第5回「JIRA画像医療システム産業研究会」が開催
各分野の専門家が精神疾患についての最新の知見を講演
2015-12-11
今回は精神疾患がテーマ
一般社団法人日本画像医療システム工業会(以下,JIRA)は,2015年12月9日(水)に日中友好会館(東京都文京区)にて,第5回「JIRA画像医療システム産業研究会」を開催した。2011年より毎年開催されている同研究会では,「画像医療システム産業発展に向けて」をメインテーマに各分野の専門家を招聘し,変化の激しい医療産業動向を展望し,その対応を検討している。5回目となる今回は,「精神疾患(認知症,うつ病)の予防と診断と治療」と題し,機能診断を中心に高齢化率23%を超える日本の高齢化社会において喫緊の課題となる脳疾患に焦点を当てて会が進められた。
JIRA会長の小松研一氏の挨拶に続き始まった研究会では,座長のJIRA理事である和迩秀信氏の進行の下,まず国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター長の松田博史氏が「認知症の画像診断」と題し,CT,MRI,PET,SPECTによる認知症画像診断の最前線について講演を行った。松田氏は,脳体積計測法のVBMを応用し2005年に開発した“VSRAD advance 2”について紹介した。VSRADは,脳の萎縮指標をZスコアとして,正常データベースの平均から何標準偏差分離れているかを色で表示する。これにより,一目で脳のどの部位が萎縮しているかがわかり,MRIだけでは判断を誤るような症例でも誤診を避け,アルツハイマー病の早期発見ができる。また,松田氏は最近注目されているPETイメージングとして,アミロイドPETとタウPETについての最新動向を述べた。その上で,これら2つのPETイメージングは脳疾患に対する研究開発や先制医療に大いに役立ち,認知症性疾患の鑑別に効果があるとした。
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次に,産業技術総合研究所人間情報研究部門上級主任研究員の柴田崇徳氏が登壇し,ニューロ・ロジカル・セラピー用ロボット「パロ」による非薬物療法とその科学的エビデンスについて紹介した。パロはメンタルコミットロボットと呼ばれる心理療法を目的として開発されたアザラシ型ロボット。心理療法の分野では,アニマルセラピーと呼ばれる方法が周知されているが,動物の飼育・調教にかかるリスク・コストが課題となっている。パロはこのようなアニマルセラピーの課題を解決することを目的に開発されたロボットで,国内外の介護施設に導入されている。導入施設では,徘徊などの問題行動の改善,介護者の負担軽減などの報告のほか,認知症の症状を抑制する薬剤が必要なくなったことによるコスト削減が実現したなどの報告がされている。海外では補助金の拠出や医療機器としての 承認などの実績もある。講演では海外での評価実績などを中心に,介護施設への導入事例で認知症要介護者の介護における「施設介護」「在宅介護」への効果,負担・費用軽減などの利点を紹介した。今後については,パロのエビデンスを蓄積し,医療福祉関連社会への組み込みや認知症ケアのよりいっそうの費用軽減をめざすと展望を語った。
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最後に,「うつ病の画像診断──光トポグラフィー検査(NIRS)による抑うつ状態の鑑別診断補助」として,群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学教授の福田正人氏が,うつ病診断の最新動向について述べた。精神疾患は,これまで症状が出てから診断していたので,早期発見・早期治療ができないことが課題となっていた。福田氏は,この課題を解決し早期発見・早期治療に貢献が期待されている検査法のNIRSについて紹介した。NIRSは,2014年に保険適用が拡大し,抑うつ症状の鑑別診断補助にも適用できるようになった。福田氏は,NIRSを用いた脳研究から考えられるうつ病診断への利点と課題について紹介し,自身が臨床検査への実用化に向けた準備として行ってきた活動を紹介した。さらに,脳研究の発展の歴史に言及し,今後,人間が実際に行動している時の脳の動き「リアルワールド脳機能画像」を研究していく上で,NIRSは必要な検査法になると講演を締めくくった。
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●問い合わせ先
一般社団法人 日本画像医療システム工業会
TEL 03-3816-3450
http://www.jira-net.or.jp
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