シーメンス・ジャパンが「SOMATOM Symposium 2015」を開催
2015-8-31
SSCTとDSCTの最新の臨床使用経験を紹介
シーメンス・ジャパン(株)は2015年8月29日(土),「SOMATOM Symposium 2015」を開催した。同社CTの技術と臨床応用の最前線を紹介するこのシンポジウムは,2009年にdual source CT(DSCT)をテーマにした「Definition Symposium」としてスタートし,2013年にはユーザーが撮影した画像を評価する「CT Image Contest 2013 Japanese Edition」が設けられた。さらに,昨年からsingle source CTも取り上げることとし,名称を変更。回を重ねるごとに,内容を充実させている。今回も,会場となったTKP東京ガーデンシティ品川(東京都品川区)には,多くのユーザーが来場し,席が埋まった。
開会に当たり,モデレータを務める内藤博昭氏(国立循環器病研究センター病院)が挨拶を行った。内藤氏は,2015年はシーメンスのCT事業にとって意味のある年だとし,1975年にシーメンス初のCTである「SIRETOM」が登場してから40年,2005年に世界初のDSCT「SOMATOM Definition」が発表されてから10年になると,歴史を振り返った。そして,常にCT開発の最先端を走るシーメンスのユーザーから最新の臨床経験が報告されるので,ぜひ臨床につながる情報をつかんでほしいとまとめた。
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今回のプログラムは,「CT Image Contest 2015 Japanese Edition」「Latest Stories in Single Source CT」「Latest Stories in Dual Source CT」で構成された。
まず,セッション1の「CT Image Contest 2015 Japanese Edition」では,今井 裕氏(東海大学)が座長を務めた。このコンテストは,シーメンスが掲げるコンセプト「Right Dose」に基づき,適正な線量で診断・治療に有用な情報を提供する画像を評価するもの。今回は前年の42症例を上回る48症例の応募があった。「General」「Cardio-Vascular」「Neuro」「Oncology」「Dual Energy」「Pediatric」「Emergency」「Technical」「Exceeding Expected Performance of 20-64 MSCT」の各部門から受賞者がプレゼンテーションを行った。48症例の応募の中から,最優秀賞である「Best Overall」には,谷 和紀子氏(神戸大学医学部附属病院)が選出された。
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続くセッション2「Latest Stories in Single Source CT」では,福田国彦氏(東京慈恵会医科大学),市川勝弘氏(金沢大学)が座長を務め,SSCTの最新技術の臨床応用が報告された。1題目は,堀越浩幸氏(群馬県立がんセンター)が「TwinBeam Dual Energy」をテーマに発表した。TwinBeam Dual Energyは,今年3月に国内発表された,SSCTでデュアルエナジー撮影を可能にする技術。堀越氏は,「SOMATOM Definition Edge」でのTwinBeam Dual Energyの特長を説明した上で,仮想単色X線画像のアプリケーションである“Monoenergetic Plus”や非造影のヨード画像など,デュアルエナジー撮影で得られるメリットについて,症例画像を示して解説した。
次いで2番目の演者として,高木英誠氏(仙台市立病院)が登壇。「Advanced Visualization System“syngo.via”を用いたoncology画像診断」をテーマに講演した。高木氏は,同院におけるsyngo.viaの運用方法について解説した上で,SOMATOM Definition EdgeによるMonoenergetic Plusの使用経験を報告した。さらに,syngo.viaのアプリケーションである“Lung CARE”などについても,自動解析によりストレスなく結果を得られるというメリットを紹介した。
3番目に登壇した上本賢司氏(都島放射線科クリニック)は,「Therapy Planning」と題し,放射線治療計画における「SOMATOM Definition AS Open」の使用経験を報告した。上本氏は,SOMATOM Definition AS Openと臓器の呼吸性移動量を抑えるために開発した「Air-Bag system」を組み合わせることで,体動アーチファクトのない画像が得られていると説明。放射線治療において,照射体積を低減でき,正確な線量評価も可能になると述べた。
休憩を挟んで行われた「Latest Stories in Dual Source CT」では,循環器内科医と放射線科医,それぞれの立場からDSCTの使用経験が報告された。座長は,内藤氏と平野雅春氏(東京医科大学)が務めた。最初に登壇した中森史朗氏(三重大学)は,「“SOMATOM Definition Flash” from a cardiologist's point view」と題し,循環器内科医の視点から報告した。中森氏は,三重大学医学部附属病院における心臓CTのプロトコールを示した上で,心臓MRIとの比較や糖尿病患者に対する包括的心臓CT検査での有用性について解説した。次いで,同じく循環器内科医の上野博志氏(富山大学)が登壇。「“SOMATOM Force” from a cardiologist's point view」をテーマに講演にした。富山大学附属病院ではシーメンスのハイエンドCTであるSOMATOM Forceが2015年3月から稼働し始めた。上野氏は,同装置をTAVIの術前プランニングに用いて,デバイスアクセス経路や大動脈複合体の評価を行い,合併症のリスクを低減させていると説明。さらに,低電圧撮影による造影剤量の低減などのメリットについても解説した。
3題目は,本田憲業氏(埼玉医科大学)が「“SOMATOM Definition Flash” from a radiologist's of view」をテーマに,放射線科医の視点から,DSCTの有用性を報告した。本田氏は,SOMATOM Definition Flashによる肺血流・換気イメージングとして,キセノンガス(Xe)を用いたsingle breath法での検査を解説し,換気血流比画像の検討結果を報告した。最後に登壇した高橋 哲氏(神戸大学)は,「“SOMATOM Force” from a radiologist's of view」と題して講演した。高橋氏は,高出力のX線管“VECTRON”などのSOMATOM Forceの技術的特長を紹介した上で,泌尿器疾患について,臨床シナリオを提示して,それぞれのケースにおけるSOMATOM Forceの有用性を説明した。その上で高橋氏は,同装置の能力を生かすことで,低被ばく,造影剤量の低減,ワークフローの改善を実現しつつ,診断に役立つ画像が得られるとまとめた。これら4題の講演を終えた後,ゲストスピーカーとして招かれたMedical University of South CarolinaのU. Joseph Schoepf, M.D.が講評を述べた。
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CT技術開発のトップランナーであるシーメンスの装置を用いた最新の臨床報告が取り上げられたこともあり,350人が参加。会場内は最後まで大勢の参加者が,熱心に耳を傾けていた。なお,次回は,2016年8月27日(土),今回同様TKPガーデンシティ品川を会場に行われる予定である。
●CT Image Contest 2015 Japanese Editionの受賞者
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クリニカルカテゴリ | 氏名 | 所属 | ケースタイトル |
Best Overall | 谷 和紀子 氏 | 神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門 | 70kV Dual Powerを用いた脊髄動静脈瘻の描出 |
General | 香川清澄 氏 | 神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門 | 心臓カテーテルアブレーション術前低管電圧低造影剤量CT |
Cardio-Vascular | 佐藤和宏 氏 | 東北大学病院診療技術部放射線部門 | 心臓,下肢動脈のone-stop shop imaging |
Neuro | 岡林 宏 氏 | 高知医療センター医療技術局放射線技術部 | 心不全を呈した新生児の脳動静脈奇形 |
Oncology | 加來直樹 氏 | 北九州市立医療センター放射線技術課 | 肺癌術前検査における呼吸動態撮影を利用した胸壁浸潤評価 |
Dual Energy | 住田幸寛 氏 | 津島市民病院放射線室 | 肝がんTACE治療後のリピオドール定量 |
Pediatric | 南 汐里 氏 | 金沢医科大学病院医療技術部診療放射線技術部門 | 新生児複雑心奇形 |
Emergency | 香川清澄 氏 | 神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門 | 深部静脈血栓症に対する緊急造影CT |
Technical | 和田 彬 氏 | 愛媛県立中央病院画像センター | 希釈造影併用にて肺動静脈分離+腹~下肢CTA |
Exceeding Expected Performance of 20-64MSCT |
和田貴人 氏 | 医療法人回生会宝塚病院 | 心房中隔欠損症 |
●問い合わせ先
シーメンス・ジャパン株式会社
コミュニケーション部
へルスケアマーケティングコミュニケーショングループ
TEL 03-3493-7630
http://www.healthcare.siemens.co.jp/medical-imaging