日本超音波医学会第90回学術集会 取材レポート
2017-6-8
日本超音波医学会第90回学術集会(大会長:谷口信行氏 自治医科大学臨床検査医学教授)が2017年5月26日(金)〜28日(日)の3日間,栃木県立総合文化センター(宇都宮市)にて,日本乳腺甲状腺超音波学会第38回学術集会(会長:田中久美子氏 湘南鎌倉総合病院乳腺外科部長)と共同で開催された。
会場内の第1・第3ギャラリーでは,メーカー各社による製品展示会場が設けられ,腹部・循環器から産婦人科,乳がん検診まで,さまざまな領域に対応する超音波診断装置を展示。プレミアムハイエンド機器に加え,ポータビリティに優れたコンパクトタイプの装置,最新素材の採用で高速・高画質の描出が可能となったプローブなどを来場者へアピールした。
■機器展示(順不同)
東芝メディカルシステムズ
日立製作所
シーメンスヘルスケア
フィリップスエレクトロニクスジャパン
GEヘルスケア・ジャパン
富士フイルム
東芝メディカルシステムズは,2016年に発売したプレミアム超音波診断装置の “Aplio iシリーズ”のエントリーモデルとなる新製品「Aplio i600」を中心に,9mm幅の体表接触面を実現した新型プローブ「PVI-475BT」「PVT-482BT」や,コンパクトモデルの“Viamoシリーズ”最上位機種「Viamo c100」などを展示した。
Aplio i600は,上位機種に搭載されている超音波送受信技術“iBeam forming”に対応し,細く均一な超音波ビームを高密度で送受信することで高画質を実現した。また,“Superb Micro-vascular Imaging(SMI)”や“Strain Elastgraphy”など,iシリーズの基本的なアプリケーションを使用でき,バッテリー駆動にも対応し,ケーブルなしで約30分の検査を可能とする(オプション)。
また,Aplio i600でも利用可能な「PVI-475BT」やマイクロコンベックスタイプの「PVT-482BT」など新型プローブを紹介した。PVI-475BTは,9mmの薄型ヘッドで肋間が狭い患者の検査に対応し,微小循環血流を観察するモード“Superb Micro-vascular Imaging(SMI)”を強化した“iSMI”を実装し,従来のカラードプラ法では確認しづらかった細い血管も高精細に描出できる。
Viamoシリーズの最上位機種のViamo c100は,シリーズのコンセプトである高い機動性と画質性能の両立を継承し,バッテリー込みで5.9kgと非常に軽量であり,角度依存性の少ない高精細なディスプレイに加え,画面の明るさを自動で調整する輝度センサを備える。また,旧機種から操作性を見直し,新たに直感的なデザインのタッチキーを採用している。バッテリーは最大2時間稼働し,オプションで運搬用のカートと最大3個のプローブ切り替えキーを備える。加えて,モニタ部分を倒せば自動でスリープモードへ切り替わるほか,立ち上げから約8秒で検査が可能となった。
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日立製作所のブースでは,“PURE IMAGE,SEAMLESS WORKFLOW,YOUR APPLICATION”の3つをコンセプトに開発されたプレミアムの超音波診断装置に加え,機能を強化した半導体探触子“CMUT”プローブや軟性樹脂材のアタッチメントなど,検査をサポートする幅広い製品ラインアップを展示した。
超音波診断装置“ARIETTAシリーズ”の最上位機種となる「ALOKA ARIETTA 850」は,有機ELディスプレイを採用して画質の向上を図ると同時に,可動範囲を大きく設計したモニタアームなどでワークフロー改善に貢献する。同機種に対応する「CMUTリニアSML44プローブ」は,半導体プロセスチップを搭載することで人体とプローブ本体の音響インピーダンスを近づけ,高パルスの波形の送受信を可能にした。これによって,2~22MHzの広帯域へ対応し,深度を問わず体内を均一に観察可能になり,プローブを持ち替えることなく1本のプローブで幅広い検査に対応できる。
循環器用超音波診断装置の新ブランド“LISENDO”のハイエンド機種として,「ALOKA LISENDO 880」も展示された。従来のARIETTAシリーズと同様に高い画質性能やワークフローを改善する“Prtocol Assistant”機能などを搭載し,さらに高機能の心機能自動計測パッケージによりスループットを大幅に改善する。心臓検査用に特化した機能として,左室内膜長の変化による血行動態の影響を可視化する“VFM(Vector Flow Mapping)”なども利用できる。
ほかにも,無線通信によりモニタを外してさまざまな場所で使用できる「ARIETTA Prologue」や,プローブヘッドの専用アタッチメントに軟性樹脂材を装着することで凹凸の激しい身体面をスムーズに検査可能な「音響カプラー」などが展示された。
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シーメンスヘルスケアのブースでは,リアルタイム3D経食道プローブを搭載し,“自動計測”や“3D表示”など心臓超音波検査(心エコー)に対応した機能を搭載した,循環器領域用のハイエンド超音波画像診断装置「ACUSON SC2000 PRIME」を中心に,“Women’s Health”をテーマとする乳がん検診用の製品などが展示された。
ACUSON SC2000 PRIMEは,TAVIなどSHDの治療においてさまざまなデバイスを安全に取り扱えるよう,最適な術前プランニングやリアルタイムでのナビゲーションを行う機能を備えている。リアルタイム3D経食道プローブの“Z6Ms”では,1心拍でのフルボリューム・イメージングが可能で,術中のデバイスの動きをリアルタイムで確認できるほか,カラードプラの血流表示も鮮明に描出する。
また,経食道心エコーの際に,画面上部に直交2断面のバイプレーン画像を表示し,画面下部には心房を俯瞰する3Dモデルを表裏それぞれから表示できる。4つの画面情報をリアルタイムで更新することで,立体的な視点からデバイスの位置を把握することが可能となり,手技を担当する医師の負担を軽減する。
ほかにも,15.4cm×16.8cm×6cmの範囲を自動スキャンし,一定時間での乳がん検査が可能な「ACUSON S2000 ABVS HELX Evolution」も展示された。スキャンで得られた画像はボリュームデータとして保存され,解析専用のワークステーションで任意の断面を繰り返し観察できる。
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フィリップスエレクトロニクスジャパンは,同社製のプレミアム超音波診断装置「EPIQ」に対応した経食道トランスジューサや,リアルタイム3D表示機能を追加した中上位機種「Affiniti 70 Continuum 1.0」などを展示した。
経食道トランスジューサの新製品「X8-2t」は,従来機種「X7-2t」のフレームレートや解像度をEPIQ用に特化させ,通常検査や“SHD(Structural Heart Disease)”に対応する。また,操作性の向上を図るため,マルチファンクションボタンを採用し,アップ・ダウンやフリーズなどの操作を割り当てることで,手技中でもこれらのモードをボタン操作一つで切り替えられる。
また,シャフト径を従来製品の「S7-3t」の7mmから5.2mmまで細径化し,乳幼児や小児などの検査に対応する「S8-3t」も展示した。
ほかにも,「X8-2t」のリアルタイム3D機能と各種解析機能に対応した超音波診断装置「Affiniti 70 Continuum 1.0」を展示した。これにより,EPIQ,CX50に加えて,リアルタイム3D表示が可能な超音波診断装置が3機種となり,「EPIQほどのハイエンド機種は必要としないが,リアルタイム3D表示機能を利用したい」という施設のニーズに応える形となった。また,X8-2tの“xPlane”機能による直行断面の 2 画面表示が可能で,2Dエコーを利用する際の位置判定がしやすく,3Dによる立体表示の際も患部構造の把握をサポートする。
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GEヘルスケア・ジャパンは,心臓・腹部用・産婦人科用の超音波診断装置を展開し,各領域をカバーするハイエンドモデルの展示を行った。
「LOGIQ S8 with XDclear(Rev.4)」は,腹部から心臓検査まで対応する汎用型超音波診断装置。日本の日野工場で設計・開発され,重量85kgのコンパクトな筐体設計で,女性でも容易に移動可能な “モバイル・ハイエンド”となっている。また,バッテリー駆動に対応し,コードレスでも1時間程度の検査が可能な“オフラインスキャン” を搭載できる(オプション)。さらに,角度依存性の少ないOLED(有機ELディスプレイ)を採用し,高コントラストで視認しやすい画面を実現した。
同機種に対応する“XDクリアプローブ”は,素子にシングルクリスタルを採用し,下方向へ拡散する超音波を前へ押し出す“アコースティック・アンプリファイア”や,超音波によるレンズ表面の温度上昇を防ぐ“クールスタック”などの機能で高画質な検査を可能にする。また,肝硬度を測定可能な“Shear Wave Elastography”,40fpsの高解像度で血流を描出する新機能“HDC”を搭載する。
「Vivid E95」は,GE独自のソフトウエア・ビームフォーミング技術である“cSOUNDテクノロジー”を採用し,距離に関わらず均一な画質での描出を可能とする。たとえば,心尖部の筋肉が周囲と比べて薄くなっている様子が確認できる。さらに,心臓の明るさを示すゲインをピクセル単位で自動調整する“オートゲイン”や,高画質のリアルタイム3Dエコーに対応する。
「Voluson E10」は,産婦人科向け超音波診断装置のプレミアムグレードに位置付けられる。8000個以上の素子により電子的に超音波ビームを制御する“Electoronic4Dプローブ”を搭載し,胎児の3D・4D画像をリアルタイムで高精細に描出することが可能となった。また,3Dモデルを表示する際に3つの仮装光源(メイン,サブ1・2)を自由に操作可能な“HD Live Studio”を搭載しており,胎児の動きを立体的に捉えることができる。
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富士フイルムは,携帯型超音波診断装置「FC1」の新バージョンの超音波診断装置「Sonosite iViz」とNTTドコモの「Media-Rey Station+」を組み合わせた遠隔画像転送システム(仮称)などを展示した。
Sonosite iVizを用いた遠隔画像転送システムは,現場(在宅や救急車など)のiVizで取ったエコー画像をスマートフォンを用いて遠隔地(病院)の端末にリアルタイムで伝送するシステム。双方向の音声のやり取りのほか,病院側の遠隔地のPCからもシャットダウンなどの操作ができるため,細かな指示を現場と病院側でやり取りしながら処置を進められる。専用アプリケーションが入ったスマートフォンとSonosite iVizをケーブルで繋ぐだけでセットアップできるよう設計されている。
ほかにも,動物観察用の70Mhz対応エコー装置「Vevo 3100」を参考出展。マウスの心臓の弁まで観察することが可能なスペックを持ち,獣医学部や動物病院への導入実績を有する。人間の臨床については,表層にある特定の細い神経にのみ針を刺す場合など,麻酔科での用途への適用が検討されている。
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