東北大学と東芝などが低コスト,高精度の日本人ゲノム解析ツール「ジャポニカアレイ」の開発を発表
2014-11-17
共同開発の成果をアピールする里見氏と田中氏
東北大学と(株)東芝は,日本人ゲノム解析ツール「ジャポニカアレイ」を開発した。このツールは,日本人のゲノム情報を低コストながら高精度に解析することができる。同社では,ゲノム研究を行う医療機関や研究機関向けにこの解析サービスを提供する。2014年11月14日(金)にJPタワー(東京都千代田区)で記者発表を行い,東北大学総長の里見 進氏,東芝代表執行役社長の田中久雄氏らが出席し,開発経緯などを説明した。
東北大学と東芝は,(独)科学技術振興機構の「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の公募に,「さりげないセンシングと日常人間ドックで実現する理想自己と家族の絆が導くモチベーション向上社会創生拠点(COI東北拠点)」が採択された。この研究開発では,ヘルスケア分野におけるビッグデータ解析を共同で行い,日本光電工業(株)も加え,デバイスや通信などの最先端技術を用いて,個人の生体情報とライフスタイル情報を基に健康管理を行うことに取り組んできた。その成果として開発されたのがジャポニカアレイである。ジャポニカアレイには,東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)が行ったゲノム解析の結果が用いられている。このゲノム解析では,東北地方の住民1000人の全ゲノム塩基配列を解読し,全ゲノムリファレンスパネルを作成した。1000人以上の全ゲノム解析は日本初であり,単独施設,単一方式では世界初だとしている。これにより1200万個以上の新規の遺伝子型を収集したという。ジャポニカアレイは,ToMMoの全ゲノムリファレンスファイルから最大限に遺伝子型の補完を行えるよう設計されており,日本人に固有な体質・疾患にかかわる責任遺伝子について大規模探索研究を行う基盤となる。将来的には1人あたりの解析を1万円台でできるようにしていくという。
発表会で挨拶に立った里見氏は,東北メディカル・メガバンクなどの経緯を説明した上で,ジャポニカアレイについて,日本人遺伝子情報を容易に解析できるツールであると述べた。また,田中氏は,ヘルスケア事業を強化する姿勢を示し,東芝ならではのイノベーションで生き生きとした社会に貢献したいと強調した。記者発表会では,東北大学理事の進藤秀夫氏が進行役を務め,里見氏,田中氏,来賓の文部科学省科学技術・学術政策局次長の岸本康夫氏が挨拶を行った。さらに,東北メディカル・メガバンク機構長の山本雅之氏が,ゲノム解析の研究成果を報告。これに続き,同大学革新的イノベーション研究機構長兼東芝ヘルスケア社ヘルスケア医療推進部ライフサイエンス部部長の高山卓三氏が,COI東北拠点の活動とジャポニカアレイの将来展開について説明した。
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