日本メドトロニック,血管外に留置する植込み型除細動器「Aurora EV ICD™ MRI デバイス」「Epsila™ EV MRIリード」の薬事承認を取得
2024-10-25
日本メドトロニック(株)は,心室性頻脈性不整脈の治療に用いられる「Aurora EV ICD™ MRI デバイス」(以下,Aurora EV ICD MRI デバイス)「Epsila EV™ MRI リード」(以下,Epsila EV MRI リード)の薬事承認を2024年10月22日に取得した。今後,保険診療下で治療を提供できるよう保険適用に向けた手続きを開始していく。
心臓の電気的系統に異常が生じ,規則正しい心臓の動きや脈拍が乱れてしまう状態を不整脈という。不整脈の中でも特に心室細動は,心臓がリズミカルに拍動できなくなり,心室の筋肉が不規則に興奮する状態で,心臓のポンプ機能が停止し,血液の流れが止まる。心臓のポンプ機能が停止してから3~5秒でめまいが起こり,5~15秒で意識を失い,3~5分続くと脳死に至る。心室細動は自然に回復しないため,電気ショックで治療する。また,1分間に100回以上の拍動が3拍以上続く状態を心室頻拍と呼ぶ。この発作が起こると,心臓がポンプ機能を果たせず,脳への血流が減少し,めまいや失神を引き起こし,心不全の原因となることがある。心室頻拍が続くと,心室細動に移行する場合もある。このような不整脈での突然死を防ぐために,本邦では,既に致死性不整脈を経験された患者,今後そのような不整脈が起こる可能性が高い低心機能,または遺伝性の不整脈が起こりそうな患者に対して年間で約4,000台強の植込み型除細動器が新規に植込みされている。
植込み型除細動器は体内に植込まれて,突然起こった心室細動や心室頻拍を自動的に検知し,電気治療を行って心臓の動きを正常に戻すもの。数センチ大の植込み型除細動器本体と,それにつながるリード線からできている。今回製造販売承認を取得したAurora EV ICDは,胸骨下にICDリードを留置するこれまでにない画期的なシステムで,血管内にリードを留置する必要がないため,従来の経静脈ICDと比べて低侵襲な植込み機器。本製品は,従来の経静脈ICDと同様のサイズ,形状,電池寿命を持つ。血管外に留置する植込み型除細動器として,唯一,抗頻拍ペーシング(ATP)を用いて致死性頻脈性不整脈の治療を行い,一時的な徐脈時にも心休止バックアップペーシング治療を提供する。
国立循環器病研究センター不整脈科の部長であり,EV ICD Japan Studyの責任医師の草野 研吾氏は,「Aurora EV ICD MRI デバイスとEpsila EV MRI リード(以下,Aurora EV ICD MRI システム)は,従来の経静脈ICDと同じサイズでありながら,血管外に留置することで血管内の合併症リスクを低減します。更には,ATP治療を送出できることにより,ショック治療を回避しながら致死性不整脈を効果的に治療できる点も大きな利点です。これにより,患者さんの負担やQOLの低下を防ぐことができ,ICDデバイスを必要とする患者さんに大きな恩恵をもたらすことが期待されます。」と述べている。
カーディアックリズムマネジメント・バイスプレジデントの芳賀 聡氏は,次のように述べている。「今年で設立75周年を迎えたメドトロニックは,これまでにリードレスペースメーカをはじめとする様々なイノベーティブな製品を開発してまいりました。Aurora EV ICD MRI システムもその一つであり,その製品を日本の患者さんにお届けし,新たな選択肢を提供できることを大変うれしく思います。」
【ICDとは】
ICD(植込み型除細動器)は体内に植え込まれて,突然起こった心室細動や心室頻拍を自動的に検知し,電気治療を行って心臓の動きを正常に戻す機器。最初はペースメーカのような刺激を出して,発作が止まらなければ弱い電気ショックによる治療を行い,それでも止まらなければ,より強いエネルギーに切り替え治療を行う。
【Aurora EV ICD MRI システムとは】
本システムは,従来の経静脈ICDと同じサイズ,形状,電池寿命を持っているが,従来のICDとは異なり,左脇の下(左中腋窩領域)に植え込まれ,リードは胸骨の下に留置される。この方法は,最小限の侵襲で行われる。Epsila EV MRIリードは,心臓や静脈血管の外側に留置されるため,これまで経静脈ICDで課題とされていた血管損傷や血管閉塞(静脈の狭窄,閉塞,圧迫)などの合併症を避けることができる。
Aurora EV ICD MRI システムは経静脈を経由しない植込みを叶えながらも,Medtronicの経静脈ICDで使用できる機能が含まれており,通常の皮下ICDでは使用できない機能も使用することができる。
•抗頻拍ペーシング(ATP):低エネルギーのペーシングパルスを使用して心室性不整を停止させ,除細動ショックを回避できる可能性がある。
•心休止防止ペーシング:一時的な心拍停止に対するバックアップペーシングを提供する。
•40Jの除細動エネルギー:経静脈ICDと同じデバイスサイズ(33 cc)の不整脈を停止させるためのショック治療を送出する。
•Medtronic独自のPhysioCurve™デザイン:患者の快適さと植込みに対する受け入れを向上させる。
•11.7年の予測電池寿命:患者の生涯におけるデバイス交換手術件数を減少させる。
•Smart Sense:独自のアルゴリズムにより更なる不適切なショック治療を減らす可能性がある。
•条件付きMRI対応:MRIの撮像条件が満たされている場合,1.5Tと3TでのMRI撮像が可能となる。
●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
www.medtronic.co.jp