日本診療放射線技師会と日本画像医療システム工業会,「第5回モニタ精度管理セミナー」を開催

2017-7-12

日本画像医療システム工業会(JIRA)

モニタ


約50名の診療放射線技師が参加

約50名の診療放射線技師が参加

公益社団法人日本診療放射線技師会(JART)と一般社団法人日本画像医療システム工業会(JIRA)は,2017年7月1日(土),JART本部講義室(東京都港区)にて「第5回モニタ精度管理セミナー」を開催した。

モニタ精度管理セミナーは,座学だけでなく実機を使って,精度管理に必要な知識・技能を身につけられるよう,JARTとJIRAによって企画され,2012年から年1回開催されている。2013~2016年に集計された「モニタ品質管理に関する実態調査」のアンケート結果に基づき,キャリブレーションなど精度管理に関する講義やデモンストレーションが行われる。今回は,「医用画像表示用モニタの特徴と品質管理の実態」「モニタの品質管理に関するガイドライン(JESRA X-0093)」「病院での品質管理について」と題した講義が設けられた。また,講義の合間には,モニタ実機を用いたヒヤリハット体験の講習や,JESRA X-0093に沿った不変性試験のデモンストレーションも実施された。

まず,JART理事の松田恵雄氏が登壇し,「医用画像表示用モニタの特徴と品質管理の実態」をテーマにした講義を行った。松田氏は,「モニタ品質管理に関する実態調査」のアンケート結果を紹介。診療放射線技師の約45%が“モニタによって画像の印象が異なる”という経験をしていることや,モニタの品質管理に由来するヒヤリハットの事例が611件報告されていることを示し,ツールや知識の不足から,各施設で医用画像表示モニタの精度管理が十分に行われていない現状を指摘した。
また,汎用カラー液晶モニタ50台を対象とした導入1年後の輝度・階調特性の計測結果を示し,画質の一貫性を保つために専用の階調補正機能と輝度安定化回路を備えた医用画像表示モニタの重要性を解説した上で,「画像診断においては,医師および病院側が液晶モニタの特性を十分に把握し,適切に運用・管理する責任がある。そのための品質管理には,読影が可能で,日常的に医用画像表示モニタを取り扱う診療放射線技師が大きな役割を果たす」と述べた。松田氏は,ほかにも,液晶モニタの経年劣化の主要因であるバックライトの構造やグレイスケール標準表示関数(Grayscale Standaed Display Function:GSDF)の階調特性,解像度と画素ピッチの関係性などを説明した。

松田恵雄 氏(日本診療放射線技師会)

松田恵雄 氏
(日本診療放射線技師会)

   

 

次いで,グループごとにJIRA医用画像システム部会モニタ診断システム委員会によるモニタ実機を用いての講習が行われた。画像診断における6つのヒヤリハット体験を想定し,LCDモニタの構造と想定される不具合,解像度の違いによるモダリティごとの画像の見え方,医用画像表示モニタと汎用モニタの性能比較,GSDFとガンマ2.2の階調特性の比較,さらに輝度による視認性の差や環境光の影響について,モニタメーカーの担当者が解説を行った。

ヒヤリハット体験トレーニングの様子

ヒヤリハット体験トレーニングの様子

 

 

この後,JIRA医用画像システム部会モニタ診断システム委員会の中村達司氏が,「モニタの品質管理に関するガイドライン(JESRA X-0093)」について説明した。JESRA X-0093は,従来のCRTモニタに合わせた管理基準を基に,2005年8月に制定された。その後,2010年には医療関係者からの意見を参考に,適用範囲,最大輝度の設定・更新,テストパターンの追加,測定器の標準化などが図られ「JESRA X-0093*A-2010」へと改訂された。同ガイドラインでは,受入試験と不変性試験による品質管理を推奨している。受入試験は納入メーカーの「出荷試験報告書」で代用可能で,また不変性試験には使用日ごとに行う全体評価と定期試験の項目が設定されており,不合格時の対処方法も含めた解説が行われた。

中村達司 氏(JIRA)

中村達司 氏
(JIRA)

   

 

続いて,獨協医科大学越谷病院の諏訪和明氏による「病院での品質管理について」と題した講義へと進んだ。同院には,87台の医用画像モニタが導入されており,診療放射線技師が所属する放射線部と,電子カルテの運用を担当する情報処理室を合わせた品質保証委員会が品質管理を行っている。情報処理室のメンバーに対しガイドラインに沿った検査方法について一通りの指導が行われており,受入試験・不変性試験の不合格理由の確認程度ならば十分可能なため,放射線部はサポートに徹している。これを踏まえて諏訪氏は,モニタの品質管理について施設内での運用を明確にすることが重要であり,各部署で役割分担を含めた情報共有と協力体制の構築が不可欠であると説明した。

諏訪和明 氏(獨協医科大学越谷病院)

諏訪和明 氏
(獨協医科大学越谷病院)

   

 

セミナーの最後には,JESRA X-0093に沿った品質管理のデモンストレーションが行われ,モニタ実機を使って不変性試験の実際の流れが紹介された。モニタメーカーの担当者が,ガイドラインで定められたテストパターン(JIRA TG18-UNL80/QCなど)を用いて輝度均一性評価を行い,キャリブレーションセンサの使用方法などを実演した。

JESRA X-0093に沿った不変性試験のデモンストレーション

JESRA X-0093に沿った不変性試験の
デモンストレーション

 

 

●問い合わせ先
公益社団法人日本診療放射線技師会
TEL 03-5405-3612
http://www.jart.jp/

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