日立製作所,シニアの「社会参加」を促し,介護予防を支援する新事業を立ち上げ スマホアプリ「社会参加のすゝめ」を2022年春にリリースし,一般向けに無償公開
企業や自治体などと連携し,健康長寿社会の実現をめざすエコシステムを構築

2022-2-15

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日立(日立製作所,日立ハイテク)


(株)日立製作所(以下,日立)は,一般社団法人日本老年学的評価研究機構(以下,JAGES機構)との共同研究のもと,シニアの社会参加*1行動を測定し,データに基づく介護リスクの予測や介護予防のための行動介入を支援する新たな事業を立ち上げる。

シニアの「社会参加」を促し,介護予防を支援する新事業を立ち上げ

 

本事業の中核ツールとして,シニアの社会参加を促進するスマートフォンアプリ「社会参加のすゝめ」*2を2022年春にリリースし,一般向けに無償公開する。外出・行動状況の測定・見える化や,そのデータに基づいた健康アドバイス,JAGES機構の先行研究に基づくコンテンツ配信などを提供する。

今後,本取り組みに賛同する企業や自治体などを幅広く募り,「社会参加のすゝめ」という新たなプラットフォームを通じて連携することで,アプリを通じた介護予防効果をシニアに還元できるサービスなど,シニアの社会参加を促進するより良い仕組みの開発と社会実装を加速し,「人生100年時代」における健康長寿社会の実現に向けたエコシステムの構築に取り組む。

*1 社会参加:外出する,地域や趣味の集まりに参加する,友人に会うなど,生活の中で他者と交流する行動のこと。
*2 商標出願済み。なお,本アプリは,App StoreおよびGoogle Play™からダウンロード可能となる。(2022年4月末公開予定)

取り組みの背景

近年,少子高齢化に伴い,介護費用は年々増大し,2020年度の介護保険給付費用は10兆円を超え*3,20年間で3倍以上*4に膨らんでいる。豊かで持続可能な社会を構築していくことは,世界に先駆けて日本の社会課題となっており,高齢者の介護予防に関する意識づけや行動変容を,社会全体でサポートする仕組みを構築するなど,抜本的な変革が求められている。

日立は,JAGES機構の20年にわたる調査結果*5から明らかとなった,シニアの社会参加が活発であるほど要介護認定の割合が低いという,社会参加状態と要介護認定との関係に着目した。その一方で,JAGES機構の調査は数年に一度の紙によるアンケート調査が中心であったため,実態のリアルタイムな評価が困難であることや,個人の主観的な回答に基づく調査データである点などの課題があった。

日立は,医療ビッグデータから将来の入院発生リスクを予測する「Risk Simulator for Insurance」*6の開発など,人の健康に関わるデータを分析して将来リスクの予測を可能とする技術開発に取り組んできたことから,これらのノウハウを社会参加データに応用し,介護リスクや行動介入による介護予防効果をデジタルに評価・分析できる仕組みの検討を,JAGES機構と共同で進めてきた。

*3 厚生労働省「令和2年度 介護給付費等実態統計の概況(令和2年5月審査分~令和3年4月審査分)」
*4 厚生労働省「令和元年度 介護保険事業状況報告(年報)のポイントー年度別給付費の推移ー」 :平成12年度(2000年度)と令和元年度(2019年度)と比較。
*5 ニュースリリース-JAGESプロジェクト(2021年6月)
「活動性の低い高齢者の介護費用は高くなる ~活動性の高い高齢者に比べて約5年間で7~11万円~」
「社会参加で介護費用が減少週1回以上の趣味やスポーツの参加者は6年間で1人約11万円,就労している人では6万円程度介護費が低い傾向あり ~12自治体4.6万人の追跡調査より~」
*6 ニュースリリース-日立製作所(2018年10月3日)
「医療ビッグデータを活用し,8大生活習慣病に関わる入院リスクを予測する『Risk Simulator for Insurance』を提供開始」

取り組みの概要・特長

本事業のプラットフォームとして中核となるのは,2022年春にリリースする,スマートフォンアプリ「社会参加のすゝめ」である。スマートフォンの位置情報や歩数などのデータを用いて,疑似的に社会参加状態を計測できるほか,アプリ内に設けたコラム機能から配信される,JAGES機構の優れた先行研究の論文を一般のシニアにも分かりやすい内容に要約したコラムを読むことができるなど,アプリ利用者は介護予防のための理想的な健康状態に近づくために何をすべきかを知ることができ,シニアの介護予防に向けた知識獲得と社会参加を促進する。

また,高齢化社会を支える商品やサービスを開発する企業と連携することで,本アプリから得られるさまざまなデータから,任意の施策の介護予防効果を定量的に測定し,PDCAサイクルを回すことが可能となる。本アプリを通じ,シニアをターゲットとしたさまざまな事業者が支援事業に参画でき,シニアがそれを享受できる,そうした介護予防支援に向けた新しい仕組みづくりをめざしている。

取り組みの概要・特長

 

なお,事業化に先立ち,2020年に,社会参加行動の測定と行動変容に関する実証実験を行った。スマートフォンをもつ約90名のシニアにテスト用アプリをインストールしてもらい,4か月間データを計測しつつ社会参加を促す情報提供を行ったところ,一定の割合で社会参加行動が活発化したことが確認できた。

今後の展開

今後,本プラットフォームを中核に,幅広い業界の企業や団体との連携を広げ,さまざまな趣味嗜好を持つシニア一人ひとりが,自身に合った社会参加の方法を見つけ,選択できるサービスの開発をめざす。

たとえば,保険会社とは,社会参加の状態が活発で介護リスクが低いと認められる場合に,保険料の割引や,他サービスの特典を付与するなど,金融に限らないさまざまなサービスの利用において優遇が得られる仕組みの開発が期待できる。そのほか,交通事業者や小売事業者などと連携し,シニアの積極的な「おでかけ」を推奨するイベントの開催や,自治体の介護予防施策の効果を社会参加の側面から定量的に測定するなど,さまざまな業界とのコラボレーションを図っていく。

日立は,誰もが快適に,安心して,健やかに暮らせる社会の実現に向け,データから価値を創出してイノベーションを加速する「Lumada」をドライバーに,さまざまな社会課題の解決に取り組んでいる。本事業においても,シニアの介護予防に対する意識・行動の変化と社会参加の定着を促すサービスの創出をめざし,人々が幸せで豊かに暮らすことができる持続可能な社会の実現に貢献していく。

JAGES機構 代表理事 近藤克則氏(千葉大学 予防医学センター 教授)からのコメント

JAGES機構では長年社会参加状況とその数年後の介護認定との関係について研究してきました。日立と組むことで調査の精度が劇的に上がり,介護予防支援において今後さらなる効果が期待できます。2020年度の日立との実証事業では,スマホアプリを使った行動計測と社会参加を推奨するコラム送付による行動変容を促す取組みの可能性と課題の両面を探り,その結果,"測れる" "変われる" "楽しめる" の3つの示唆を得られました。「アプリによる社会参加促進」の実現可能性が示唆されたと考えます。

アプリの画面イメージ

アプリの画面イメージ

 

関連情報
「社会参加のすゝめ」に関するWebサイト

*「社会参加のすゝめ」スマートフォンアプリは,App StoreおよびGoogle Play™のほか,本サイトから無償ダウンロードで利用可能(2022年4月末公開予定)。

 

●問い合わせ先
(株)日立製作所 金融システム営業統括本部[担当:松浦]
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