第5回 3D PACS研究会,CTCからクラウドサービスまで多様な演題で講演と展示を展開
2012-12-11
会場風景
第5回 3D PACS研究会が,2012年12月9日(日),東京都品川区のキヤノンマーケティングジャパン品川本社で開催された。当番世話人は新潟大学医歯学総合病院の金沢勉氏,共催は,キヤノンマーケティングジャパン(株)とエーザイ(株)。3D PACS研究会(代表世話人:国立病院機構仙台医療センター・立石敏樹)は,医用画像ワークステーションや画像処理技術,医療情報システムの運用などの研究や情報共有などを目的として設立され,2008年に第1回の研究会を開催,今年は5回目の節目の開催となった。
開会の挨拶で金沢氏は「5年間で参加者,展示企業も増え,着実に発展してきた。今回の研究会も多岐にわたるプログラムとなったが,ひとつの枠にとらわれずにオープンな交流,議論を期待したい」と述べた。全体の司会を神戸赤十字病院の松村光章氏が務めてプログラムが行われたが,“CTコロノグラフィ”,“災害・計画停電”,“医療情報管理”,“クラウド”とバラエティに富んだ内容となった。
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午前の最初のプログラムは,立石敏樹氏を座長として,エーザイ共催によるモーニングセミナー「CTコロノグラフィについて」が行われた。講演したエーザイ・ジャパンの村上聡氏は,2012年4月に保険収載されたCTコロノグラフィの現状について概説した。続いて,最初のセッションとして,立石氏と滋賀医科大学医学部附属病院の牛尾哲敏氏を座長に 「CTコロノグラフィにおけるワークステーション活用方法」が行われた。最初に,「大腸CT検査前処置(タギング・ノンタギング)」について伏見製薬所開 発推進室の逢坂和昌氏が講演した。逢坂氏は,ノンタギングのブラウン変法やゴライテリー法,残渣標識法である“Fecal Tagging”などを前処置の方法を紹介し,CTCでは前処置が重要だが,今後の一層の普及のためには前処置の標準化とCTC用バリウムの早期の市販が望まれると述べた。続いて,済生会川口総合病院の城處洋輔氏が「CT ColonographyにおけるCADの精度について」を講演し,同院でテラリコン社のワークステーション「iNtuition」でCADを研究用として利用した結果について報告した。メディックサイト社のCAD機能を利用したもので,自作ファントムで病変型,大きさ,撮影線量などで比較検討を行い,隆起病変の検出には効果があることを紹介した。最後の演題は「3DPACSによる最適なCTC診断環境の構築」について,テラリコンの行方正紀氏が講演した。CTCの診断スタイルを,1)画像診断専門医が画像処理から診断まですべてを行う,2)画像診断専門医,消化器専門医,放射線技師が共同で行う,3) 担当技師が画像処理を実施し,画像診断専門医あるいは消化器専門医がWSやPACSビューワで診断する,の3つのパターンで具体的な施設での運用を紹介した。
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午前のもうひとつのセッションは,「災害・計画停電」で国立病院機構災害医療センターの武田聡司氏が座長を務め,最初に神戸赤十字病院の中田正明氏が「災害時に必要なネットワークとは」と題して講演した。中田氏は,日本放射線技術学会の研究班で行った東日本大震災の被害地域(石巻市)の調査報告などを中心に,災害時に必要な医用画像・情報ネットワークと人的なネットワークの重要性について述べ,災害を想定した普段からの訓練やBCPを考えた災害時にもシステムを停止させない対策が必要だとした。続いて,「医用画像表示モニタにおけるLEDバックライトの実力」について,ナナオ営業1部メディカル課の小川滋久氏が講演した。
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ランチョンセミナーは,新潟労災病院の岩崎友也氏を座長として熊本大学の池田龍二氏が,「造影CT検査サポートアプリiCECT」についてプレゼンテーションした。iCECTはiOS用に開発されたアプリで,イオメロン添付文書の参照,eGFRの算出,注入条件の算出,TDCの比較などが可能であり,近日公開の予定とのことだ。
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午後のセッションは,名古屋大学医学部保健学科の津坂昌利氏を座長として「医療情報管理」をテーマに,豊橋市民病院の原瀬正敏氏による「医療情報システムにおけるガイドラインについて」からスタートした。原瀬氏は,医療情報システムの安全管理に関するガイドラインについて,その概要と現場での具体的な運用と注意点について概説した。
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最後のプログラムは, シンポジウム「クラウド」として,金沢氏と池田氏を座長として4題の講演が行われた。最初に「医療情報クラウドサービス『NOBORI』」をテクマトリックス医療システム事業部開発部の藤原浩太氏が講演した。NOBORIは,画像データを暗号化して分割しクラウドで管理する「秘密分散」方式を採用し,SSLによるデータ転送,東西2カ所のデータセンターでの四重管理などセキュリティとバックアップの体制をとる。また,院内は512GBのSSDを搭載した専用アプライアンスである“NOBORIーCUBE”で構成し,Smart Retrieve機能などで速度と操作性を確保している。2012年10月にサービスを開始しており,現在4施設で稼働中とのことだ。
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続いてケアストリームヘルスHCIS事業統括部販売促進部の河合秀紀氏が「ケアストリームが提供するVueクラウドサービス」を発表した。Vueクラウドサービスは,世界では10クラウド,320施設,8000万検査(約2PB)の規模で運用されており,アメリカのカイザーパーマネンテではケアストリームのVNA(Vendor Neutral Archive)技術によってベンダーフリーのシステムを構築している。日本では,2010年7月からサービスを提供しており,約30施設で運用中で,グループ病院間の画像連携,離島の遠隔画像診断サービス,大学病院のプライベートクラウドの運用などを提供している。次にKDDIソリューション営業本部の信岡祥隆氏が「クラウド型3D医用画像ソリューション」について講演した。信岡氏は,KDDIが提供するクラウドサービスについて,マルチデバイス,マルチネットワーク,マルチユースの3M戦略でサービスを展開していることを紹介し,2012年8月からテラリコンと共同で提供を開始したクラウド型「リアルタイム3D医用画像ソリューション」のサービス内容や特長について解説した。セッションの最後の演題として,「クラウド型ワークステーションのメリットと実際」について,済生会川口総合病院の富田博信氏が発表した。同院では,2011年12月からテラリコンのクラウド型ワークステーションを導入して実証実験を行ったが,1500枚の送信に約150秒と作成業務に問題ないレベルのスピードが確保されており,利用方法として夜間の当直時間帯における外部からの3D作成や読影医による画像確認,関連施設との3D画像の共有などが想定される。CTCや3Dフュージョンの作成について,通常のワークステーションと同じ操作感で可能であるとし,今後は運用体制などを検討した上で迅速で合理的な画像診断を進めていきたいと述べた。セッションの総括では,所有から利用へというクラウドの考え方によって,今後はハードウエアの寿命などに縛られないサービスの利用が可能になるが,時間外の3D作成への対応など運用について組織 全体でコンセンサスを作る必要があることや,スピードや帯域がどこまで保証されるかなどが話題となった。
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最後に,津坂氏が閉会挨拶を述べ,次回の研究会を2013年12月22日(日)に,滋賀医科大学医学部附属病院の牛尾哲敏氏を当番世話人として開催することなどを発表して盛会のうちに終了した。
【機器展示出展社】
インフォコム/エーザイ/キヤノンマーケティングジャパン/キヤノンライフケアソリューションズ/ケアストリームヘルス/ KDDI/テクマトリックス/テラリコン/ナナオ/パナソニックメディカル/フクダ電子/伏見製薬/メディカルクリエイト/ メドラッド/リマージュ(五十音順)
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●問い合わせ先
3D PACS研究会
http://www.3d-pacs.com
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