島津製作所,新薬開発向け,実験動物からの血液採取量を抑えて血漿を容易に分取可能なマイクロサンプリングデバイス「MSW2」を発売
2017-5-15
島津製作所は,受託分析事業などを手がける同社グループ会社・島津テクノリサーチと共同で,新薬開発などを目的に実験動物の血液検体を分析する製薬メーカーや機能性食品メーカー向けに,微量な検体の採取や分析に必要な血漿の分取を容易に行える非臨床分野用のマイクロサンプリングデバイス「MSW2(エムエスダブリュースクウェアード)」を開発し,5月15日に同社から販売を開始した。
「MSW2」は,血液検体を採取・保持するための樹脂製デバイス「Microsampling Wing(マイクロサンプリング ウイング)」と,最大14個まで「Microsampling Wing」をセットできる専用のホルダ「Microsampling Windmill(マイクロサンプリング ウインドミル)」から構成される。「Microsampling Wing」で血液検体を採取し,「Microsampling Windmill」にセットしてそのまま遠心分離を行うことで,ヘマトクリット値(血液中に占める赤血球容積の割合)の変動に従って,23μLの血液から最大8.1μL,通常で5.6μLの微量な血漿を煩雑な作業無しで分離して再現性良く取り出すことができる。
※本製品は,研究用途のみに使用可能。医薬品医療機器法に基づく医療機器として承認・認証等を受けておらず,治療診断目的およびその手続き上での使用はできない。
●開発の背景
新薬の開発工程には膨大な数の動物実験が必要になることから,実験動物に代わる手法を用いる,もしくは苦痛を与えず利用を最小限に抑える3Rs(Replacement,Refinement,Reduction)の原則の徹底が求められている。3Rsの原則のもと,分析装置の能力向上も相まって,実験動物の血液検体の分析を行う際には,採取する血液量をμLオーダーまで減らすマイクロサンプリングの活用が広がっている。従来,実験動物から微量な血液を採取するには,ガラス製のキャピラリ管を用いることが一般的であったが,扱いや管理の面で手間やヒューマンエラーが発生するリスクが指摘されていた。
同社と島津テクノリサーチは,このような課題の解決を目指し,実験動物からの血液採取量低減や,血漿の分取とその後の処理の簡略化,ミスが起こりにくい検体の保管に貢献する本製品を開発した。
●新製品の特長
毛細管現象※を利用して「Microsampling Wing」内の流路に23μLの血液検体を所定の位置まで流入させ,「Microsampling Windmill」にセットし遠心分離することで,「Microsampling Wing」の流路内で血球と血漿を分離できる。「Microsampling Wing」には血漿が保持される位置に溝を掘っており,この部分を作業者が手で折って分割することで,通常5.6μLもしくは2.8μL×2,ヘマトクリット値の変動に従って追加で2.5μLの血漿を分取できる。折ったチップをそのまま別のチューブに入れ,除タンパクなどの処理を加えることも可能。また,「Microsampling Wing」は,「Microsampling Windmill」に14個までセットでき,保管にも便利。
※毛細管現象…液体中に細い管を入れると,表面張力によって液体が管内を上昇する現象
●価格(税別)
「Microsampling Wing」の定価
23万8千円(1パック14点入りで10パックから販売)
「Microsampling Windmill」の定価
4万円(1パック10点入り)
トライアルパックの定価
5万円(「Microsampling Wing」14点と遠心分離用チューブ14点入り)
●問い合わせ先
島津製作所
http://www.shimadzu.co.jp/products/opt/products/msw2/msw2.html