ユニバーサルアクセシビリティ評価機構が,介護用コミュニケーションロボットの導入成果報告会を開催
2017-7-31
多施設共同・非ランダム化比較試験で使用された
コミュニケーションロボットPALRO
一般社団法人ユニバーサルアクセシビリティ評価機構は2017年7月29日(土),東京医科大学病院第一教育棟3階臨床第一講堂(東京都新宿区)において,「西東京コンソーシアム報告会 コミュニケーションロボットの介護施設への導入 多施設共同・非ランダム化比較試験」を開催した。西東京コンソーシアムは,2016年度に行われた経済産業省「ロボット介護機器開発・導入促進事業」の委託で,国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が行った「ロボット介護機器開発に関する調査」に参加した4社会福祉法人,5施設で構成される。今回の報告会は,参加施設が集めたデータを基に,コンソーシアム内での介護用コミュニケーションロボットの使用経験について,分析結果を交えて報告する機会として設けられた。
関口令安氏(成城学校理事長)による開会の挨拶があった後,溝尾 朗氏(JCHO東京新宿メディカルセンター)が座長を務めて,特別講演が行われた。演者として大川弥生氏(産業技術総合研究所)が登壇。「『よくする介護』を実践する『物的介護手段』としての可能性」をテーマに講演した。大川氏は,まず経済産業省の事業でめざしたロボット介護機器について,(1)目的と成果を「人」に対する影響としてみる,(2)よくする介護を実践するための物的介護手段として位置づける,という基本方針を示した。さらに,コミュニケーションロボットの介護分野における要件を明らかにするというこの事業の目的を述べ,評価指標に国際生活機能分類(ICF)を用いることなど調査の概要を紹介した。大川氏は,調査の結果を示し,コミュニケーションロボットにより,被験者866人の34.1%となる296人に生活行為の改善が見られ,「セルフケア」「社会生活等」「運動・移動」といった項目において,生活機能が向上していると述べた。また,コミュニケーションロボットを「状態検知対応型」「環境・操作反応型」「介護者代替プログラム実施型」に分類し,特に状態検知対応型ロボットで,被介護者の改善が見られていると説明。一方で,介護者代替プログラム実施型ロボットにより介護者の業務負担を軽減しているという結果も報告した。これらの結果を踏まえて,大川氏は,コミュニケーションロボットに求められる機械的要素として,コミュニケーション手段としても用いること,「促し」を有効に行えるプログラムの設計などを挙げた。最後に大川氏は,コミュニケーションロボットにより,被介護者の自立度が向上して,生活の活発化に効果があったと述べ,今後は「よくする介護」を実践する「物的介護手段」としての開発,介護プログラムの綿密化が期待されるとまとめた。
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次に,西東京コンソーシアム報告「ICFの観点から見たコミュニケーションロボット導入の効果」をテーマに,増山 茂氏(東京医科大学)が座長を務めて,尾林和子氏(西東京コンソーシアム代表/東京聖新会)が発表した。西東京コンソーシアムでは,「ロボット介護機器開発に関する調査」の一環として,5施設80人(うちコントロール群15人)の被介護者,3タイプのロボット合計110台を用いて,多施設共同・非ランダム化比較試験を行った。尾林氏は,3タイプのロボットの効果についてICFの「活動と参加」リストを用いて評価したところ,8週間で被介護者の生活機能が改善しているという結果が得られたと報告した。次いで,「見守りシステムを伴うコミュニケーションロボット導入が介護労働者の深夜間勤務負担に与える影響」と題して,尾形剛弥氏(東京聖新会)が発表した。東京聖新会では,ロボット介護機器開発に関する調査において,見守りシステムを組み合わせたコミュニケーションロボット20台を用い,介護者12人,被介護者20人を対象に,介護者の行動を観察し,事故に及ぼす影響,疲労度を調べた。その結果として,尾形氏は,見守りシステムがリスクと業務の優先順位付けの判断ツールとなることで,介護事故の減少につながり,介護者の心的負担を軽減できたと説明した。
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この後,工藤憲一氏(弘前大学)と尾林氏が座長を務め,介護者の視点から,多施設共同・非ランダム化比較試験を語る「今だから語れるデータ採取あれこれ。現場は大混乱。でも,様々な発見・収穫があった~!」が設けられた。西東京コンソーシアムに参加した東京聖新会の近藤洋正氏,岡本佳美氏,真光会の立野弘祐氏,河村隆広氏,府中西和会の森田恭平氏,大谷の原田 諭氏,綜合警備保障(株)の菅原美智子氏から発言があった。今回の多施設共同・非ランダム化比較試験では,データ採取のためのICF評価シートへの理解が不十分であった例が見られたほか,慣れないロボット操作に手間取ったり,ネットワーク整備の負担がかかったりしたことなどが報告された。一方で,ICFの理解が深まり職員のアセスメント能力が向上したほか,職員間の意思統一を図ることができたとの発言もあった。また,コミュニケーションロボットにより,被介護者の会話が増え,家族もロボットと仲良くなり,コミュニケーションが深まるなどの効果もあったとの意見が出された。
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次に,「個性豊かなコミュニケーションロボットとその将来展望」と題して,坂田信裕氏(獨協医科大学)を座長に,企業からの製品紹介が行われた。富士ソフト(株)からは「PALRO」のデモンストレーションがあったほか,(株)NTTデータからはヴイストン(株)の「Sota」,エイアイビューライフ(株)からは見守りシステムの「A.I.Sense」,トレンドマスター(株)からは「なでなでねこちゃん」などが紹介された。また,坂田氏が「多種多様なコミュニケーションロボットの紹介」と題して講演を行った。坂田氏は,介護におけるコミュニケーションロボットが,被介護者の友人やパートナーになり,地域包括ケアにおいても有用なツールとなると説明。さらに,労働者人口減少の中で,人材不足を補える可能性があることを示唆した。
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続いて,報告会のまとめとして,増山氏が登壇。「介護とICT・ロボットの未来」と題して,講演した。増山氏は,カレル・チャペックの『ロボット』,アイザック・アシモフ氏が提唱したロボットの三原則を取り上げたほか,米国や欧州におけるロボットの動向を紹介。ヒトとロボットのかかわり合いについて言及した。
最後に,野口 聡氏(どこでもMYカルテ研究会/産業技術総合研究所)が閉会の挨拶を行い,盛況のうちに閉会した。
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●問い合わせ先
一般社団法人ユニバーサルアクセシビリティ評価機構
TEL 03-6869-8223
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