ITEM2021 バリアンメディカルシステムズ ブースレポート
“Intelligent Cancer Care”をテーマに,適応放射線治療のトータルソリューション「ETHOS」などの新製品を中心に展示
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2021-5-17
バリアンメディカルシステムズブース
バリアンメディカルシステムズ(以下,バリアン)はこれまで,“A world without fear of cancer(がんの脅威に負けない世界)”というグローバルビジョンの下,その実現に向けたさまざまな取り組みや技術開発を行ってきた。さらに,今回のITEMでは,このビジョンを達成するためのスローガンとして“Intelligent Cancer Care”をブーステーマに掲げた。放射線治療装置「Halcyon」のガントリデザインをイメージした六角形のブースでは,同社のIntelligentな製品をつないでがん医療に貢献することが表現されている。その代表として,ブース中央には,今年3月18日に薬機法承認を取得した適応放射線治療(adaptive radiotherapy)のトータルソリューション「ETHOS」が展示された。また,このほかの新製品として,2020年9月に薬機法承認を取得した「BRAVOS」が展示されたほか,Halcyonおよび放射線治療計画システム「Eclipse」のバージョンアップに伴う機能強化などが紹介された。
なお,ITEM 2021前夜の4月15日(木)に,Siemens Healthineersによるバリアンの株式取得に伴う最終手続きが完了したことが発表された。ITEM初日の16日(金)には,バリアンブースにおいて,シーメンスヘルスケア(株)代表取締役社長の森 秀顕氏とバリアン専務執行役員の福島権一氏の立ち会いの下,除幕式が行われた。ブース前面上部を覆っていた幕の下からは,「varian」のロゴの下に「A Siemens Healthineers Company」の文字が現れ,両社の社員から大きな拍手が沸き起こった。
●人工知能(AI)の活用により圧倒的な効率化が図られた適応放射線治療のトータルソリューション「ETHOS」
ETHOSは,AIを取り入れて効率的な適応放射線治療を提供するトータルソリューション。放射線治療装置のHalcyonをベースに,治療計画を行うコンソールやマネージメントシステムなどで構成されている。放射線治療は多くの場合,数日から数週間にわたって行われるため,その間に腫瘍の位置や形状が変化する。適応放射線治療は,こうした変化に合わせて放射線治療計画を再計画し,患者ごとに最適化を図る手法であるが,再計画には長い時間と労力を要することが課題となっている。そこで,ETHOSでは,コンソールにAIを用いて作成した計算アルゴリズムとGPUベースのインタラクティブオプティマイザーを搭載し,日々の位置合わせに用いるCBCTデータと治療計画のテンプレートを活用することで,強度変調放射線治療(IMRT)や強度変調回転放射線治療(VMAT)の治療計画をコンソール上で自動作成することが可能となった。これにより,日々の放射線治療の中で患者がカウチ上に寝た状態のまま,患者のコーンビームCT(CBCT)から再治療計画,治療実施までを行う,Adaptive IntelligenceなワークフローによるETHOS Therapyを実現している。世界に先駆けてETHOS Therapyが行われたデンマークの施設からの報告によると,毎回の位置決め画像を用いて患者がカウチ上に寝た状態のまま,適応放射線治療が15〜30分で実施されていることが紹介された。なお,現在Halcyonが稼働している施設では,専用ハードウエアを追加することでETHOSへのアップグレードが可能となっている。
また,Halcyonについては,ソフトウエアのバージョンが3.0に上がり,CBCTの機能が強化されたことが紹介された。長軸方向の撮影範囲が,ver. 2.0では24.5cmであったが,ver. 3.0では画像をつなぎ合わせることで38.5cmまで拡大した。また,Eclipse 16.1の導入により最大照射野も36cmから同じく38.5cmとなり,より広い照射野への対応が可能となったことで,広範囲の撮影を必要とするさまざまな領域において使い勝手が向上し,治療時間の短縮とより高精度な治療に貢献することが期待される。
●アプリケータが追加され,さらなる効率化が図られた小線源治療装置「BRAVOS」
2020年9月に薬機法承認されたアフターローダーシステムであるBRAVOSは,従来の「VariSource iX」からデザインや機能が一新され,アプリケータの種類も追加された。Eclipseや放射線治療情報システム「ARIA OIS」,放射線治療装置「TrueBeam」などの同社製品との親和性が高く,小線源治療から外照射に至るまでの一連の治療を包括的に提供することが可能となる。リニューアルされた“CamScale位置確認システム”によって,操作者は遠隔操作によりソースケーブルとダーミーワイヤの位置確認や再校正を実施できるほか,自動計測システムにより体内におけるアプリケータの針先の位置を自動で計測できる。また,近年,小線源治療においては,アプリケータを患者に挿入した状態でCTスキャン,治療計画,照射を行う画像誘導密封小線源治療(IGBT)が主流になりつつあるが,一方で治療全体の時間が長引き,患者の苦痛が大きくなるケースもありうる。シームレスな治療を提供するBRAVOSにおいては,Eclipseと統合した“BrachyVision”により小線源治療の計画立案が可能であり,新たに加わった新機能を用いてより正確に,短時間で治療を実施することが可能となった。
●放射線治療計画システム「Eclipse」の新バージョンではGPUを強化
Eclipseでは,バージョンが15.6から16.1に上がったことが紹介された。ハードウエアにおいてはGPUが強化され,コンベンショナルな放射線治療やIMRTの治療計画に加え,VMATの治療計画にも使用可能となった。これにより,最適化のための時間が圧倒的に高速化されている。また,ソフトウエアにおいては,MCO(Multi-Criteria Optimization)という治療計画の最適化のためのグラフィックユーザーインターフェイスが新しくなり,より直感的な操作が可能となった。MCOでは,スライドバーを用いて目標線量を照射したい部位と線量を落としたいリスク臓器(OAR)に対する線量制約のバランスを取ることが,視覚的にわかりやすく簡単に行えるため,治療計画時間の短縮に貢献する。
さらに,小線源治療用の治療計画モジュールが更新され,計算の高速化が図られたほか,さまざまな処理を同時並行で行えるようになった。これにより,非常にシームレスに,簡便かつ精度の高い治療計画を短時間で作成できるような最適化が図られた。
●患者QAのための包括的なプラットフォーム「Mobius3D」とマシンQAのための“DoseLab”を紹介
バリアンは2018年,放射線治療における品質保証(QA)ソフトウエアの開発企業であるMobius Medical Systemsを買収し,同社のシステム全体への統合を進めてきたが,今回のITEMでは,患者QAのための包括的なプラットフォームであるMobius3Dと,放射線治療装置のQAを行う“DoseLab”が紹介された。
Mobius3D は1台のMobiusサーバで最大10台の放射線治療装置と2万人以上の患者データの保存が可能である。Mobius QAプラットフォームは,マシンQA(DoseLab),3D治療計画のQA,IMRT / VAMTおよび日常治療のQA,CBCTのQAなど6層のエラー検出機能を備えており,患者の治療全般にわたる一連の流れを包括的にカバーできる製品となっている。治療計画情報はDICOM-RTを介して受診し,Webインターフェイスで解析結果を参照可能。従来,検証作業には時間がかかるほか,ヒューマンエラーなども課題であったが,Mobius3Dでは放射線治療計画装置からデータを転送しておくとサーバで自動処理が行われるため,QA担当者は結果をWebベースで確認するだけですみ,きわめて効率的である。なお,DoseLabは,Windows上でスタンドアローンモジュールとして使用可能なほか,Mobius3D内のモジュールとしても自動画像解析を行うことができる。
●お問い合わせ先
社名:株式会社 バリアン メディカル システムズ
住所:〒103-0026 東京都中央区日本橋兜町5番1号
TEL:03-4486-5020
URL:https://varian.com/ja