岡山大学と両備システムズが開発した早期胃癌の深達度をAIで診断支援するシステムが, 医療機器製造販売承認を国内で初めて取得
~両備システムズ,メディカルAI事業で2030年10億円を目指す~
2024-4-24
岡山大学学術研究院医歯薬学域の河原 祥朗教授(研究責任者:実践地域内視鏡学講座,以下 岡山大学)と,(株)両備システムズ(以下 両備システムズ)は,内視鏡検査の画像を元に,人工知能(AI)を用い早期胃癌(がん)の深達度を判定し,医師の診断補助を行う早期胃癌深達度AI診断支援システム(以下 本システム)を開発した。本システムは,オージー技研(株)(以下 オージー技研)によって,2024年3月5日付で厚生労働大臣より医療機器製造販売承認を取得した。本システムは,AIを活用して早期胃癌の深達度診断を支援する医療機器として日本で初めて(※1)承認されたものとなる。
(※1)両備システムズ調べ
●開発の背景
日本における胃癌の罹患数は,大腸癌・肺癌に続き第3位となっており,死亡者数は毎年4万人以上となっている(※2)。
胃癌の特徴として,病期が進行すると死亡率が高まるが,早期に発見すれば十分に根治可能な疾患である。しかし,早期胃癌の深達度は判定が難しく,専門医でも正診率は72%(※3)程度とも言われている。胃癌の治療法には腫瘍を内腔から切除し胃が温存できる内視鏡治療と,胃の一部から全部を切除する外科手術がある。その選択には腫瘍の進行度に対する正確な診断が必要だが,診断の精度は依然不十分であるのが実状。こうした背景から本システムを開発した。
(※2)国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#a14
(※3)「尹 ほか:胃癌に対する深達度診断の現状,日消誌,2009」より算出
●早期胃癌深達度AI診断支援システムについて
内視鏡で撮影された早期胃癌画像に対するAIの解析結果をもとに,正診率は約82%(※4)の精度で,深達度の判定を行い,医師の診断を支援する事で,誤った診断の低減が期待できる。
その精度を実現するため,医師が,分かり易い,実際の診断でも使えるような画像を選別し,また様々な条件下での内視鏡検査に対応するために,1枚の画像から多様なパターンの画像を作成し(多様な角度,撮影機器など),AIに読み込ませることで研究を進め,製品開発を行った。
(※4)「早期胃がんの深達度診断支援プログラムの単体性性能評価試験報告書」より
●今後の展望
岡山大学と両備システムズは,他部位の疾患についても製品化に向けて研究を推進しており,大腸や胆道,膵臓分野でのAI画像診断支援や,内視鏡染色検査でのAI技術活用を進めて,社会実装化を目指す。
また,両備システムズは,2030年までにメディカルAI事業を10億円へ拡大し,更に医療事業全体では30億円を目指す。
■国立大学法人岡山大学 研究者について
河原 祥朗(かわはら よしろう)
岡山大学 学術研究院医歯薬学域 実践地域内視鏡学講座 教授(特任)
専門:消化器内視鏡学 消化器内視鏡治療(ESD)
2023年末までに胃癌,食道癌の内視鏡治療3,000症例以上を施行。
ESD普及のため世界各国で講演,ライブデモンストレーターを努め,内視鏡関連の特許も多数取得している。
●問い合わせ先
(株)両備システムズ
https://www.ryobi.co.jp/