日本医療機器産業連合会が平成29年度講演会を開催

2017-6-14

日本医療機器産業連合会(医機連)


会場の様子

会場の様子

一般社団法人 日本医療機器産業連合会(医機連)は,2017年6月13日(火),KKRホテル東京(東京都千代田区)にて平成29年度医機連講演会を開催した。講演では,2名の演者が国内外の医療機器市場・研究開発の動向や,米国の医療政策が日本の医療機器産業に与える影響などについて解説し,医機連傘下のメーカーから多くの聴講者が集まった。

第一部では,スタンフォード大学循環器科主任研究員の池野文昭氏が,「日本医療機器産業から世界への打ち手」と題して講演。医療機器の開発手法の一つである“BIODESIGN(バイオデザイン)”を日本へ広め,イノベーション創出をめざすプロジェクト「ジャパン・バイオデザインプログラム」の現状について解説した。
バイオデザインは,医療機器の開発にあたりニーズの発見に重点を置く開発手法で,医師,エンジニア,マーケッターなどがチームとして臨床現場に赴き,患者やスタッフと接した中で感じた課題(ニーズ)を解決するためのビジネスモデルを提供する(潜在)課題発見型医療機器開発である。事業転換のサイクルが早いベンチャー企業などに適しており,開発に必要な研究設備や要素技術を共有する“オープンイノベーション”と合わせて,インキュベーターやベンチャーキャピタル(VC)の支援により事業化し,大企業へ売却する仕組みが,シリコンバレーなどで確立している。
池野氏は,医療機器開発のイノベーションについて,要素技術を優先する“Technology-Push(技術思考)”と,バイオデザインに代表される“Needs-Driven(デザイン思考)”の2つに分類されるとし,
「技術思考に優れた日本の医療機器メーカーでは,技術中心の考え方で市場ニーズに合致しない医療機器が開発されやすい傾向にある。しかし,バイオデザインを取り入れることで,社内ベンチャーやオープンイノベーションを活用する土壌が拡大し,革新的な製品・ビジネスが生まれ,海外の医療機器市場での優位性を得られるようになる」と力説した。
池野氏は,2015年に開始された,文部科学省,医機連ほか26社がスポンサーとなり,スタンフォード大学と提携したジャパン・バイオデザインプログラムを紹介。第1期フェローシッププログラムが2015年10月〜2016年7月に実施され,東京大学,大阪大学,東北大学などから参加した第1期生の活動とその成果を報告した。

池野文昭 氏(スタンフォード大学)

池野文昭 氏
(スタンフォード大学)

   

 

第二部では,青山学院大学法学部准教授の佐藤智晶氏が,「21st Century Cures Actと予想される医療機器業界への影響-予断を排して考える-」と題して講演した。米国で2016年12月に当時のオバマ大統領が署名して成立した“21st Century Cures Act(21世紀の治療法)”は,新薬承認審査の迅速化や医療機器開発の規制緩和をはじめ,がんやアルツハイマー症の治療研究助成を目的に,今後10年間にわたり米国国立衛生研究所(NIH)に48億ドル,米国食品医薬品局(FDA)に5億ドルの予算拠出を含む法案となっている。
21st Century Cures Actについて佐藤氏は,医療機器審査における第三者認証利用の拡大や,クラスⅠ・Ⅱの医療機器に関する規制の部分的緩和が含まれることで,承認の迅速化が予想されると解説した。また,医療費削減を方針とし,すでにAffordable Care Act(通称オバマケア)の廃止を宣言したトランプ大統領政権下での動向について言及。米国疾病管理予防センター(CLIA)の予算削減や,前オバマ大統領政権下で導入された“Medical Device Tax”の廃止が予想されるものの,連邦議会からNIH へ20億ドルの追加予算が認可されており,医師や連邦議会が主導するアメリカの医療政策への影響は少ないとの予想を述べた。今後も21st Century Cures Actの動向を注視する必要があると言える。

佐藤智晶 氏(青山学院大学)

佐藤智晶 氏
(青山学院大学)

   

 

参考資料:The 21st Century Cures Summary
https://rules.house.gov/sites/republicans.rules.house.gov/files/114/PDF/114-SAHR34-Sxs.pdf

 

●問い合わせ先
日本医療機器産業連合会
TEL 03-5225-6234
http://www.jfmda.gr.jp

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