富士フイルム和光純薬,米国の創薬支援スタートアップEmulate社より日本国内での独占販売権を取得 ヒト生体の臓器に近い機能を再現できる生体機能チップを販売開始
-医薬品候補の有効性・安全性を高精度に評価でき,新薬開発の効率化に貢献-
2021-8-31
Emulate社の生体機能チップ
(イメージ図)
富士フイルム和光純薬(株)は,米国の創薬支援スタートアップであるEmulate, Inc.(以下,Emulate社)より生体機能チップ(Organ on a chip)の日本国内における独占販売権を取得し,同製品の販売を9月1日に開始する。本製品は,チップ上に形成した微細な流路の中でヒト生体の臓器由来細胞を培養して各種臓器に近い機能を再現させる創薬支援製品で,医薬品候補の有効性・安全性を高精度に評価できるものである。
医薬品の研究開発の現場では,候補となる薬剤の有効性や安全性を評価するために,マウスなどを用いた動物実験が行われている。しかし動物実験では,ヒト生体における有効性・安全性を正確に予測することは難しいため,動物実験を経ても臨床試験の段階で治療効果を確認できない場合や新たな副作用が生じる場合がある。また近年では,動物実験に関する国際理念である「3Rの原則」※1に基づき,動物実験を代替する評価方法に対するニーズも高まっていることから,ヒト細胞を用いてチップ上で臓器に近い機能を再現できる生体機能チップが注目されている。
Emulate社は,米ハーバード大学のWyss(ヴィース)研究所が開発した生体機能チップ技術の実用化を目的に2013年に設立された創薬支援スタートアップ。すでに生体機能チップを製品化し,本チップ上で細胞を培養するための培養装置等とあわせて製薬企業やアカデミアに販売するなど,欧米を中心に事業を展開している。
今回同社がEmulate社より日本国内での独占販売権を取得した生体機能チップは,チップ上の微細な流路内にある多孔質膜の両側で,ヒト生体の臓器から採取した異なる細胞を同時に培養し,肺や腸,肝臓などの複雑な臓器モデルを作製できる。さらに,流路には伸縮性のある素材を採用しているため,流路に刺激を与えて体内の肺細胞の拡張・伸縮や腸細胞の蠕動(ぜんどう)運動※2といった臓器の動きを模倣できるなど,ヒト生体の臓器に近い機能を再現でき,それぞれの臓器の疾患に対する,医薬品候補の有効性・安全性をより高精度に調べることが可能。
同社はこれまで,強固な販売網を活用し,ヒトiPS細胞由来分化細胞や培地,試薬などの創薬支援製品・サービスを提供してきた。今回,Emulate社の生体機能チップや培養装置等を同時発売しラインアップを拡充することで,製薬企業やアカデミアの新薬開発の効率化ニーズに幅広く応えていく。
同社は今後も,「次の科学のチカラとなり,人々の幸せの源を創造する」という理念のもと,社会や顧客のニーズに応える高機能・高品質な製品を提供し,医療をはじめとする幅広い分野の産業や学術研究の発展に貢献していく。
※1 「できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用すること」(Replacement),「できる限りその利用に供される動物の数を少なくすること」(Reduction),「できる限り動物に苦痛を与えないこと」(Refinement)の3つから構成される。
※2 腸などの消化管が食物を運ぶために,伸びたり縮んだりする動きのこと。
●問い合わせ先
富士フイルム和光純薬(株)営業推進課
TEL 0120-052-099
Email:ffwk-labchem-tec@fujifilm.com