RSNA2024 バイエル - インジェクタ
マルチペーシェントユースの「MEDRAD Centargo CTインジェクションシステム」がFDAの認可を取得,スループット向上などによる患者への貢献をコンセプトに米国市場で展開
2024-12-4
FDAの認可を取得したCentargoを紹介
Bayer(バイエル)のマルチペーシェントユースCT用造影剤自動注入装置「MEDRAD Centargo CTインジェクションシステム」(以下,Centargo)は,検査ごとの造影剤や生理食塩水の充填が不要でエアマネジメントを自動化するなど,従来のシリンジを使用した造影剤注入装置とコンセプトがまったく異なるソリューションである。日本では2023年10月に発売され,今回,RSNA直前の2024年11月7日に米国食品医薬品局(FDA)の510(k)認可を取得した。Centargoの特長や今後の米国市場での展開について,CentargoのGlobal Product Team Leaderを務めるJerry Orban氏にインタビューした。
—Centargoはどのようなシステムでしょうか。
Centargoは2020年に欧州での販売が可能になるCEマークを取得後,全世界の49の市場で販売され,これまでに約700万人の患者の検査をサポートしてきました。Centargoは,デイセット(専用の消耗品)で毎日のセットアップを2分以内に完了でき,準備時間を最小限に抑えるように設計されています。また,スナップイン式の患者ラインは挿入時に自動的にプライミングされ,20秒以内に次の患者の準備が整います。さらに,データ入力を合理化する本体一体型のバーコードリーダーは,Auto Documentationソフトウエア(Smart Protocols)と組み合わせることで,造影剤と注入結果の詳細を容易に追跡およびアクセスできます。この革新的な造影剤注入システムはピストンベースの技術に基づいており,デュアルフロー(造影剤と生理食塩水の同時注入)などの機能が可能になり,最も要求の厳しいプロトコールに対しても,より柔軟に対応できます。
—マルチペーシェントユースの装置に切り替えることで,施設にとってどのようなメリットが生じますか。
日本と同様に,米国はこれまで造影CTでは造影剤やシリンジを検査ごとに準備し,検査終了後は残液や使用したシリンジを廃棄していました。また,その作業の多くを診療放射線技師が担ってきました。しかし現在,検査の増加に対して診療放射線技師は不足しており,多くの施設では技師が一人で患者の入室後検査終了から退室までのすべてに対応せざるを得ない状況になっています。こうした環境の中,検査効率を下げず,安全かつ適正な造影検査を支援するのがCentargoです。
Centargoにより,従来は手動で行っていたプロセスが自動化されることで,診療放射線技師は患者のケアに集中でき,特に高スループットの環境で医療提供者の作業や管理の負担が軽減されます。さらに,バイエルのイメージングおよびワークフローソリューションのポートフォリオと統合することで,造影剤の使用を最適化し,モダリティワークリストや撮影装置への接続が可能になります。
—今回,FDAの510(k)認可を取得しましたが,米国市場ではどのような展開が期待されますか。
近年,低管電圧やdual energy,フォトンカウンティングなど,撮影装置の技術が進化を遂げています。それに伴い,装置のスペックや患者のプロファイルに応じて,より柔軟に造影剤の投与量や投与方法を調整していくことが必要とされています。Centargoを先行して発売したオーストラリアも,米国と同様に造影剤やシリンジを単回使用していましたが,Centargoは作業効率とコスト面から高く評価されています。また,カナダではSunnybrook Health Sciences Centreでの導入以降の2年間で約150台導入されていますが,スループットの向上により,より多くの検査が可能になることよりも,医療従事者が患者さんと接する時間を確保できるという点で高評価を得ています。
これまで米国にも複数の患者に連続投与できるインジェクタはありましたが,12月上旬のCentargo発売以降,特に1日20例以上の検査を実施している施設では,これまでの消耗品の単回使用を前提としたインジェクタからの切り替えが急速に進むと予想しています。近年,世界的に造影検査施行数が増加し,ヨードを各国が取り合う状況に至っています。そうした状況からも,使用しなかった造影剤を廃棄する単回使用のインジェクションシステムよりも,Centargoは時代の要望に合った製品であると考えています。実際に,革新的でユーザーフレンドリーな機能は,2020年に国際的なプロダクトデザイン賞であるRed Dot Design賞を受賞したほか,米国への導入にあたり,デイセットの包装に簡易的なソフトパッケージを採用し,廃棄物を削減しています。また,米国初の導入施設では,リモートサポート機能「Virtualcare」とも連携する予定で,より安全な運用が期待できます。
—今後の放射線診断領域でのバイエルの展望を教えてください。
当社は米国のインジェクタ市場で約8割のシェアを占めていますが,Centargo発売後の具体的な数値目標は特に掲げていません。検査のワークフロー向上により医療現場で評価が得られれば,自然に導入施設が増加すると考えています。なお,顧客のニーズに対応できるよう,シリンジ型インジェクタの販売も継続します。画像診断の需要が高まる中,診療放射線技師は最高の安全基準を維持しながら,より迅速かつ効率的に作業することが求められています。バイエルの技術進歩と革新的な設計は,これらのニーズに対応するとともに,さらなる自動化とワークフローの効率化を組み込んでいきます。