医療データの活用をテーマにした「第4回 日本橋ライフサイエンスシンポジウム」が開催
2017-10-23
データ活用やAIをテーマに4名が講演
日本橋ライフサイエンス委員会は,2017年10月14日(土),一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)と共催で,「第4回 日本橋ライフサイエンスシンポジウム」を開催した。日本橋ライフサイエンスハブ(東京都中央区)を会場に,「プロが語り尽くす医療データの活用」をテーマに掲げて,講演とパネルディスカッションが設けられた。
まず,山本雄士氏〔(株)ミナケア代表取締役〕が開会の挨拶を行った。山本氏は,AIなどの技術進歩により医療に関するデータが集まるようになっており,それをどのように活用していくか,他業界からの視点も含め,具体的な方策を考える場にしたいと,シンポジウムのねらいについて述べた。
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その後講演へと進み,最初に津川友介氏(University of California, Los Angeles助教)が登壇(Skypeでの中継)。「医療×ITで医療の未来はどう変わる?」と題して,医療分野の人工知能(AI)の活用を取り上げた。津川氏は,大学病院で行われている回診について,不足している診療情報を患者から得る機会であるとともに医師間で情報を共有し医療過誤を防ぐためのものであったと説明。現在は,ITにより膨大な情報を効率的に収集できるようになったと述べた。その上で,AIについて,機械学習や深層学習,汎用型AIと特化型AIなどを解説したほか,良質なデータの不足や因果推論ができないといった課題にも触れた。さらに,津川氏は,AIは医療の効率化や意思決定の支援はできるが,どうすれば病気が治るかなどを教えることはできないと指摘。AIにより医療の未来は明るくなるが,課題も残されているので,過信してはいけないとまとめた。
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次いで,藤本陽子氏〔ファイザー(株)メディカル・アフェアーズ統括部統括部長〕が,製薬企業における医療データの活用事例について講演した。藤本氏は創薬コンセプトの検討から前臨床試験,臨床開発(治験),製造販売・臨床応用という流れの中で,ランダム化比較試験(RCT)のデータに加え,レセプトデータベース,健診データベース,カルテデータベースなどの“リアルワールドデータ”を用いて,対象患者数 ,治験の実態評価と結果の予測,使用実態評価,副作用評価,市販後安全評価を行っていると述べた。そして,リアルワールドデータを蓄積したビッグデータの分析によるエビデンス創出事例として,ミナケアと協力した高尿酸血症の有病率に関する検討結果について解説。このほかにも高脂血症における治療介入の有無とアウトカムに関するリアルワールドデータの活用事例などを紹介した。藤本氏は,講演のまとめとして,製薬企業にとってリアルワールドデータは多くの情報を得られるが,現状では適切に活用されておらず体制に整備が課題であると述べた。
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3番目と4番目の講演は,医療関係者ではなく,データ活用のスペシャリストの2名が講演した。先に登壇した北川拓也氏〔楽天(株)執行役員兼データインテリジェンス統括部ディレクター兼ECカンパニーCDO〕は,「データの価値」をテーマに講演した。北川氏は,データの価値について,「お金に変わっていない本質的価値を見つけること」と定義し,Google社やFacebook社などのインターネット企業などのデータ活用の取り組みを紹介した。さらに,医療データが生む価値として,治療,予防,幸福実現を挙げた。次いで,講演した北野宏明氏(特定非営利活動法人システム・バイオロジー研究機構会長)は,「System Biology, Data and AI」と題して講演した。システム・バイオロジー研究機構では,ライフサイエンスとコンピュータサイエンスに関する研究を行っており,医学・生理学領域におけるソフトウエアのプラットフォームである“GARUDA”の開発に取り組んでいる。北野氏は,GARUDAによるデータ分析やAI活用による研究の効率化などについて言及した。
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4名の講演後には,内田毅彦氏〔(株)日本医療機器開発機構代表取締役社長〕も加わり,山本氏が司会を務めてパネルディスカッションが行われた。AIはどの程度診療に生かすことができるのか,良質なデータを集めるためにはどうしたらよいのか,またデータの質をどのように担保するのかといったことについて意見が交わされた。医療分野ではAIが注目を集めているが,技術の開発だけでなく,それをいかに活用するかが重要である。日本橋ライフサイエンス委員会とLINK-Jでは,今後もビッグデータやAIの有効活用に向けシンポジウムなどを開催するとしている。
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●問い合わせ先
一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)
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