会場となった名古屋国際会議場

第49回日本医学放射線学会秋季臨床大会が，2013年10月12日（土）〜14日（月）の3日間，名古屋国際会議場（愛知県名古屋市）で開催された。大会長は愛知医科大学医学部放射線医学講座教授の石口恒男氏。大会テーマとして，「No Radiology, No Life　〜奏でよう放射線医学〜」が掲げられた。「No Radiology, No Life」について，石口氏は，医療における放射線医学は重要な役割を果たして人々に健康的な生活という恩恵をもたらしており，放射線科医も患者が元気になることで自らの気持ちを豊かにするという思いを込めたとしている。また，患者とその家族，スタッフ，他の医療機関，地域とのコミュニケーションや連携を音楽のアンサンブルにたとえて「奏でよう放射線医学」というテーマをつけたという。

大会の2日目，13日には第1会場において，特別企画と特別講演が行われた。特別企画は愛知県出身の童話作家，新美南吉が今年生誕100周年を迎えたことにちなんだもの。石口氏を座長に，絵本の挿絵を担当した絵本作家・イラストレーターの黒井　健氏が「『ごんぎつね』との出会い」をテーマに講演した。黒井氏は「手袋を買いに」や「ごんぎつね」の挿絵にまつわるエピソードを紹介した上で，映像版の「ごんぎつね」を上映した。また，特別講演では，京都医療科学大学の遠藤啓吾氏が座長を務め，Radiation Protection at European Society of RadiologyのDirectorであるMadan Rehani氏が登壇した。講演のテーマは，「Current Challenges in Medical Radiation Protection」であった。

大会長：石口恒男 氏 （愛知医科大学）

黒井　健 氏 （絵本作家・イラストレーター）

Madan Rehani 氏 （ESR）

このほか，期間中はシンポジウムが4セッション，パネルディスカッションが2セッション設けられた。また，第26回電子情報研究会，第27回胸部放射線研究会，第26回頭頸部放射線研究会，第23回日本救急放射線研究会が併催された。

このうち，13日には，シンポジウム2「医療におけるITセキュリティー：遠隔読影，地域連携において標的型攻撃を阻止できるか？」が行われた。座長は愛知医科大学の深津　博氏，順天堂大学の桑鶴良平氏。まず，「サイバー攻撃の現状と警察の取り組み」をテーマに愛知県警察本部公安第一課サーバー攻撃特別捜査隊の林　茂広氏が発表した。林氏は，サイバーテロと警察の体制やテロ対策，サイバーインテリジェンス対策を解説。さらに，電子カルテや遠隔医療システムなどがサイバーテロの対象となるとして米国食品医薬品局（FDA）の勧告を紹介した。また，OSやアプリケーションのアップデート，添付ファイルを安易に開かないといった情報セキュリティ対策を説明した。続いて，（株）シマンテックの広瀬　努氏が「マルウェア感染の手口と医療システムに対する脅威の解説」をテーマに発表した。広瀬氏は，現在のウイルス対策ソフトウエアの多くは時代遅れで感染を防ぐことができないとして，セキュリティ製品を選ぶには，脆弱性対策と挙動分析エンジンが重要であると述べた。

次いで登壇した（株）サイバーディフェンス研究所の名和利男氏は，「最近のサイバー攻撃の実態と医療分野への影響について」と題して，最近の攻撃手法を解説した上で，医療機関においても，他分野で発生している事例をよく把握する必要があると説明した。さらに，デジタル・フォレンジック研究所の舟橋　信氏は，「重要インフラ，特に医療分野における情報流出及びサイバー攻撃の現状と対策」をテーマに，情報流出の統計データや事例を示した。最後に「大学病院におけるIT security確保への取り組み—電子カルテ，地域連携，遠隔読影を含めて」と題して発表した深津氏は，来年5月に稼働を予定している同大学病院の医療情報システムを紹介。医師や学生の持ち込みPC，地域連携での開業医からのアクセスなどによるウイルス感染を考慮した対策として，軍事レベルの強度を持つ統合型セキュリティソリューションであるSINA（Secure Inter-Network Architecture）の導入を検討していると述べた。

なお，次の第50回日本医学放射線学会秋季臨床大会は，2014年9月26日（金）〜28日（日）の日程で，兵庫県神戸市での開催を予定している。

シンポジウム2の総合討論

学術・教育のポスター展示

●ポスター展示と併設された企業展示