NVIDIAが「GTC Japan 2017」で人工知能時代の到来をアピール
2018-1-9
東京では9回目の開催となるGTC Japan
エヌビディア(同)(NVIDIA)は,2017年12月12日(火),13日(水)の2日間にわたり,ヒルトン東京お台場(東京都港区)において,同社GPU技術に関する国内最大級のイベント「GTC Japan 2017」を行った。コンピュータのグラフィック処理を担うGPUの製造メーカーである米国NVIDIAは,例年「GPUテクノロジーカンファレンス(GTC)」を世界主要都市で開催している。2017年は7都市を巡り,東京が締めくくりの場となった。東京では9回目となるGTC Japanであるが,回を重ねるごとに規模を拡大。今回は文部科学省と理化学研究所が後援して,ヘルスケア分野でも開発が進む人工知能(AI)の中核となるGPUの技術とその応用に関するハンズオンセミナー,プログラムが設けられた。
2日目の13日10時からは,NVIDIA創業者兼CEOであるジェンスン・フアン氏の基調講演「新しいコンピューティングの時代」が行われた。フアンCEOは,AIについて過去30年間で最も重要な技術であると指摘。NVIDIAのGPUコンピューティングがAIの技術革新をもたらしたと述べた。そして,GTCの参加者数やGPUコンピューティングの開発者数,GPUコンピューティング開発のプラットフォームである“CUDA”のダウンロード数が飛躍的に伸びており,新しいコンピューティングプラットフォームとして確立されたと強調した。また,フアンCEOは,GPUをベースにした仮想空間でデザインや設計などの協調作業を行うコラボレーティブVR技術“Holedeck”を紹介した。このHolodeckでは,遠隔地のユーザー同士が同じ部屋にいるような環境を仮想的に作り出し,自動車のデザインや設計などを会話しながら進めることが可能である。
フアンCEOは,AIの技術開発の現状と今後の展望についても言及した。GPUコンピューティングによるディープラーニングは,従来の機械学習を上回る高精度での学習が可能となっているとフアンCEOは説明。その上で,車載用AIプラットフォーム“NVIDIA DRIVE”による自動運転や安全運転のための技術,自律走行車用ソリューションなどを紹介した。さらに,もう一つの重要な応用分野として,産業ロボットなどの自律動作マシン向けの技術も取り上げた。
NVIDIAでは,このほかにヘルスケアもAIの技術が役立つ分野と位置づけている。フアンCEOは,基調講演の中で日本におけるAI活用の重要な分野として自動車,産業ロボット,建設に加えてヘルスケアを挙げ,その市場規模が700億ドルに上るとした。基調講演の最後に,フアンCEOは,これらの技術によるAI革命が始まったと述べて,プレゼンテーションをまとめた。
|
|
ヘルスケア分野でのAI活用を推進しているNVIDIAだけに,今回のGTC Japanでも医療などをテーマにした発表が数多く見られた。初日には,同社がスタートアップ企業支援として取り組んでいる「NVIDIA Inception Program」のパートナー企業が参加してプレゼンテーションを行う「NVIDIA Inception AIスタートアップサミット」が2部構成で設けられ,ヘルスケア分野向けのAI技術も紹介された。CT・MRIなどの医用画像のビッグデータを用いた診断支援技術“EIRL”を開発したエルピクセル(株)がプレゼンテーションを行ったほか,(株)エクサウィザーズが介護におけるAIを用いたコーチング事例,(株)情報医療がオンライン診療向けのアプリケーション“Curon”をPRした。
初日には,ハンズオントレーニングにおいても,ヘルスケア関連のプログラムが用意された。このうち「NVIDIA DIGITSによる画像セグメンテーション」では,医用画像から特定の臓器や血管などを抽出するためのニューラルネットワークの講習が行われた。また,「Kerasを使ったRNNによる時系列データモデリング」では,ロサンゼルス小児病院が取り組んだディープニューラルネットワークの研究を体験することができた。
|
|
さらに,2日目のテクニカルセッションでは,「VRのビジネス活用を促進『HP Z VR Backpack G1』最新事例」と題し,(株)日本HPのウェアラブルVRワークステーションの活用事例として,医師の手術トレーニングなどが紹介された。このほか,ポスターセッションでもヘルスケア分野に関する発表が多く見られた。なかでも医用画像関連では,杉本真樹氏(国際医療福祉大学)「GPU-Based Extended Reality(XR)Enhances Surgeons’ Spatial Awareness in Surgical Theater Using Immersive 3D Holograms and Patient-Specific Computed Tomography」,谷口直嗣氏〔HoloEyes(株)〕の「VR/MR/ARを用いた医療向けサービスにおけるDeep Learningを用いた医療画像セグメンテーションの自動化事例」,周 向栄氏(岐阜大学)「ディープラーニングに基づくCT 画像からの複数の解剖学的構造の同時抽出」といった発表があった。また,放射線治療に関する発表としては,岡田勝吾氏(神戸大学) の「放射線シミュレータ『MPEXS』の PASCAL アーキテクチャ上での性能」があった。
2日間にわたるGTC Japan 2017では4000人を超える登録があり,ヘルスケア分野の技術者,開発者なども多数参加した。自動運転や自律動作マシンと同様,ヘルスケア分野でのAI技術の開発は加速度的に進んでいる。GTC Japan 2017に先立つ11月26日には,第103回北米放射線学会(RSNA 2017)において,NVIDIAとGE Healthcareの協業が発表され,GE Healthcareの画像診断装置にNVIDIAのAI技術を搭載することが明らかになった。画像診断装置メーカーなどのAI技術の研究開発は今後さらに活発化し,この分野でのNVIDIAのGPUコンピューティングの利用が広がっていくと予想される。
●問い合わせ先
エヌビディア合同会社
http://www.nvidia.co.jp
GTC Japan 2017
https://www.gputechconf.jp
- 【関連コンテンツ】