名,監事に松川正明氏(あそか病院内科)が選出されたことが発表された。
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午前中に設けられた一般演題1では,松本啓志氏(川崎医科大学附属病院消化器センター食道・胃腸内科)と満崎氏が座長を務めた。最初に登壇した末松誠司氏(医療法人山下病院放射線部)は,「検査食が大腸CT検査におよぼす影響の検討」をテーマに,「FG-two」(伏見製薬所社製)と「サンケンクリン」(キューピー社製)と「ダルムスペースデリシア」(カイゲンファーマ社製)の3種類の検査食による腸管内の残液量,残便量,タギング能の違いを紹介した。続いて発表した本多健太氏(医療法人豊田会刈谷豊田総合病院診療技術部放射線技術科)は,「当院における専用バリウムを用いた大腸CTの検査精度」と題し,等張法と高張法という2方式の前処置によるCTCの精度について説明した。3番目に登壇した森本恵里佳氏(医療法人尚豊会みたき総合病院放射線室)は,「CT Colonography における前処置法改良の検討」をテーマに,「コロンフォート」(伏見製薬所社製)を用いた高張法において用法の変更によるタギング不良の改善について解説した。次に登壇した黒木誠司氏(一般社団法人岡崎市医師会公衆衛生センター)は,「大腸CT検査におけるタギング有効性に与える因子と対策」と題して,被検者の年齢や外気温などがタギング有効率に影響を及ぼすことを説明した。5番目に発表した岩渕正広氏(国立病院機構仙台医療センター消化器内科)は,「宮城県でのCT colonographyの現状と普及の可能性」をテーマに,県内8施設におけるCTCの受容性に関する調査結果を報告した。続いて「High Volume CenterにおけるCTCの実際」をテーマに発表した芳川昌功氏(医療法人山下病院消化器内科)は,2003年からCTCを開始し,2017年11月までに2万7000件以上の施行してきた経験を報告。大腸内視鏡検査との検査精度比較結果などを示した。7番目に登壇した加治屋より子氏(公益社団法人鹿児島共済会南風病院放射線科)は,「CT colonographyは便潜血の二次検査として有用か?」をテーマに,便潜血陽性者に対する二次検査としてのCTCの有用性に言及した。一般演題1の最後に登壇した満崎氏は,「大腸CT検査による大腸がん一次検診成績」をテーマに,CTCが大腸内視鏡検査と比較しても遜色ない成果が得られていることを報告した。
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この後,総会を挟み,積水メディカル(株)との共催で行われたランチョンセミナーでは,服部氏が司会を務め,飯沼氏が「本邦におけるCTコロノグラフィー〜現在(Current)・過去(Past)・未来(Future)〜」をテーマに,自身の経歴とともにCTCの歩みについて解説した。この中で飯沼氏は,CTCの発展の技術的トピックスとして,マルチスライスCTの登場とその後の多列化,画像処理技術や前処置法の進歩などを挙げた。さらに,飯沼氏は,CAD開発など今後の技術開発にも触れた上で,CTC普及に向けて,エビデンスを蓄積し,適正な診療報酬を得ることが重要だと説明した。
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続く,一般演題2では,水口昌伸氏(佐賀大学医学部放射線医学教室放射線科)と小林氏が座長を務めた。1演題目として登壇した加藤文一朗氏(秋田赤十字病院消化器病センター)は,「当センターにおける大腸T1癌に対する CT colonographyの描出能の検討」と題して,存在診断への有用性を報告した。また,2番目の発表では,「仮想注腸split画像を用いた側面変形定量化によるひだ上大腸癌深達度診断の有用性についての検討」と題して,宮坂光俊氏(宗像医師会病院放射線科)が,仮想注腸split画像での側面変形定量化によって襞状大腸がんにおける深達度の診断能が向上することを報告した。次に登壇した村田浩毅氏(医療法人尚豊会みたき総合病院放射線室)は,「CT Colonographyで指摘されたIp型病変の特徴」をテーマに,Ip型病変の表面形態や大きさの描出にCTCが有用であったことを紹介した。4番目に発表した小林氏は,「当院で経験した腸管子宮内膜症の診断におけるCTCの有用性についての検討」と題し,CTCの仮想注腸像について,内視鏡が挿入困難な深部大腸の評価などで有用性が高いことなどを解説した。さらに,5番目に登壇した藤田朋紀氏(小樽掖済会病院消化器内科)は,「小腸腫瘍性病変の診断におけるVirtual endoscopyの位置づけ」をテーマに,ダブルバルーン式小腸内視鏡とカプセル内視鏡に加えてCTCのvirtual endoscopyを撮影することで,病変検出能の向上を図った経験を報告した。続いて行われた鶴丸大介氏(九州大学放射線科)の発表では,「単純CTを用いた胃癌のCT値に関する検討」と題して,胃がん場合のCT値が正常な胃壁よりも低い傾向があることなどが解説された。7番目には,「クローン病の画像診断の評価に2層検出器スペクトラルCTを用いたCT enterographyが有用であった一例」をテーマに,伊牟田真功氏(熊本大学医学部附属病院画像診断・治療科)が,通常のCTよりも2層検出器スペクトラルCTの方がCT enterographyでの病変の描出能が優れていることを示した。次に発表した竹内 健氏(東邦大学医療センター佐倉病院内科学講座消化器内科学分野)は,「潰瘍性大腸炎の炎症評価における超低線量CT colonography仮想注腸像の有用性」と題し,内視鏡の代替検査となる可能性などを説明した。最後に発表した三宅基隆氏(国立がん研究センター中央病院放射線診断科)は,「CT colonography(CTC)画像による腹腔内癒着の推定可能性の検討」をテーマにして,手術で腹腔内癒着が認められた症例におけるCTC所見との比較を行った結果を解説した。
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プログラムの最後として,エーザイ(株)共催による特別講演が行われた。山野氏が司会を務め,竹政伊知朗氏(札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科)が登壇。「3D PET/CT Virtual Colonographyが変えるImage Guided Surgery」と題して講演した。竹政氏は,PETとCTCのフュージョン画像などを提示。大腸がんの進展度診断や局所立体解剖の視覚的把握,教育材料としての有用性を説明。さらに,術前シミュレーションや術中ナビゲーションとしても役立つことを紹介した。
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最後に,飯沼氏が閉会の挨拶を行い,第1回総会・学術集会が成功裏に終えることができたとし,今後もCTCの標準化を進めるなどして,国民に質の高い医療を提供できるよう学会活動を進めていきたいと述べた。なお,次回は,飯沼氏が会長を務め,2019年1月19日(土)に,国立がん研究センター中央病院を会場に開催される予定である。
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●問い合わせ
日本消化管Virtual Reality学会事務局代行
株式会社サンプラネット
TEL 03-5228-7261
https://jgvra.jp