日本メドトロニック,脊髄誘発電位測定等加算に関する診療報酬改定により,術中神経モニタリング装置「NIM™ システム 3.0」の保険適用が拡大
2020-6-10
販売名:NIMシステム3.0
(医療機器認証番号:221ACBZX00103000)
日本メドトロニックは,2020年4月に行われた脊髄誘発電位測定等加算に関する診療報酬改定を受けて,食道悪性腫瘍手術と甲状腺部分切除術・甲状腺腫瘍摘出術(ともに内視鏡下手術を含む)の領域に関して新たに保険適用となったことで,「NIM™ システム3.0」の保険適用の拡大が認められたことを発表した。NIMシステム3.0は2010年に脳神経外科や耳鼻咽喉科を中心に国内で販売を開始した,手術中の電気メスによる熱や組織の牽引による反回神経麻痺[1,2]などの神経損傷リスクを低減させることを目的に開発された術中神経モニタリング装置。
今回の食道悪性腫瘍手術の保険適用拡大について,東海大学医学部消化器外科領域主任教授の小澤壯治氏は,次のように述べている。
「日本食道学会は,食道悪性腫瘍手術での反回神経麻痺回避のため保険適用拡大を要望しました。術中操作に伴う反回神経麻痺は胸腔鏡下で最大34%に発生[3]するリスクがあり,麻痺は嗄声(させい),誤嚥に伴う嚥下性肺炎の危険性を増大させます[4]。神経モニタリング装置は神経の同定,術中損傷の予防,麻痺の予後予測に有用であることが示されています[1]。今後保険適用拡大により神経モニタリング装置を使用した,さらに質の高い手術を患者さんに提供できることを期待しています。」
日本メドトロニック株式会社のENT事業部事業部長の渡辺剛史氏は,次のように述べている。
「手術時の神経機能損傷は患者さんの術後の生活に影響を及ぼすため,神経モニタリング装置の普及により不可逆的な神経損傷[1]の予防を図ることが,重要だと考えています。今回,食道悪性腫瘍手術や甲状腺切除手術で新たに保険適用が認められたことによって,患者さんの術後の健康維持の向上につながれば大変嬉しく思います。また,今回の保険適用拡大により各医療機関での使用が促進され,手術時における医師の意思決定をサポートしアウトカム向上につながる[4-6]ことを期待しています。今後,神経損傷による術後合併症が少なくなり,患者さんがより活動的で安心した生活を送れる[7]よう,医療従事者の皆様との協力の下,貢献していきたいと思います。」
【令和2年度診療報酬改定の詳細について】
K930 脊髄誘発電位測定等加算
(1)脳,脊椎,脊髄,大動脈瘤又は食道の手術に用いた場合 3,630点
「K116」から「K118」まで,「K128」から「K136」まで,「K138」,「K139」,「K142」から「K142-3」まで,「K142-5」から「K142-7」,「K151-2」,「K154」,「K154-2」,「K159」,「K160-2」,「K169」,「K170」,「K172」,「K175」から「K178-3」まで,「K181」,「K183」から「K190-2」まで,「K191」,「K192」,「K457」,「K458」,「K527」,「K529」の1及び2,「K529-2」,「K529-3」,「K560」,「K560-2」,「K609」及び「K609-2」に掲げる手術をいう。なお,これらの項目の所定点数を準用する手術については加算を行わない。
(2)甲状腺又は副甲状腺の手術に用いた場合 3,130点
「K461」から「K463-2」及び「K465」に掲げる手術をいう。なお,これらの項目の所定点数を準用する手術については加算を行わない。
令和2年度診療報酬改定について ※「厚生労働省ホームページ」より抜粋
第3 関係法令等 【省令,告示】(それらに関連する通知,事務連絡を含む。)
(2)1 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示)
令和2年 厚生労働省告示第57号 <第2章>第10部 手術 (P.70)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603762.pdf
(2)3 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)
令和2年3月5日保医発0305第1号 別添1 医科診療報酬点数表に関する事項 (P.538 - 539)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603981.pdf
【NIM™ システム3.0について】
「NIM™ システム3.0」は術中神経モニタリング装置としてENT事業部にて「NIM-Response™ 3.0」「NIM-Neuro™ 3.0」の2機種を国内で販売している[8]。同システムは,骨格筋等を支配する運動神経に1mm程の棒状の金属により電気的な刺激を与え,筋繊維に誘発される活動電位を感知し,その電位信号を波形表示させる誘発筋電計装置。
主に食道悪性腫瘍手術,甲状腺手術,耳下腺手術,頭蓋底手術,耳科手術において使用される。食道悪性腫瘍手術や甲状腺手術における頸部操作時の迷走神経や反回神経の損傷は,嗄声,声帯麻痺や術後の肺炎リスクを高める。NIMシステム3.0を使用することで,医師は神経の走行状態や健全性を視覚的に確認でき,分かりにくい神経状態を把握することで損傷リスクを軽減する[9]。
また,独自のAPS™ 電極は持続的に神経をモニタリングすることが可能であり,牽引や熱損傷等による神経に対する障害を,波形とアラームによってリアルタイムに医師に伝え,神経損傷につながる手術操作回避を可能にする[10]。
【APS™ 電極】
Automatic Periodic Stimulation(自動定期刺激)の略称で,迷走神経に装着し,一定の間隔で電気的刺激をおこない,振幅値と潜時値を監視する。
[1]Dionigi G, et al. Why monitor the recurrent laryngeal nerve in thyroid surgery? J Endocrinal Invest.
2010; 33: 819-822.
[2]Gianlorenzo Dionigi , Samuel K. Snyder ,Feng-Yu Chiang , Whitney Liddy , Dipti Kamani ,and Natalia
Kyriazidis. Mechanism of Injury. Recurrent & Superior Laryngeal Nerves; 2016, p223-237
[3]Ozawa Soji, Koyanagi K, Ninomiya Y, Yatabe K, and Higuchi T. Postoperative complications after
minimally invasive esophagectomy for esophageal cancer. Annals of Gastroenterological Surgery
2020;4:126-134.
[4]Randolph GW and Dralle H with the International Intraoperative Monitoring Study Group.
Electrophysiologic recurrent laryngeal nerve monitoring during thyroid and parathyroid surgery:
international standards guideline statement. Laryngoscope 2011; 121:S1-S16.
[5]Stopa M. Prognostic value of intraoperative neural monitoring of the recurrent laryngeal nerve in
thyroid surgery. Langenbecks Arch Surg (2017) 402:957-964.
[6]Schneider R, Sekulla C, Machens A, Lorenz K, Nguyen P, Dralle H. Postoperative vocal fold palsy in
patients undergoing thyroid surgery with continuous or intermittent nerve monitoring. BJS.
2015; 102:1380-1387
[7]J A Wilson , I J Deary, A Millar, K Mackenzie. The Quality of Life Impact of Dysphonia.
2002;27:179-82.
[8]イネイブリングテクノロジー/ニューロモデュレーション事業部で販売するNIMエクリプスシステムにおいても同様に保険適用拡大
[9]Yang S, et al. Systematic review with meta-analysis of intraoperative neuromonitoring during
thyroidectomy. IntJ Surg. 2017;39:104-113.
[10]Tsang RK, et al. Adaptation of Continuous Intraoperative Vagus Nerve Stimulation for Monitoring of
Recurrent Laryngeal Nerve During Minimally Invasive Esophagectomy. World J Surg. 2016;40:137-141.
●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
www.medtronic.co.jp