量子科学技術研究開発機構,「次世代MRI・造影剤」をテーマとする国際シンポジウムを開催
2017-5-26
会場の様子
量子科学技術研究開発機構(量研)は,2017年5月23日(火),日本科学未来館(東京都江東区)にて“次世代MRI・造影剤”キックオフ国際シンポジウムを開催した。
2016年4月1日に放射線医学総合研究所(放医研)と原子力研究開発機構の核融合部門および量子部門の再編・統合して,発足した量研は,平野俊夫理事長の下,「QST未来戦略2016 」を策定し,さまざまな取り組みをスタートしている。産官学の連携による研究開発の推進の中心となる,“QST・イノベーションハブ構想”の取り組みでは,2017年度より各共同研究の実施組織となるアライアンスが活動を開始している。その一つが,放医研を中心に生体イメージング技術を基盤として,創薬分野での産学連携を進める「量子イメージング創薬アライアンス」で,その中のプロジェクトとして「次世代MRI・造影剤」がスタートする。今回のキックオフ国際シンポジウムでは,このアライアンスのスタートにあたり次世代MRI技術や新規MRI造影剤の研究,開発にかかわる国内外のトップ研究者による講演を行うと同時に,国内外の研究者や企業関係者による交流や議論を深めることを目的としている。
シンポジウムの冒頭で挨拶した平野理事長は次のように述べた。
「量研は,量子科学技術による“調和ある多様性の創造”により,平和で心豊かな人類社会の発展に貢献することを理念に掲げている。MRIの原理は量子科学技術に密着しており,世界的にも高い水準の多くの研究が展開されている。日本においても,量研名誉フェローである小川誠二先生が原理を発見した“ファンクショナルMRI”は,神経医学研究から人の心を読み解くツールへと発展しており,MRIの最先端技術が量子科学技術と生命科学をつなぐ架け橋となり,日本の科学技術と生物医学研究を支えることを期待している。
“次世代MRI・造影剤” アライアンスは,そうした先端的なMRI技術を背景に,創薬や,その研究開発に役に立つ新たな撮影方法や造影剤などの技術を,産官学の連携で開発するという取り組みである。本日発足する量研のアライアンス活動をきっかけに,量研や大学などのアカデミアな組織と企業が密接に交流し垣根を取り払うことで,“調和ある多様性の創造”による新しい発見やイノベーションの創出につながることを願っている」。
シンポジウムでは,基調講演(International Session),キックオフセッションのほか,国内セッションとして「低分子MRI造影剤開発の最先端」,「光と磁気による量子イメージングとその応用」,「異分野連携によるイノベーション創出へ」などが行われた。基調講演では国外の著名な研究者らが登壇。ピーター・キャラバン氏(ハーバード大学医学大学院)は,同氏の代表的な研究である標的化造影剤の最新動向について講演を行い,シルビオ・エイミー氏(トリノ大学)は環境応答性のMRI造影剤の研究について,ホラシオ・カブラル氏(東京大学)はナノ粒子に蛍光色素を含ませて造影剤として活用する技術について発表するなど,MRI・造影剤に関するさまざまな研究成果が報告され,参加者した研究者との議論が行われた。
●問い合わせ先
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
量子イメージング創薬アライアンス「次世代MRI・造影剤」事務局
TEL 043-206-3272