相良病院,シーメンスヘルスケアのMR-PET「Biograph mMR」を導入してハイリスク乳がんに対する検診をスタート

2016-8-16

シーメンスヘルスケア


戸﨑光宏 氏(相良病院附属ブレストセンター)

戸﨑光宏 氏
(相良病院附属ブレストセンター)

シーメンスヘルスケアと社会医療法人博愛会相良病院は,2016年8月8日(月),最新の乳がん検診に関するプレスセミナーを開催した。
シーメンスヘルスケアと相良病院は,2015年5月に新病院での女性医療の提供を核とするパートナーシップ契約を締結した(リンク )。2019年にオープン予定の新病院の事業計画のコンサルテーション,女性医療に関連する機器の提供などで両者が協力して事業を進めている。これまでにハイエンド超音波画像診断装置「ACUSON S Family HELX Evolution」シリーズ5台が導入され,乳房超音波検査に利用されている(リンク )。
今回,シーメンスヘルスケアのMR-PETシステム「Biograph mMR」を導入し,ハイリスク乳がん患者に向けた検診や診療を2016年10月からスタートする(リンク )ことから,同院での女性医療の取り組み,乳がん検診の現状,Biograph mMRの特長と乳がん診療での役割などを紹介した。

最初に,相良病院附属ブレストセンター放射線科部長の戸﨑光宏氏が,「乳がん検診の現状・トレンド」について,マンモグラフィ,超音波,MRIのトピックを紹介した。
マンモグラフィでは,近年,高濃度乳腺(dense braest)の検出感度が低いことが課題となっている。特にアジア人女性の若年者では8割が高濃度乳腺であり,乳腺濃度に応じた適切な対応が必要になる。戸﨑氏が理事長を務めるNPO法人乳がん画像診断ネットワーク(http://bcin.jp/ )では,アメリカで高濃度乳腺に対する啓蒙活動である「Are you DENSE?」の取り組みを日本にも紹介している(インナービジョン2015年8月号に特別座談会を掲載)(PDFリンク )。また,相良病院をはじめ受診者に対して個人の乳腺タイプを通知する施設も増えてきており,今後は高濃度乳腺のリスクを把握した適切な検査の提供が施設側にも求められてくると述べた。
超音波では,乳がん検診における超音波検査の有効性を検証したJ-STARTの中間報告が出たことを紹介した。J-STARTの結果では40歳代の女性に対して超音波併用検診が有効であることを示すデータが出ているが,それが実際の検診に反映されるには時間が必要だとした。さらに,MRIは,ハイリスク乳がんに対する検出感度が高く,欧米では10年以上前からMRIガイド下生検と組み合わせた検査が行われてきた。日本ではまだMRIガイド下生検を実施する施設は全国で19施設(乳腺画像・研究診断支援グループ調べ〈http://big-reads.com/ 〉)で,保険適用外のため自費診療となっているのが現状だ。
オランダでは,乳がんの罹患リスクのレベルに応じた検査を行う個別化検診(ASSURE project〈http://www.assure-project.eu/ 〉)の取り組みが始まっている。ASSURE projectでは,乳がんリスクによって低リスク群(全体の60%)ではマンモグラフィ,中リスク群(35%)でマンモ+3D超音波(自動検査),高リスク群(5%)でマンモ+MRIで行う。戸﨑氏は,日本でも乳がんの個別化検診に向けたエビデンスの蓄積と,リスクに応じた検査方法の確立が求められるとした。その上で,今回のMR-PETについてハイリスク乳がん検診での新たな知見が得られるのではないかと期待した。

続いて,シーメンスヘルスケア ダイアグノスティックイメージング事業本部MR事業部の井村千明氏が「全身統合型MR-PET同時収集装置Biograph mMR」について解説した。Biograph mMRは,高磁場対応のPET検出器を開発し,同じガントリ内にMRのマグネットとPET検出器を同心円状に並べることで,PET画像とMRIの同時収集を可能にした。MR-PETでは,MRIでは軟部組織のコントラストに優れること,時間的にも空間的にも同時収集が可能で正確なフュージョンが可能になること,X線被ばくを低減できることなどがメリットとなる。Biograph mMRは,現在全世界で80施設以上で稼働し,MRとPETを組み合わせた装置でのシェアは80%,検査対象は腫瘍:7,脳神経:2,循環器:1で,臨床:3,研究:7の割合で使用されている。相良病院のBiograph mMRは国内4台目の稼働となるが,検診を中心に臨床での利用がメインとなる。続いて戸﨑氏が再び登壇し,MR-PETの有用性について,PET-CTと比較した論文を示して期待を述べた。

最後に「相良病院とシーメンスヘルスケアによる女性医療への取り組み」について,相良病院理事長の相良吉昭氏が説明を行った。相良病院は,全国初で唯一の特定領域がん診療連携拠点病院として,乳がんの検診や治療にとどまらず,リハビリや遺伝外来,形成外科での乳房再建,妊孕性出生前診断など多くの取り組みを行っている。相良理事長は,その中で「乳がんのがん診療拠点病院としての理想のロールモデルを構築するためにシーメンスヘルスケアと連携して取り組んでいる」と述べた。主な事業となるのが,2019年オープン予定の新病院であり,もう1つが今回のMR-PETのような次世代装置の共同研究から最新のデータを発信していくことである。すでにマンモグラフィの受診者に対して個別に乳腺タイプを通知するサービスを開始し,さらに超音波併用検診を進めるため,マンモグラフィ・超音波装置搭載の検診車を新たに導入した(リンク )。そしてハイリスク乳がんに対する対応として新たに導入するのがBiograph mMRである。同院では,2008年から遺伝相談外来で乳がん卵巣がんの遺伝カウンセリングを行っているが,相談,遺伝子検査の数は年々増加している。相良理事長は,そういったハイリスク群に対する検診(任意)や治療前の検査,術後の経過観察などにBiograph mMRを利用し,そのデータを発信することで今後の乳がん検診や診療に貢献していきたいと述べた。

相良吉昭 氏(相良病院)

相良吉昭 氏
(相良病院)

井村千明 氏(シーメンスヘルスケア MR事業部)

井村千明 氏
(シーメンスヘルスケア MR事業部)

 

 

●問い合わせ先
シーメンスヘルスケア(株)
コミュニケーション部 マーケティングコミュニケーショングループ
TEL 03-3493-7617
http://www.siemens.co.jp/healthineers

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