東芝デジタルソリューションズと千葉大学フロンティア医工学センター,AIによる胃がんのリンパ節転移巣検出の共同研究を開始
2018-1-31
東芝デジタルソリューションズ(株)は,国立大学法人千葉大学フロンティア医工学センター 林秀樹教授,医学研究院先端応用外科学 松原久裕教授,医学部診断病理学教室 松嶋惇助教らの研究グループと,AI注1 (人工知能)による病理組織画像からの胃がんのリンパ節転移巣検出の共同研究を開始した。
日本人の死亡原因の1位は男女共に悪性新生物(がん)で,死因の28.5%を占めている。がん死亡のうち,胃がんが男性では肺がんに続いて2番目,女性では4番目に多い部位となっている注2。がん罹患者数では,胃がんは,男性では1位,女性では3位と多い一方で,5年相対生存率注3は男性65.3%,女性63.0%注4と早期治療により治る可能性も高く,手術後の機能をいかに温存するかが重要になる。
本共同研究では,HE染色法注5により処理された転移リンパ節組織像(図1)をAIで学習し,病理専門医と同等か,あるいはそれ以上のレベルでの転移診断がAIによるアシストで可能であるかの検証を行う。本共同研究の成果により,転移診断のAIによるアシストの有効性が高ければ,病理専門医の負担を大幅に軽減するばかりでなく,将来的には胃の機能を温存した縮小手術により,術後のQOL(Quality Of Life)の向上も期待される。
同社は,本共同研究を通して,病理専門医が持つ,高度な診断の知見をデジタル化し,東芝アナリティクスAI 「SATLYS™(サトリス)」を活用したがん治療サポートの高度化への貢献を目指す。
千葉大学 フロンティア医工学センター 林秀樹教授コメント
AIを用いた画像解析技術は,様々な可能性を秘めており,その一つとして,短時間のうちに大量の情報解析が可能な点は医療に大きく貢献する可能性があると考えています。手術中に微小な転移巣の有無を判定しなくてはならない迅速組織診においては,限られた時間のうちに高い精度で診断を行う必要があります。AI技術を活用し,病理専門医が最終診断に用いるHE染色組織標本を,短時間のうちにすべてチェックをすることが可能となれば,病理専門医の負担を大幅に軽減するばかりではなく,がんの根治性を犠牲にすることなく,最小限の切除で術後のQOLの向上を図ることのできる「体にやさしい手術」が広く世の中に普及することが期待されるでしょう。
注1 AI:Artificial Intelligence
注2 記載している各数値,データは,厚生労働省 「平成28年(2016)人口動態統計(確定数)の概況」による
注3 5年相対生存率:あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合を,日本人全体の性別および年齢が同じ人の5年後の生存率と比べたもの。100%に近いほど治療で生命を救えるがん,0%に近いほど治療で生命を救い難いがんを意味する。
注4 記載している各数値,データは,国立研究開発法人 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」による
注5 HE染色法:ヘマトキシリンとエオジンを用いて細胞核および細胞質をそれぞれ染色する方法
東芝アナリティクスAI 「SATLYS™(サトリス)」について
東芝アナリティクスAI 「SATLYS™」は,東芝140年の「ものづくり」の実績から得た知見をAIの設計に活かし,高精度な識別,予測,要因推定,異常検知,故障予兆検知,行動推定などを実現する。SATLYSを活用した検査データ解析,センサーデータ解析,業務データ解析,行動データ解析などのソリューションを通じて,顧客のデジタルトランスフォーメーションを加速する。
http://www.toshiba.co.jp/iot/spinex/ai.htm
・東芝アナリティクスAI 「SATLYS™」紹介動画
http://www.toshiba.co.jp/iot/spinex/ai.htm#p-spinex-ai_hash-target-satlys-movie
●問い合わせ先
東芝デジタルソリューションズ(株)
http://www.toshiba-sol.co.jp/