「第5回 ADCT研究会」が開催
2014-1-21
会場には全国から多勢の参加者が集まった
Area Detector CT(ADCT)装置の性能評価や臨床応用についての報告と情報交換を目的とした「第5回 ADCT研究会」が,2014年1月18日(土)に,テレピアホール(愛知県名古屋市)にて開催された。ADCT研究会(理事長:藤田保健衛生大学病院 井田義宏氏)と東芝メディカルシステムズ(株)の共催によるもので,年1回のペースで全国各地で開催されている。今回,当番世話人を県立静岡がんセンターの中屋良宏氏が務めた。
プログラムは,東芝メディカルシステムズからの情報提供,一般演題6題,基調講演,特別講演の4部で構成され,総合司会を県立静岡がんセンターの瓜倉厚志氏が務めた。
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第一部では,東芝メディカルシステムズ臨床アプリ研究開発センターの谷口 彰氏が,情報提供として「RSNA 2013(北米放射線学会)報告」を行った。初めに,同社のADCT「Aquilion ONE/ViSION Edition」が世界各国の放射線科医,診療放射線技師が参加する会員制Webサイト「AuntMinnie」にて“The Best New Radiology Device Award”を受賞したことを報告。そして,Aquilion ONE/ViSION Editionのほか,一部CT機種のソフトウエアがVer.6.0へと進化し,これに搭載される“Frontier Suite”と呼称する臨床的有用性の高い各種アプリケーションを紹介した。
第二部の一般演題では,藤田保健衛生大学の辻岡勝美氏,総合大雄会病院の日比野友也氏が座長を務め,6題の発表が行われた。
最初に札幌医科大学附属病院の平野 透氏が,「Aquilion ONEを用いたCT Perfusionについて」を講演した。Aquilion ONEによる脳 perfusion CTでは,灌流画像と血管情報を同時に取得できるようになったことから,そのバランスを考慮した管電流,再構成スライス厚の検討を紹介。さらに,2施設で検討を行った慢性期症例における解析方法の違いによる脳血流量の評価についても報告し,今後,さらに撮影条件の設定や解析方法などについて検討を行っていく必要性があると述べた。
2題目は,脳血管研究所美原記念病院の中澤将城氏が,「Whole-Brain Xe-Studyの基礎検討」を講演。局所脳血流測定として行われるXe-CT検査について,ADCTのVolume Scanを用いた基礎的検討や臨床利用について報告した。そして,再構成スライス厚2mmでのCBF解析が可能なことや,三次元体動補正,定量的な全脳の局所脳血流測定ができるといった有用性を示し,今後は被ばく低減や精度向上の検討を行っていくと締めくくった。
続いて,島根大学医学部附属病院の梶谷尊郁氏が登壇し,「整形領域(膝関節)での臨床応用」と題して,自院で行っている膝関節の4D CTについて報告した。梶谷氏は撮影条件の検討結果を示した上で,Aquilion ONEのコンソール上で作成した症例の3D画像を4D再生して供覧した。
4題目は,藤田保健衛生大学病院の小林正尚氏が,「嚥下CTの現状」をテーマに発表。同院では,ADCTのみで実施可能な嚥下CT検査の検討をAquilion ONE導入初期から行っている。小林氏は,その基礎研究の内容や,ADCT撮影により初めて知り得ることができた嚥下運動の発現機序やメカニズムについて紹介し,訓練法や治療法の開発などの臨床応用の可能性を示した。
次に,県立静岡がんセンターの川嶋一平氏が「IVR-CTでの臨床応用」と題して講演した。IVRにおいてADCTは大きなポテンシャルを持つと述べた川嶋氏は,同院での症例を供覧し,その有用性を説明。安全なCTガイド下の手技施行や被ばく低減が可能であることを説明した。
一般演題の最後は,国立がん研究センター東病院の有路貴樹氏による「放射線治療での臨床応用」が行われた。放射線治療の現状について概説した有路氏は,呼吸性移動のある肺がんの放射線治療を取り上げ,同院におけるADCTの使用方法を紹介。ADCTにより適応症例の広がりや,より安全な照射が期待できると述べた。
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第三部の基調講演を前に,「ADCT研究会理事長から報告」として井田氏が登壇し,ADCT研究会の役割や,活動内容を報告した。時間が経過するにつれ,研究会の役割も変化してきているとし,今後はADCT研究者への協力も行っていくなど,活動の幅を広げたいと述べた。
基調講演は,中屋氏が座長を務め,石心会川崎幸病院の石田和史氏が「ERにおけるAquilion ONE/ViSION Editionの活用法 ―放射線技師が知っておくテクニックー」を講演した。石田氏はまず,頭部CT検査についてコンベンショナル,ヘリカル,ボリュームのそれぞれの画像や性能評価結果を示し,メリット・デメリットを把握し使い分けることでERに有用な画像を提供できるとした。また体幹部検査では,物理評価,視覚評価の結果から,mAsや時間を調整し,撮影を工夫することが必要であると指摘。さらに,冠動脈自動解析について症例の検討結果を提示し,ERで使用する有用性が示唆されたことを述べた。そして,実際の症例画像を示しながらERにおけるADCTの有用性を紹介した石田氏は,発想を転換し撮影方法を工夫することで適応症例を広げられることを強調し,参加者にエールを送った。
プログラムの最後となる第四部の特別講演では,座長を井田氏が務め,藤田保健衛生大学医学部先端画像診断共同研究講座の片田和広氏が「ADCTの最近の話題」と題して講演した。Aquilion ONEの提唱者である片田氏は,初めに,2007年の発売以後も進化を続けるAquilion ONEの最新バージョンのアプリケーション“Frontier Suite”の画像を供覧し,現時点での到達点を紹介。なかでも,動態・機能検査が可能になったことで,それまで画像化ができずに生理学的な定量化できなった分野に革新的な進歩をもたらし,臨床に多大なメリットを提供できるようになりつつあることを高く評価した。そして,Aquilion ONEの活用方法のヒントは至る所にあり,使いこなすための努力を続けることが大切であるとした。また,RSNA 2013においてGE社がADCT「Revolution CT」を発表したことで,ADCTが次世代CTのトレンドであることが証明され,同時に東芝社のCTにおける先見性・先進性を証明することになったと述べた。他メーカーの追従は必至と考えられるとし,RSNA 2013で発表された各社のCTの動向を紹介しながら,CTの将来を展望した。
研究会の終わりに,次回当番世話人である滋賀医科大学附属病院の牛尾哲敏氏が挨拶を行った。第6回ADCT研究会は,2015年1月17日(土)に福岡市天神にて開催予定となっている。会場外のホワイエでは,東芝メディカルシステムズをはじめ協賛企業の(株)AZEやコニカミノルタヘルスケア(株),ザイオソフト(株),(株)根本杏林堂などが展示を行った。
今回の参加者は245名に上り,今後の研究会のさらなる発展が期待される。
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●機器展示
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●問い合わせ先
ADCT研究会 事務局
(藤田保健衛生大学病院放射線部内)
http://adct.kenkyuukai.jp
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