NECと九州大学,感情推移や行動履歴などの日常生活データから健康行動を促すヘルスケアサービスの実証実験を開始
~データに基づいた食事・運動メニューのレコメンドや健康アドバイスを実施~
2022-1-28
日本電気(株)(以下 NEC)と国立大学法人九州大学(以下 九州大学)は,感情推移や行動履歴などの日常生活データに基づきパーソナライズされたヘルスケアサービスを提供して健康行動を促す実証実験を本年2月9日から実施する。
本実証は,データを利活用して社会課題の解決を目指す「データドリブン型社会」の実現に向けNECと九州大学が2020年10月に締結した連携協定(注1)における第一弾の取り組み。九州大学伊都キャンパスに通学・通勤する学生・教職員を対象に,日常生活データを活用したパーソナライズドサービスの受容性・有効性を検証する。
超高齢社会に突入した日本には,後期高齢者の割合が増え続けることに伴う社会保障費の急増,医療や介護に関わる人材の不足など,深刻な課題が数多く存在している。とりわけ社会保障費の適正化には健康寿命の延伸が肝要であり,予防医療や健康増進など人々の健康な暮らしを持続するための取り組みが求められている。
本実証では,心拍変動データにより感情を可視化する「NEC 感情分析ソリューション」(注2)を活用した感情推移データや,本人の申告に基づく食事,睡眠時間,活動内容などの行動履歴データをウェアラブルデバイスやスマートフォンを通じて収集する。収集した日常生活データに基づき,医師による一人一人に合わせた健康アドバイスや,九州大学伊都キャンパスのウエストゾーンに1台設置予定のカメラとデジタルサイネージを活用して健康行動につながる最適な食事や運動メニューをレコメンドするなど,パーソナライズされたサービスを提供する。本実証は,九州大学キャンパスライフ・健康支援センター眞﨑義憲准教授のアドバイスのもと実施する。
●実証実験の概要
(1) 医師による健康指導
従来,リフレッシュプログラム(注3)として九州大学で実施されてきた生活習慣改善支援プログラムを発展させて,実証協力者の日常生活データや感情推移データを用いて九州大学キャンパスライフ・健康支援センターの医師から,一人一人に合わせた健康に関するアドバイスや生活改善に向けたサポートを行う。
新型コロナウイルス感染拡大以降,いわゆる「受診控え」などによる外来間隔の長期化により,定期的に医療機関を受診されている人々の日常生活における心身の健康状態の把握が困難になっている。本来であれば,受診時に問診で日常生活状況を取得出来ることが望ましいが,今回の実証実験はこのような問題に対して,ICTを活用して改善が図れないかを実証するものである。生活習慣病の臨床でも見られる投薬せずに生活習慣改善を指導する医師面接を想定し,今回は保健指導の現場において,ICTを活用して医師へ提供するデータの種類や取得頻度を増加させ,さらにデジタル化して可視化することで保健指導の高度化を実現する。
(2) デジタルサイネージを通じたレコメンド
カメラ映像から顔認証により実証協力者を特定し,個人情報が含まない内容(注4)で,本人に適した健康を促す食事や運動,休息に関するクーポンをデジタルサイネージに表示してレコメンドを実施する。
デジタルサイネージ上にはQRコード(注5)も表示され,実証協力者はこのQRコードをスマートフォンで読み取ることで,感情推移や健康に関するデータやクーポンのイメージを確認することが可能。今回の実証では,実際には利用できないダミークーポンや,仮想イメージによるレコメンドを用いて,サービスの受容性を検証する。
本実証では,カメラとディスプレイを用いて視聴者に合わせたコンテンツを表示するNECの「サイネージ導入セット」(注6)を活用している。またサイネージは,NECソリューションイノベータ(株)が開発した「手の動き」や「体の動き」のジェスチャーを利用して,離れた場所からICT機器を操作できる「NEC ジェスチャーUIソリューション」(注7)に対応しており,非接触タッチで操作が可能。
●個人情報の取り扱いについて
今回の実証実験に同意した協力者の行動履歴や感情推移の情報,およびカメラ撮影した本人識別可能な顔画像情報は,本人の同意のもとで収集し,本実証実験のみに使用し,他の目的に使用することはない。また,カメラ撮影時における実証協力者以外の方の顔画像または写り込み顔画像等については,速やかな廃棄や個人特定できない加工処理などを行う。
NECと九州大学は,ICTの活用により個人の同意を前提としたデータ利活用を推進し,パーソナライズしたヘルスケアサービスを通じて人々が活き活きと暮らすことができる健康長寿社会の実現を支援する。
(注1)NECと九州大学,「データドリブン型社会」の実現に向けて連携協定を締結
https://jpn.nec.com/press/202011/20201105_02.html
(注2)「NEC 感情分析ソリューション」
ウェアラブルデバイスを用いて生体情報を取得し,実証協力者の感情推移をグループ単位,個人単位でグラフィカルに表示するクラウドサービス。Webブラウザで感情分析クラウドサービスに接続するだけで,現在の感情や1日の感情履歴などを簡単に分析することが可能。
https://jpn.nec.com/embedded/products/emotion/index.html
(注3)九州大学キャンパスライフ・健康支援センターが教職員向けに行っている3か月間の生活指導プログラム。
https://www.chc.kyushu-u.ac.jp/~webpage/organization/facility.html#unit06
(注4)デジタルサイネージに表示する情報に個人情報は含まれないが,実証協力者が自分に向けた画面であることが認識できるようにするため,本人が事前に指定したニックネームを表示する。
(注5)「QRコード」は(株)デンソーウェーブの登録商標。
(注6)「サイネージ導入セット」
https://jpn.nec.com/pcserver/appliance/signage/index.html
(注7)「NEC ジェスチャーUIソリューション」
https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sl/finger/index.html
●問い合わせ先
NEC スーパーシティ事業推進本部
E-Mail:press@ddr.jp.nec.com