SyntheticMRブース

頭部MRIのマルチコントラスト画像作成，カラーマップなどの定量評価を行うワークステーション「SyMRI NEURO」を手がけるSyntheticMRは，今回初めてITEMに出展した。同社は2007年，スウェーデン有数の産業都市で，世界的なPACSメーカーであるSectra社が本拠を置くリンシェーピング市に設立された。リンシェーピング市やSectra社によって設置されたCenter for Medical Image Science and Visualization（CMIV）から生まれた企業である。
SyMRI NEUROは，MRIメーカーとのパートナーシップに基づき世界各国で展開されており，日本では2020年に薬機法の承認を得て販売を開始。現在，国内では数施設で稼働しており，全世界では約1500施設が導入しているという。SyntheticMRは2014年からGE社にSyMRI NEUROの技術を提供しており，GE社では“MAGiC”の技術名で展開している。また，2015年にフィリップス社，2016年にシーメンス社と提携している。このほか，Sectra社とも提携して同社のPACSから利用できる。
SyMRI NEUROでマルチコントラスト強調画像やマッピングなどを行うためには，multi delay multi echo（MDME）というシーケンスで撮像することとなる。このシーケンスをMRIに組み込むことで，SyMRI NEUROを利用可能となる。

「より速く，より正確に」が「SyMRI NEURO」セールスポイント

●頭部MRIにおいて1回の撮像で9種類のコントラスト強調画像を取得可能

MDMEを用いることで，SyMRI NEUROでは1回約6分の撮像で，9種類のコントラスト強調画像を取得できる。9種類の画像は，T1WI，T2WI，T1W FLAIR，T2W FLAIR，PDWI，T2W STIR，PDW STIR，double IR，PSIR。これにより，大幅に撮像時間を短縮でき，検査のスループットが向上する。また，複数回撮像を行うと，被検者の体動によって位置ズレが生じるが，それを回避できる。撮像時間の短縮は，被検者の負担軽減にもつながる。特に，小児や高齢者など長時間の静止が困難な被検者の検査においては有用である。さらに，撮像後にもTR，TE，TIのパラメータを調整でき，コントラストの変更が可能である。

「SyMRI NEURO」で取得可能なマルチコントラスト強調画像

●T1，T2，PDの各マッピング画像も同時に取得

MDMEでは，1回で9種類のコントラスト強調画像を撮像できるだけでなく，同時に組織の定量値を計測してT1（R1）値，T2（R2）値，PDも得られる。SyMRI NEUROでは，これらの値から定量マップを作成できる。これによりMRI検査の効率化を図れる。また，ROIを設定して，特定の領域の定量値や定量マップを表示できるほか，CTのHU値と比較し組織特性の評価も行える。

各種マッピング画像を一度に同時取得できる「SyMRI NEURO」

●白質などの容積，組織区分などの定量評価が可能

SyMRI NEUROでは，白質や灰白質，脳脊髄液の容積，組織区分を数値化しカラーマップや表にして，形態評価だけでなく定量評価も行えるのが特長である。また，ミエリン量を算出して，カラーマップ，表で示すことにより，小児の脳発達診断や多発性硬化症など神経変性疾患の診断に役立てることができる。また，計測された容積やミエリン量などを基に，脳萎縮の進行や腫瘍の治療効果の経時的な評価にも用いることが可能だ。

カラーマップと表でミエリン量や組織の定量評価可能

●3D撮像や骨軟部領域への適応にも期待

現時点で，MDMEは2D撮像でデータを取得しているが，今後は3D撮像でデータを取得できるように開発を進めている。3D撮像が可能になることで，FLAIR画像で生じやすいアーチファクトを抑えることが可能になると期待される。また，第106回北米放射線学会（RSNA 2020）では，骨軟部領域に適応を拡大したことを発表した。海外では2021年6月から販売が開始される予定である。