日立製作所,令和元年 春の褒章において平本和夫氏が紫綬褒章を受章

2019-5-21

富士フイルム


(株)日立製作所(以下,日立)は,令和元年 春の褒章において,研究開発グループ 技術顧問 平本和夫氏が紫綬褒章を受章することを発表した。

紫綬褒章は,科学技術分野における発明・発見や,学術およびスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた個人に対して与えられる褒章。平本氏は,高周波出射技術を用いた革新的な粒子線がん治療装置を開発し,実用化することで,治療に伴う痛みが軽減され,社会生活と治療の両立に寄与した業績が高く評価された。高周波出射技術では,粒子線の出射・停止を高速化することで,呼吸で動くがん細胞にあわせて粒子線を的確に照射できる呼吸同期照射と,粒子線の位置変化を縮小することで,がん患部の形状に合わせて細径の粒子線を精密に照射できるスキャニング照射を可能とした。

●平本和夫氏のコメント
このたびは,紫綬褒章という栄誉ある褒章をいただき,大変光栄に思い,心より感謝申し上げます。評価いただいた粒子線がん治療装置の開発にはさまざまな困難が伴い,多くの失敗を経験しましたが,周囲の支えと,一人でも多くのがん患者を救いたいという想いにより,実用化することができました。受章を機に,より多くの方に粒子線がん治療装置を知っていただくとともに,一人でも多くのがんに苦しむ方が救われるよう,これからも精進していきます。

●高周波出射技術を用いた粒子線がん治療装置について
粒子線がん治療は,放射線によるがん治療の一つであり,陽子や炭素などの粒子線をシンクロトロン加速器*1(以下,加速器)で光速の約60%に加速して,がんに照射する治療方法。従来の装置では,電磁石の電流を変化させて加速器内を周回する粒子線の出射の制御をしていたが,粒子線の出射・停止切り替えに時間がかかることで治療時間が長引いてしまう,狙った位置に正確に照射できないという課題があった。電磁石の電流を変えずに高周波電界*2を利用することで,これらの課題を解決し,治療時に正常な細胞の損傷を軽減するとともに,短時間の治療で患者の負担を軽減することが可能になった。
高周波出射技術は,平成16年度に公益社団法人発明協会から全国発明表彰 特許庁長官賞を受賞し,平成25年度には文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞している。

*1 シンクロトロン加速器:電気を帯びた粒子を周回させる磁場強度を増加させながら,粒子を加速させる装置。
*2 高周波電界:二つの電極間に,正と負の電気が繰り返し変化する交流電圧を加えて,発生させる電界。磁場を発生させる電磁石の電流を一定に設定することが可能。

 

●問い合わせ先
(株)日立製作所 研究開発グループ
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